混迷の米議会、オバマケア代替法案を決められず、夏季休会入り

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米国の上院と下院は8月3日、事実上の夏季休会に入った。

上院は7月11日、夏の休会の開始日を当初予定していた7月29日より遅らせ、8月の第3週とすることを決めた。
オバマケアの代替法案の審議時間をとり、成立を目指すためであった。

7月25日には代替法案の審議開始を承認したが、その後提出した3つの法案は、いずれも与党共和党員の一部の反対で否決された。
この結果、早期の法案可決を諦め、休会入りしたもの。

休会は9月5日までだが、9月末までの短期間に来年度(2017年10月~2018年9月)の予算案と、債務上限の引き上げを決める必要があり、いずれかが間に合わなければ政府機関の閉鎖もありうる。

民主党のObama大統領時代は、野党の共和党が上下両院で多数で、一時的に政府機関の一部を閉鎖したり、閉鎖寸前までいくのが常態であった。

大統領がメキシコとの壁の建設などに固執すれば、Trump大統領になって与党が両院で多数を占めながら、同じことが起こる可能性が出てくる。

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米議会下院は5月4日の本会議で、共和党が提出した医療保険制度「オバマケア」の廃止と、これに替わる制度の創設を盛り込んだ法案(American Health Care Act )を賛成217、反対213の僅差で可決した。共和党からは20人が造反した。

2017/5/9 オバマケア代替法案 米下院が可決 (法案内容も) 

オバマケア代替法案を巡り、上院共和党では穏健派が無保険者の増加につながると懸念する一方、保守派はオバマケア廃止には不十分と主張し、見解が割れた。

トランプ大統領は6月27日、52人の共和党上院議員全員をホワイトハウスに呼び、今後の対応について協議したが、過半数の賛成は見込めず、米共和党上院トップのマコネル院内総務は同日、党内の支持を増やすため、採決を先送りすることを決定した。

上院は7月11日、夏の休会の開始日を予定していた7月29日より遅らせ、8月の第3週とすることを決めた。「重要法案に関する作業を完了させる時間をとるため」と説明した。

共和党のマコネル上院院内総務は7月11日、上院の修正案を7月13日に発表し、審議を開始し、7月18日の週に採決すると発表した。

しかし、7月17日夜に新たに党内から2人の造反が出て、反対が4人となったことで今回も頓挫した。

2017/7/24 オバマケア代替法案、上院で再び頓挫 

米上院は7月25日、オバマケア見直しの法案審議を開始することを承認した。脳腫瘍と診断されアリゾナ州の自宅で療養中のジョン・マケイン上院議員も出席、採決は50対50の同数だったため、上院議長であるペンス副大統領の判断で可決した。

同日行われた第1弾の包括的な代替法案である通称"Trumpcare 3.0"の採決では、共和党から9人の造反が出て43対57の反対多数で早くも否決された。

上院は7月26日、オバマケア廃止法案(2年後に廃止する、それまでに代替案を検討するという案)を採決し、45対55の反対多数で否決した。与党・共和党(52人)から、手術から復帰したばかりのマケイン上院議員を含む7人が反対した。

上院は7月28日、与党共和党執行部が作成したオバマケアを限定的に廃止する法案を賛成49対反対51の僅差で否決した。"Skinny(骨と皮ばかり)"と呼ばれる法案で、個人の保険加入義務や医療機器メーカーに対する課税などオバマケアの一部だけを廃止する内容。しかし、米議会予算局の試算では、今後10年間で1600万人が保険を失うとされ、共和党からマケイン上院議員と他の2人が反対した。

この法案は共和党内で「最後の妥協案」とも言われていた。

この結果、早期の法案可決を諦め、休会入りした。8月3日から9月5日までの休会となる。

上院については、正式の休会ではない。形式上は開会状態を維持しており、3日おきに1分間の "pro-forma" session を開催する。

上院は、大統領による指名人事について承認権を有する。実質休会に先立ち、8月3日に50人以上の幹部役人の承認を行った。

問題は、上院の休会中は、大統領が議会承認なしに閣僚を任命し、一定期間職務に就かせることができるというルールがあることである。トランプ大統領が Jeff Sessions 司法長官を辞任させ、新たな長官を就任させるという観測が広がった。

これを防ぐため、形式上は開会状態を維持することとした。1人の議員が開会の小づちをたたき、約1分で閉会する。3日以上議会を開かないためには議員の議決が必要なため、3日置きにこれを行う。

これも大統領に対する不信感が理由である。

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2018年度は10月1日から始まるため、議会は9月6日以降、月末までに予算案を通す必要がある。

2017年度(2016/10~2017/9)については、野党であった共和党の反対で期日までに予算が通らず、最終的に9月28日に、12月9日までの暫定予算で妥協に達し、大統領選挙の前の政府機関の一部閉鎖などは回避された。

2016/10/5 米国、2017会計年度も暫定予算でスタート

米上院は12月9日午後11時16分に、2017年4月28日を期限とする連邦政府の暫定予算案を賛成 64票 反対36票で可決した。昨年とほぼ同レベルの支出を政府に認めるもので、Hurricane Matthew の災害対策など若干の追加を含んでいる。

2016/12/10 米国議会、来年4月28日までの暫定予算を可決 

2017年に共和党のトランプ大統領が就任し、予算問題は決着するとみられた。

しかし、議会では大統領の看板公約であるメキシコ国境の壁の費用計上を巡って、野党民主党が強く反対しており、成立のメドが立たなかった。
上院で民主党のフィリバスターを阻止するには全100議席のうち60票が必要になるが、共和党は52議席しかない。

このため、政府機関閉鎖を避けるため、米上下両院は4月28日、5月5日を期限とする1週間のつなぎ予算を可決した。

共和党と民主党は4月30日夜、9月末までの資金を手当てする1.16兆ドルの暫定予算案について合意した。大統領が執着したメキシコ国境の壁建設については見送られた。代わりに国境警備強化で支出を15億ドル増やすことで合意した。

大統領は、予算を通すのに上院で60%の賛成が必要なことについて Twitter で不満を表明した。2018年の中間選挙で共和党上院議員をもっと選ぶか、ルールを変更して51%にすべきだとし、9月に与野党が合意できず政府機関が閉鎖されても構わないと民主党に脅しをかけた。

2017/5/4 米議会、9月末までの予算案で合意、政府機関の閉鎖回避

大統領がオバマケア代替法案にこだわったため、予算の議論は進んでいない。大統領の5月の発言もあり、今回も予算案が期日までに通らない可能性がある。

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債務上限問題については、2015年10月に債務上限凍結を2017年3月15日まで再び延長して、乗り切っている。

  2015/11/4 米議会、債務上限引き上げと予算案を承認、大統領署名 

凍結は3月15日に切れたが、その後も資金のやり繰りで乗り切ってきた。しかし、財務長官は議会宛ての7月28日付書簡で、連邦政府債務の上限を9月29日までに引き上げなければ政府の債務返済のための資金が枯渇すると警告した。  

予算問題も合わせ、政府機関閉鎖や米国債の債務不履行(デフォルト)のリスクに直面する。

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トランプ大統領の目玉政策の一つの税制改革も進展がない。

トランプ米政権は4月26日、大型税制改革の基本方針を公表した。

「経済成長と米雇用のための税制改革」とし、連邦法人税率を35%から15%へと大幅に引き下げ、大幅減税で「企業の競争力を高める」とした。

2017/4/28 トランプ政権の税制改革案

これに対し下院共和党の税制改革案は、 現在35%の連邦法人税率を20%に引き下げる国境税の導入(輸出品については、法人税を免除、輸入品は法人税の計算上、コストと認めず、実質20%課税)であった。

ホワイトハウスと米議会指導部は7月27日、税制改革で焦点となっていた「国境税」について、「多くの不確定要素がある」として、導入を見送ることで合意した。
「国境税」の見送りにより、
財源確保のめどが立たなくなり、トランプ政権が目指す大幅減税の規模にも影響を与えることとなる。

2017/8/1 米、「国境 税」断念

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