習主席、市場開放拡大を強調

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中国の習近平国家主席は4月10日、中国海南省で開催中の博鰲(ボアオ)アジアフォーラムで演説し、銀行から自動車製造まで多岐にわたるセクターを開放すると明言した。
中国が「開放の新たな段階」に入るとし、輸入拡大や製造業の外資保有制限緩和、知的財産権保護の強化を表明した。

「人間社会は現在、開放か閉鎖か、前進か後退かという大きな選択を迫られている。冷戦とゼロサムゲームの思考は時代遅れだ」と語った。

習主席演説のポイント

・年末までに金融セクターを一段と開放
・自動車メーカーの外資保有上限を引き下げ
・自動車輸入関税を引き下げ  
・知的財産権保護を強化
・世界貿易機関(WTO)政府調達協定への参加プロセス加速を支援
・輸入拡大を促進する年1回のイベントを計画

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中国と米国の間では、米国の1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼とアルミの関税、通商法301条に基づく米国による中国の知的財産の侵害に対して発動する制裁関税に対し、中国が報復関税を表明している。

トランプ米大統領は4月5日、中国による知的財産権侵害を問題にした制裁措置を巡り、中国が500億ドル規模の米国製品を対象とする報復関税を表明したのを受け、新たに1000億ドル規模の中国製品を対象にした追加関税を検討する方針を表明した。表明済みの500億ドル分と合わせると計1500億ドルに膨らむ。

これに対し、中国商務部の報道官は4月6日、 中国は最後まで付き合う。いかなる代償も惜しくないし、必ず反撃するとの声明を発表した。

今回の米国の500億ドルの制裁関税、それに対する中国の同額の報復関税については、いずれも実施時期を明らかにしておらず、米中双方が妥協案を探る交渉が本格化するとの期待感もあったが、トランプ大統領が制裁規模の拡大検討を表明したことで、交渉の行方は不透明感が増す形になった。

2018/4/7  米、対中制裁追加を検討

トランプ大統領は追加関税を表明しながら、他方では紛争解決に意欲を示した。

4月8日にツイッターに投稿した。「習近平主席とはいつも友人だ。中国は貿易障壁を下げるだろう。」

President Xi and I will always be friends, no matter what happens with our dispute on trade.
China will take down its Trade Barriers because it is the right thing to do.

Taxes will become Reciprocal & a deal will be made on Intellectual Property.
Great future for both countries!

トランプ米大統領は、中国の習近平主席が市場開放の方針を示したことに対し、ツイッターに「関税や自動車の障壁に関する習主席の親切な言葉にたいへん感謝する」と投稿した。

Very thankful for President Xi of China's kind words on tariffs and automobile barriers...also, his enlightenment on intellectual property and technology transfers.
We will make great progress together!

ホワイトハウスのサンダース報道官も、習氏の対応について「勇気づけられた」と指摘。ただ、「中国側から具体的な行動があるか見守る必要がある」とも述べた。

中国外務省報道官は、習近平国家主席が国内経済のさらなる開放と一部製品の輸入関税の年内引き下げを発表したことについて、 自国で設定したタイムテーブルに則ったものであり、米国との貿易摩擦とは無関係だと述べた。

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中国人民銀行の易綱総裁は4月11日、金融市場の開放策を2018年6月末に実施する方針を明らかにした。

外資が証券や生命保険を営む場合、中国企業と合弁会社をつくる必要があり、現在は外資出資比率の上限が50%となっている。
2018年6月末に証券、資産運用、生命保険、商品先物で外資出資比率の上限を51%まで引き上げ、3年後に全額出資を認める。

2017年11月の米中首脳会談で約束した措置と比べると、生保は2年ほどの前倒しとなる。(中国政府は当時、51%への引き上げ時期について証券は「まもなく」、生保は「3年後」と説明していた。)

2018年末をメドに業務規制も緩める。
銀行が支店展開をしやすくなるほか、証券会社は株式注文の取り次ぎ、株式引き受けなどの業務免許を取得しやすくなる。保険では代理店業務を外資に認めるほか、保険会社を設立するまでの2年間は代表所を営む必要がある規制もなくす。中国系金融機関と比べ、差別的な取り扱いをしない原則を徹底する。

上海と香港の株式取引所で認めている相互売買についても5月1日から1日あたりの売買額を 今の4倍に大幅に増やす。

これらの多くは米国が長年、中国に要求していた内容である。

付記

国家発展改革委員会は4月17日、自動車の外資規制 (現在50%が上限)の撤廃のロードマップを明らかにした。

2018年中に、EVなどの新エネルギー車
2020年に、トラックやバスなどの商用車
2022年に、乗用車

中国での自動車生産JV数(現在、新エネ車を除き原則2社まで)も2022年に制限を撤廃

自動車以外でも、2018年末までに造船、航空機製造の外資規制を撤廃する。


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