トランプ米大統領は4月5日、中国による知的財産権侵害を問題にした制裁措置を巡り、中国が500億ドル規模の米国製品を対象とする報復関税を表明したのを受け、新たに1000億ドル規模の中国製品を対象にした追加関税を検討する方針を表明した。
表明済みの500億ドル分と合わせると計1500億ドルに膨らむ。
声明で「中国は自らの不正を正すのではなく、報復関税で米国の農業や製造業に損害を与える道を選んだ」と批判した。
これに対し、中国商務部の報道官は4月6日、下記の内容の声明を発表した。
米国が単独主義と保護貿易主義を堅持するならば、中国は最後まで付き合う。いかなる代償も惜しくないし、必ず反撃する 。
我々は貿易戦争をやりたくないが、怖がってもいない。必ず総合的な対応策を取り、国家と人民の利益を断固守る 。今回の米中貿易摩擦は米国側が一方的に起こしたもので、本質的には米国の単独主義による多角的貿易体制への挑戦、米国の保護主義による自由貿易体制への挑戦だ。
中国は多角的貿易体制を擁護し、世界の貿易投資の自由化と利便性向上を推進する。
今回の米国の500億ドルの制裁関税、それに対する中国の同額の報復関税については、いずれも実施時期を明らかにしておらず、米中双方が妥協案を探る交渉が本格化するとの期待感もあった が、トランプ大統領が制裁規模の拡大検討を表明したことで、交渉の行方は不透明感が増す形になった。
付記
トランプ大統領は追加関税を表明しながら、他方では紛争解決に意欲を示した。4月8日にツイッターに投稿した。「習近平主席とはいつも友人だ。中国は貿易障壁を下げるだろう。」
President Xi and I will always be friends, no matter what happens with our dispute on trade.
China will take down its Trade Barriers because it is the right thing to do.Taxes will become Reciprocal & a deal will be made on Intellectual Property.
Great future for both countries!
米中の制裁、報復の経緯は次の通り。
(1962年通商拡大法232条)
米国
トランプ米大統領は3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明、3月8日午後、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限の発動を命じる文書に署名した。
鉄鋼には25%、アルミには10%の追加関税をかける。
2018/3/3 トランプ大統領、鉄鋼とアルミに追加関税、日本も対象
2018/3/9 トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令
中国
中国国務院は4月1日、米国が通商拡大法232条に基づき、中国産の鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限したことへの対抗措置として、米国産の豚肉やワインなど計128品目に最大25%の関税を上乗せすると発表した。4月2日から実施した。
15%上乗せ 120項目 10億ドル
25%上乗せ 8項目 20億ドル2018/4/2 中国、対米報復関税を発動
(通商法301条)
米国
USTRは4月3日、中国の知的財産の侵害に対して発動する制裁関税の原案を公表した。
産業用ロボットなど生産機械を中心とした約1300品目に25%の関税を課す。米国の消費者への悪影響を抑えるためスマホや衣料品など輸入額の大きい消費財は除いた。
対象品目の2018年の想定輸入額は500億ドルで、中国からの輸入額の約1割に相当する。(2017年の輸入額は5065億ドル)
中国
中国商務部は4月4日、公告34号を出し、米国の違法な行動から中国の権利を守るため、中国の対外貿易法や国際法の基本原則に基づき、米国産の大豆やその他の農産物、自動車、化学品、飛行機など計106品目(2017年の輸入額は約500億ドル)に25%の関税をかける方針を発表した。対象は、大豆、棉花、トウモロコシ、小麦、牛肉、たばこ、乗用車、試薬、ポリアミド、飛行機、その他。
石油化学品では、EDC、アクリロニトリル、LDPE、PVC(310千トン)、アクリル重合体、ポリアセテール以外のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、その他のポリエステル、ポリアミド、シリコーン、酢酸セルロースなどを含む。2018/4/5 USTR、通商法301条に基づく対中制裁関税案を発表、中国も対抗措置を発表
米国
トランプ米大統領は4月5日、中国による知的財産権侵害を問題にした制裁措置を巡り、新たに1000億ドル規模の中国製品を対象にした追加関税を検討する方針を表明
中国
中国商務部はこれに対し、下記の声明
「米国が単独主義と保護貿易主義を堅持するならば、中国は最後まで付き合う。いかなる代償も惜しくないし、必ず反撃する」
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