韓国との関係:WTOへの提訴手続き再開と日本製鉄資産差し押さえ問題

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韓国政府は6月2日、日本が韓国向け輸出規制を解除するかどうかの回答を最後まで出さなかったことで、世界貿易機関(WTO)への紛争解決手続きを再開すると発表した。

日本政府は2019年7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表した。有機ELに使うフッ化ポリイミドなど3品目について、個別に審査・許可する方式に切り替える。安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定も削除する。

2019/7/3  政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表 

韓国は9月11日、日本の半導体材料に対する輸出管理の厳格化がWTO協定に違反するとしてに日本を提訴した。WTOは貿易紛争の処理を二審制にしており、まず2国間で解決方法をさぐる協議が起点となる。

10月11日の協議は平行線をたどった。

2019/10/8 韓国向け半導体材料 輸出規制の状況

韓国政府は2019年11月22日、日本との協議再開に伴い、WTOの紛争解決手続きを中断した。

経済産業省は12月20日、韓国向けの輸出管理を厳格化していた半導体材料3品目のうち、レジスト(感光材)の管理措置を緩和した。


韓国の産業通商資源部は6月2日、「韓国政府は、昨年11月22日に暫定停止していた日本の3品目輸出制限措置について、WTOの紛争解決手続を再開することを決定した」と述べた。

これに先立って韓国政府は日本に対して、5月31日まで輸出規制を解除するかどうかについて立場を明らかにしてほしいと要請したが、回答を得られなかった。
このため、日本政府に問題解決の意志がなく、当初WTO手続き停止の条件だった両国間の正常的会話が進んでいないと判断した。

韓国政府は近く、WTOにパネル設置を要請して提訴手続きを再開する。「WTOへの提訴を通じて、日本措置の不当性を国際社会に知らせたい」としている。
ただし、日本との二国間対話も続けていくと付け加えた。

これについて茂木外相は、「韓国が一方的に紛争解決手続きの再開を決めたのは残念だ。輸出管理の見直しは、両国対話の中で行われなければならない」と述べた。

なお、手続きが再開されても1審の判定までは通常2年かかり、現在WTO上級委員7人中6人が空席(WTO紛争解決手続きに対する強い不満を持つ米国が上級委員の選考プロセスを阻止)なので、上訴機構が機能停止している。

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韓国大法院(最高裁)が元徴用工訴訟で日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた問題で、大邱地方法院浦項支院は6月1日、日本製鉄に韓国人強制徴用被害者賠償のための資産差し押さえ書類などを公示送達した。

大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で、被害者の勝訴を確定した。

朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者が損害賠償を求めた裁判で、韓国大法院は2018年10月30日、新日鉄住金に対して1人あたり約1000万円の賠償を命じた。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPNR (POSCO-NIPPON STEEL RHF Joint Venture) の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

しかし、日本側はこの判決を拒否したまま判決関連書類を受領しなかった。
日本政府は、韓国の大法院判決は日韓請求権協定違反との立場で韓国政府に対応を求めている。

今回の「公示送達」は裁判所が書類を公開掲示した後、一定期間が過ぎれば訴訟当事者に書類が伝えられたとみなす制度で、公示送達期限である8月4日午前0時を越えた時点で、裁判所は押収された日本製鉄の国内資産に対して現金化命令を下すことができるようになる。ただし、裁判所は日本戦犯企業に対する尋問手続きを進めると明らかにしたことから、尋問書発送のための公示送達などの追加手続きが続くと見られる。

また、売却命令が出たとしても、実際に資産売却が終わるまでには時間がかかるとみられる。

強制徴用に関連し、日本企業に公示送達決定が下されたのは今回が初めて 。

茂木外相は韓国の外交部長官との電話会談で、資産現金化問題に対して「深刻な状況を招く」と警告した。

日本企業では他に2社の資産が差し押さえられている。

三菱重工業:2つの商標権と6つの特許権、現金換算で8億400万ウォン(約7200万円)相当
不二越:韓国内の合弁企業「大成・NACHI油圧工業」の株式7万6500株で、約7億6500万ウォン(約6840万円)相当


この問題の解決のため、韓国国会の文喜相議長が2019年末に解決法案を提出した。

法案は日韓の企業と個人から寄付金を募って基金を設け、裁判所や韓国政府が認めた元徴用工らに慰謝料を支給する内容で、企業や個人に寄付を強要しない方針を明記し、受給者は企業への請求権を放棄したとみなす規定を盛り込んだ。

しかし、法案は原告や市民団体の反対で審議にも至らぬまま、韓国憲法の規定により国会会期末の5月29日で廃案となった。

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