トランプ大統領、失業給付増額等へ大統領令

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既報の通り、米連邦政府が新型コロナウイルス対策として発動した失業給付の特例が7月31日に失効し、支給額が一時的に大幅に減額する。

これに続き、中小企業の雇用維持策も8月7日に申請期限が切れた。

ムニューシン財務長官と民主党のペロシ下院議長らは8月5日、超党派の早期合意に向けて協議したが、合意に至らず、週内の関連法の成立を断念した。
議会は8日から休会する予定だったが、各議員は夏季休暇を当面返上して合意案づくりを続ける。

トランプ大統領は5日の記者会見で、7日までに超党派の合意案がまとまらなければ、大統領令で失業者支援などの経済対策をホワイトハウス発で発動する考えを表明した。

民主党、共和党ともにPaycheck Protection Programの延長では一致しているが、民主党は現状維持を求めるが、共和党は大幅減額を主張する。
元になる第4弾の予算総額は民主党が3兆ドル、共和党が1兆ドルで、大きな差がある。
民主党は2兆ドルまで降りたが、共和党は拒否した。与野党は11月の大統領選・連邦議会選が近づいて、簡単に妥協できなくなっている。

2020/8/8 米国、失業給付の特例に続き、中小企業の雇用維持策も期限切れ


追加経済策をめぐる政権と与野党の協議は7日、物別れに終わった。

これを受け、トランプ大統領は8月8日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策として、失業給付を増額する措置の延長を含む4つの大統領令に署名した。

(1)失業給付を週400ドル上乗せ

Memorandum on Authorizing the Other Needs Assistance Program for Major Disaster Declarations Related to Coronavirus Disease 2019

従来の週600ドルを週400ドルとする。但し、連邦政府支出は300ドルで、残り100ドルは各州の負担とする。

従来規定は7月31日に切れたが、今回分は7/27~8/1の週の失業から適用される。

400ドルへの減額について、大統領は「600ドルでは再就職のインセンティブが下がる」とした。従来ベースでは州支給分を合わせると週に1000ドル近くとなり、失業者の7割が以前の給与を上回る給付を受けているとの試算もあった。 延長そのものに反対する共和党議員が少なくない。

なお、政府負担300ドル、州負担100ドルとしたが、「すでに州政府の予算は底をついていて負担は無理」との声もある。

大統領には連邦政府が持つ緊急災害基金から雇用支援の資金を拠出する権限があり、コロナ対策にも活用する。

(2)給与税の納税を猶予

Memorandum on Deferring Payroll Tax Obligations in Light of the Ongoing COVID-19 Disaster

労使がそろって給与の6.2%分を負担する社会保障財源で、税収は年1兆ドル規模と全歳入の3分の1を占める。9月から12月末まで徴税を猶予するよう財務省などに指示した

(3)学生ローンの利払い猶予

Memorandum on Continued Student Loan Payment Relief During the COVID-19 Pandemic

政府は3月20日に国の学生ローンの返済猶予、一時的金利支払免除を行なったが、9月末で切れる。これを12月31日まで延長する。

(4)住宅の強制立ち退きの一部停止

Executive Order on Fighting the Spread of COVID-19 by Providing Assistance to Renters and Homeowners

家賃未納者の立ち退きを一時停止したが、既に期限切れとなった。これを延長する。


憲法で歳出の決定権は原則として議会にある。民主党は大統領令は「議会の予算編成権の侵害」として、提訴する可能性が高い。




付記

共和党のマコーネル上院院内総務は8月13日、レーバーデー明けとなる9月8日まで上院採決を行わないと発表した。ただ、この期間、追加パンデミック救済策で合意があった場合、24時間の通知で議会は招集される。

これより前、下院も9月14日まで採決を行わないことを発表し夏季休暇入りした。

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