厚労省審議会、アビガン承認見送り、継続審議

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厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第2部会は12月21日、富士フイルム富山化学の「アビガン」について、新型コロナウイルス治療薬として承認するかどうか判断を見送り、継続審議とした。

医薬品審査管理課は、「詳しい審議の内容は、企業秘密にあたるので明らかにできないが、あくまで審議の途中であり、有効性が否定されたものではない」としている。

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富山化学工業は2014年3月24日、日本で錠剤タイプの新しい抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の製造販売承認を取得した。

富士フイルム富山化学は2020年9月23日、同社が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象に実施した「アビガン」(ファビピラビル)の第3相臨床試験 で主要評価項目を達成したと発表した。

非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者156人を対象に実施され、有効性や安全性をランダム化プラセボ対照試験で検討した。
主要評価項目の中央値は、「アビガン」投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日となり、症状の早期改善が確認できて、安全性上の新たな懸念は認められなかった。
しかし、症状回復までの日数はわずか2.8日の短縮にとどまる。

10月16日にCOVID-19に係る効能・効果、用法・用量を追加する「アビガン」の製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。

なお、カナダの製薬企業Appili Therapeutics Inc.は12月2日、富士フイルムからアビガンの提供を受け、米国で第3相臨床試験(治験)を始めた。

2020/12/7 アビガン、米で最終治験

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厚労省によると、薬事・食品衛生審議会は、「現時点で得られたデータからは有効性を明確に判断することは困難」とした。

富士フイルム富山化学は、アビガンか偽薬かを患者に伝えずに投与する「単盲検試験」と呼ばれる方法で治験を行い、「PCR検査で陰性になるまでの期間を2.8日短縮する効果が確認された」などとしていた。

一方、投与した医師はアビガンか偽薬かを知っていることから、「今回のデータでは、医師の先入観が影響している可能性を否定できない」などと委員から慎重な判断を求める意見が相次いだ。医師・患者の両方がどちらを投与したか分からない方法と比べ、有効性の根拠が弱いというもの。

現在実施中の臨床試験結果などの提出を待って、来年以降に再度審議する。現在、米国やクエートで第3フェーズの臨床試験を行っており、それらの結果などが新たなデータの対象になり得るという。


富士フイルムは、「主要評価項目において統計学的有意差をもって(アビガンの有効性を)確認できたにもかかわらず継続審議となったことは、非常に残念」とするコメントを発表し、早期承認に向け、厚労省、医薬品医療機器総合機構と審議結果を踏まえた対応を協議していく、としている。

新型コロナ治療薬は「レムデシビル」と「デキサメタゾン」が国内で認められている。

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