富士フイルム富山化学は、2019年11月21日、カナダのバイオベンチャーAppili Therapeuticsと、抗真菌薬の候補化合物である「T-2307」の海外における開発権・販売権等を導出する契約を締結した。
「T-2307」の開発権・販売権等をAppili社に譲渡するとともに、同社から開発マイルストンおよびロイヤリティを受領する。「T-2307」は、真菌が同剤を能動的に取り込み、真菌細胞内でミトコンドリアの機能が選択的に阻害される新しい作用機序を有している。
Appili Therapeuticsは米国の医薬品開発業務受託機関PRA Health Sciences を使い、47カ所の医療機関で、826人の患者を対象としてアビガンの第3相治験を実施する 。2021年上半期に結果を出すことを期待している。
富士フイルムは米国で4~11月に第2相治験を実施し、現在データを解析している。
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富士フイルムは7月1日、COVID-19治療薬の海外展開に向けて、インド大手製薬企業 Dr. Reddy's Laboratories およびUAEの世界的な医療物資・医薬品提供会社Global Response Aid と提携すると発表した。
両社に対して海外(中国・ロシアを除く)での「アビガン」の開発権・製造権・販売権(製造権はDr. Reddy's Laboratorieのみ)などを独占的に付与するとともに、2社より契約一時金や販売ロイヤリティを受領する。
Appili Therapeuticsは10月30日、Dr. Reddy's Laboratories およびGlobal Response Aid との間で、アビガンの世界での商業化に向け、協力・開発・供給契約を締結したと発表した。
今回の米国での第3相治験の開始はこれに基づくもの。
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富士フィルム富山化学は10月22日、「アビガン®錠」の中国展開に向けて、上海の安徽康瓴薬業有限公司(Carelink Pharmaceutical )をパートナー企業に選定したと発表した。
なお中国では、アビガンの製法特許そのものは既に切れており、海正薬業が本年2月に中国当局から生産認可を取得し、2月16日から「法維拉韋(ファビピラビル)」の商品名で生産を始めた。
2020/10/24 富士フィルム富山化学、アビガンの中国展開で安徽康瓴薬業と提携
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富山化学工業は2014年3月24日、日本で錠剤タイプの新しい抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の製造販売承認を取得した。「アビガン®錠200mg」の承認には厳しい条件がついている。
・動物実験で「初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」。
・日本人を対象にした薬物動態試験と追加臨床試験結果を医薬品医療機器総合機構に提出し、成績が確認されるまでは「原則製造禁止」 。
(申請に用いたのが米国の試験結果で、日本人を対象にしたものがなった。)
但し、パンデミック時など厚労相が「要請」した際は製造できる。
富士フイルム富山化学は2020年9月23日、同社が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象に実施した「アビガン」(ファビピラビル)の第3相臨床試験 で主要評価項目を達成したと発表した。
非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者156人を対象に実施され、有効性や安全性をランダム化プラセボ対照試験で検討した。
主要評価項目の中央値は、「アビガン」投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日となり、症状の早期改善が確認できて、安全性上の新たな懸念は認められなかった。
しかし、症状回復までの日数はわずか2.8日の短縮にとどまる。
10月16日にCOVID-19に係る効能・効果、用法・用量を追加する「アビガン」の製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。現在、承認待ちの段階である。
付記
「アビガン」を審議する12月21日の厚生労働省の部会に、薬の有効性について「明確に判断することは困難と考える」と指摘する審査報告書が提出されることが分かった。複数の政府関係者は、「承認審査は難航する可能性がある」などとしている。
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