EU欧州委員会は中国・ベトナム製の革靴に対し、4月7日から臨時反ダンピング税を課すよう提案した。最初は4%とし、段階的に引き上げて最後は19.4%(ベトナム製は16.8%)に引き上げ、臨時措置の6カ月間にダンピングが解消されなかった場合は、正式な反ダンピング税の課税に踏み切る。
中国商務部は今回の件について、特にEUが中国を非市場経済国待遇をしていることに猛烈に反発している。
WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。
「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。EUは中国に市場経済国待遇を適用せず、しかも中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。
現在、中国を「完全な市場経済国」と認めた国はニュージーランド、オーストラリア、韓国など51カ国に達しているが、米国、EU、日本などはまだ認めていない。
EUでは1998年の改正により、調査対象企業が一定の基準を満たしていると証明した場合には、「市場経済待遇」が認められ、通常のダンピング・マージン算定方法を用い、調査対象企業ごとにダンピング・マージンを算定することとなり、既にこれを認められた多くの実例がある。
しかし、今回EUは、中国とベトナムの革靴業界では低利融資、税免除、安い土地代、不適切な資産評価など、政府の介入が著しいとして応訴した中国企業に市場経済国待遇を適用しなかった。
中国商務部では、製靴業は労働集約型産業で中国が労働コストの低さから同業界では相対的に優位なのは当然であってダンピングではないとし、革靴業界は中国でも市場化が最も進んだ業界の一つで、かつ、メーカーの98%が民営企業または外資系企業であり、応訴した中国企業に市場経済国待遇を適用しなかったことは公平貿易の原則に反するとしている。
中国は化学品を中心に中国への輸入品に対して反ダンピング調査を多数行っているが、逆に中国自身、11年連続で世界で反ダンピング措置を最も多くとられた国となっている。人民日報によると、2005年は中国と各国の貿易摩擦が激化した年で、反ダンピング調査が51件で、調査金額が17億9千万ドルに達した。
国内の過剰設備に加え、人民元の更なる切り上げ要求、貿易摩擦など、中国の抱える問題は多い。
付記 2006/10/5
欧州連合(EU)は4日、加盟国による投票を行い、中国・ベトナム産革靴に対する反ダンピング税徴収法案を僅差で可決した。同法案に基づき、EUは今月7日から、中国製品には16.5%、ベトナム製品には10%の反ダンピング税が課される。期間は2年間。一時的な反ダンピング措置を適用されている児童用靴製品は現在、課税の対象外だが、近く対象となる見込み。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。
同法案はフランスが提出したもので、僅差で可決された。投票結果は反対12、賛成9、棄権4。EUの規定では、提案を否決するには加盟国の過半数の票が必要で、棄権票は賛成票とみなされることから、同法案はかろうじて可決された。
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