2/27の日本経済新聞に信越化学の金川社長のインタビューが載っている。
その中で同氏は
「中国の設備過剰が悩ましい。塩ビ樹脂を例にとると、中国の年産能力は900万トンともいわれ、需要を上回って設備稼働率は6割程度にとどまっている。鉄鋼などもそうだが、余剰生産分を輸出に振り向ける一方で、国外で石油をはじめとした基礎資源の買収に動いている」
と懸念されている。
(以下、赤字は3/5に新情報で修正)
中国の塩ビ生産能力は2005年末で933万トン(←推計900万トン強)と1年で200万トン増えた。今年はさらに最大で300万トン拡大すると言われている。
若干古いが2004/2時点で建設中から構想段階まで、合計21件 657万トンの計画が明らかになっていた。
この1年でも次のような大型計画が出ている。
・内蒙古の臨海化工が香港中策グループと共同で50万トン計画
・新疆ウイグル自治区でXinjiang Production and Construction Corps が120万トン計画
・シノペックが南京で30万トン計画
・福建省の福建東南電化が45万トンPVC計画で政府承認取得
・新疆ウイグル自治区でChemChinaがPVC 60万トン計画
・新疆ウイグル自治区の新疆中泰化工が4月に60万トン設備建設着工
なお、東ソーが広州で当初計画の2倍の年産22万トンプラントを建設中。
最近の能力増の多くはカーバイド法である。(図参照 クリックしてください) 能力933万トンのうち、7割がカーバイド法である。
石灰石を原料にするもので、日本でも最初は全てカーバイド法であったが、電力料のアップでカーバイド法のコストダウンが難しくなり、1961年の通産省の「アンモニア法か性ソーダの電解法への転換方針」 に基づき、1964年頃からオキシ法への転換が始まり、数年で全て切り替わっている。(同時にア法ソーダの電解法への転換が始まった)
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参考 1961/11 通産省 「アンモニア法か性ソーダの電解法への転換方針」
① カーバイドのコスト引き下げは困難であるので,増設に当たっては炭化水素源をEDCなどコストの安いものに移行させる
② EDC法の採用に当たっては極力従来法のスクラッブ・アンド・ビルドを進める
③ 塩素源については苛性ソーダとのバランスを取るためア法ソーダの電解法への転換を進める
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中国では政策的に電力料が押さえられており(昨年から石炭価格リンクとし、コスト変動分の7割を電気料金に反映させるようになったが)、エチレン価格アップの結果、カーバイド法の方がコストが安い状態である。(カーバイド法の塩ビの損益分岐点は1トン700ドル程度、エチレン法は同900ドル程度といわれている)
また内陸部ではエチレン法VCMの入手が難しいこともある。
従来のカーバイド法設備は小規模で老朽化し、公害の原因となっていたため政府は禁止の意向を示していたが、最近は大型設備の新設をドンドン承認している。
地方政府は雇用拡大のために増設を促しているといわれている。
(NDRCの2004年4月通牒でエチレン法PVC は20万トン以上、2005/12の産業構造調整指導リストでカーバイド法は12万トン以上が認可の条件:「中国のエチレン生産」参照)
この能力増に対して、需要は最近では下水管や窓枠・ドア材などの伸びが大きいが、それでも直近の需要は792万トン(←720万トン)と推定され、輸入もなお130万トンあり、稼働率は低い。
2005年生産は649万トン(操業度70%)
コンパウンド名目を含めた輸入は155万トン
輸出は12万トン
差し引き需要 792万トン
レジンの輸入は2001年の1,916千トンから毎年減少し、2005年には1,307千トンとなった。今のところ全体の減少に対して日本からの輸入は余り変わっていないが、2003年9月にペースト塩ビを除いてダンピングの認定をされ、ほとんどが保税輸入である。
(グラフ参照 クリックしてください)
これに対し、昨年末から輸出が増加している。2005/1-9月に4千トン/月であったのが10月から急増し、4ヶ月平均で26千トン/月となった。
供給過剰の上、需要の伸びよりも能力増の方がはるかに多いため、早晩、中国が塩ビの輸入国から輸出国に変わると思われる。
また、PVC増設分の大半がカーバイド法なら、VCMの現地生産増に伴いVCMの輸入も減る可能性がある。VCMにとってはPVC輸出減とVCM輸出源のダブルパンチとなる。
* 中国のVCM輸入は2005年で90万トン、うち日本からが57万トン(日本の全輸出は65万トン)
日本のVCM総出荷量284万トンのうち、(PVC+VCM)輸出量は137万トン
日本の塩ビ業界はPVC、VCMともに輸出に依存している部分が多く、今後が懸念される。
参考 日本のPVCとVCMの需要推移
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