日本の塩ビ事業

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前回、中国の塩ビ事業の状況説明の中で、中国が塩ビの輸出国になるとし、日本の塩ビ事業への影響の懸念を記した。

実際には塩ビは日本の石油化学のなかで、最も潜在需要の大きい製品である。

信越化学の米国の子会社信越化学、シンテック社の2005/6月中間期決算は、経常利益が前年比23%増の160百万ドル、中間期純利益は同23%増の106百万ドルと大幅増加した。これは住宅需要が好調なためである。

塩ビの用途には下水道や上水道のパイプ、電線被覆、床材、ドア材、窓枠、雨樋、壁紙、サイディング材、電線埋設菅など住宅関連需要が多く、PVC需要は住宅着工件数に比例して動く。
(サイディング材は住宅の外壁に張る板状の外装材。昔は木材の板を打ちつけ、ペンキを毎年塗り替えていたが、米国では塩ビ製に置き換わっており、年間需要が100万トン以上ある。日本の塩ビの国内総需要の2/3相当。日本では消防法の一部改正などで最近やっと普及が進み始めた段階)

米国では住宅着工件数は2001年以降、毎年増加しており、これが塩ビ事業の好調を支えている。(グラフ参照 クリックしてください)

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これに対して、日本の住宅着工件数は、バブル後半には160万戸以上あったのが、1998年以降は120万戸前後で推移している。


下のグラフは住宅着工件数とPVC国内出荷数量のグラフだが、1980年以前は塩ビの住宅用使用が少なかったため相関性はないが、1980年以降はほぼ同じ推移を示しており、1996-7年に200万トンを超えた需要はこの数年、150万トンを割っている。(グラフ参照 クリックしてください)

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日本の塩ビは日本の住宅投資が今後どうなるかにかかっている。

人口減少の中で、期待できるのは住宅の質である。
日本の都市部の住宅状況は「遠く、狭く、高い」という点で、欧米は勿論、韓国などよりもはるかに劣っている。貿易摩擦問題の際に、日本はこれ以上は買うものはないとしたが、衣食住のなかで、住だけは満足水準にない。

筆者は昔、住宅を「近く、広く、安く」するのは簡単であり、これをやれば内需は大拡大し、貿易摩擦は一挙に解決するという論文を書いた。 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/ronbun/top.htm

実はヒューザーの広告をみて、同じ考えの人がいると感激したものだ。(マンションは買っていない)
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同社のホームページ(現在は内容が変更され、この記載はない)

現実が理想を超える空間をめざして 
       代表取締役 小嶋 進

 世界中で「本当のゆたかさ」への模索が始まっています。
欧米はもとよりアジア諸国でも、150m2クラスのマンションが続々と作られている中、なぜ、日本だけが未だに60m2~80m2の住空間に甘んじなければならないのでしょうか。
 「地価が高いから仕方がない」と言われますが、はたしてそれだけでしょうか。私は長年この業界にあって、つくり手の都合、すなわち利潤追求を最優先する業界体質をつぶさに見てまいりました。
 私たちはそうした発想から脱却し、「広さを起点にすべてを発想する」という独自の開発手法で、マンションづくりに取り組んでおります。
 「100m2超マンションを、経済的にも無理のない価格で提供する」という明確な指針とそれを具現化したマンションは、多くのお客さまから驚きと共感を持って迎えられ、ヒューザーは100m2超マンションのリーディングカンパニーとなることができました。
 私たちにとって100m2はもはや目標ではなく、起点です。住む方が本当のゆたかさと癒しを感じられるような、家族が世代を超えて喜びを分かちあえるような「本物の家」づくりはここからがスタートです。
 お客さまの驚く顔と心からの笑顔を見るために、そして、地価の高い日本でも、世界レベルの広さと品質を備えた住空間が手の届く価格で実現できることを実証するために、私たちはこれからもイノベーションを続けてまいります。
 そして、できうるならば、ここから日本の住宅観や住宅政策に一石を投じ、喜びをもって次世代に受け継がれるような社会資産を築くいしずえとなりたい。……これが私の夢であり、「人間主義・理想追求型事業=ヒューマン+ユーザーカンパニー=ヒューザー」を社名に冠した私たちの企業理念です。

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問題はやり方である。いろいろな規制を外せば、土地や建設費は下がるが、土地代が下がると困る企業(銀行など)や個人も多く、規制緩和には各省庁が反対する。都市優遇として地方選出の議員の反対もあろう。

小泉首相の郵政民営化のようなやり方しかないが、実は、1999年1月に当時の小渕内閣が「生活空間倍増戦略プラン」を閣議決定している。

一人当たり床面積を5年間でヨーロッパ並みの水準(一人当たり40㎡弱)に引上げるほか、道路や、公園、その他あらゆる生活空間を倍増しようというものである。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/ronbun/10-2strategy.htm

グレゴリ-・クラ-ク氏は『異説・日本経済 通説の誤謬を撃つ』のなかで、「東京の問題は過密ではなく過疎」であり、「土地の利用の仕方が悪い」と述べている。いろんな規制を廃止すれば生活空間倍増は可能である。

これが実現すると、住宅を建て替えによる住宅関連資材の需要、電線地価埋設やサイディング材の住宅密集地での使用承認その他による新規需要などで、塩ビの需要は増大すると期待した。

しかしながら、小渕首相が亡くなると、この閣議決定までしたこの計画は雲散霧消し、忘れられた。

日本の需要喚起には住宅関係しかなく、今後、この「生活空間倍増戦略プラン」が再び取り上げられることを期待している。
そうなれば日本の塩ビの需要の
倍増も期待できる。

しかし、今の政治の状態から、これが期待できないとすると、PVC、VCMの設備処理を考える必要がある。

参考 日本の塩ビの需要推移

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