日本の石油化学産業の構造改善ー6 選択と集中時代

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25years24 損益状態の悪化に加え、サウジアラビア、台湾、シンガポール等における大型エチレンプラントの新増設によりオレフィン及び誘導品の輸出を行うことが厳しくなること、主要石化製品における大幅な関税の引き下げの2004年問題内需の伸びが今後も期待できないことから、各社とも「選択と集中」を合言葉に対応策をとり始めた。

1)エチレンセンターの整理
①三菱化学 四日市エチレン等の停止 
1994年の統合以降も鹿島、四日市、水島の3エチレンセンターをそのまま維持してきたが、
ようやくエチレン生産体制の見直しを行うこととし、01年1月に、四日市事業所のエチレンプラント及びEG、EO設備を停止した。
また、人にも手をつけ、00年3月期で早期退職一時金費用を計上している。

②エチレンセンターの一体化による機動的運営
・三井化学、大阪石油化学を完全子会社化

浮島石油化学の解散(川崎は日石化学、千葉は三井化学が引取り)
・旭化成、山陽石油化学を100%子会社化

③昭和電工の石化事業方針転換
00年にエチレン2系列 785千トンから、1系列 635千トン(いずれも定修なし)体制に変更
石油化学は、「再構築事業」とし、提携・売却も視野に入れるとした。

④東ソーのビニルチェーン構想 Vinylchain

東ソーはエチレンを塩ビ用を中心とするという特異な戦略をとった。強力なインフラ基盤を背景に、電解、VCM、PVC、塩ビ加工へとつながるビニル・チェーンを国内を含めたアジア市場に主眼を置いて展開することを決めた。

更にその後、塩素の有効利用が期待されるイソシアネート(ウレタン原料)事業関連会社の日本ポリウレタン工業(東ソー35%/保土谷化学工業65%出資)との連携を強化し、ビニル・イソシアネート・チェーンとしての展開を加速する戦略を推進している。

2)塩ビ業界の再編

需要の減退が著しく、過剰設備を抱えた中での価格競争で損益状況が悪化した塩ビ業界で大きな再編が行われた。

①VCMの停止
旭硝子はPPGインダストリーズとのJVの旭ペンの5万トン設備を停止
・三井化学は東ソーの増設を機に、大阪工場の電解・VCMプラントを休止
・住友化学は電気化学、トクヤマとの合弁の千葉電解、電気化学との合弁の千葉EDC、電気化学、旭硝子との合弁の千葉塩ビモノマーを停止
・下記の新第一塩ビ改組に伴い、日本ゼオンが山陽モノマーを停止
セントラル化学がVCMを停止、PVCからも撤退した(下記)
(旭硝子はその後、PVCから撤退。三井、電化は大洋塩ビメンバーで東ソーがVCMを供給。住化、ゼオンは新第一塩ビメンバーでトクヤマが96/12にS&Bにより30万トンの新鋭設備をスタートさせている。)

エチレンメーカーにとってVCMの停止は痛手だが、三井の場合はエチレンを東ソーに供給すること、住友化学はエチレン不足の状況であったため、実行できた。

・旭硝子と三菱化学は鹿島の鹿島塩ビモノマーの引取権を信越化学と鐘淵化学に譲渡

②新第一塩ビの改組
95年の設立以来4年間で資本金70億円をすべて食いつぶし、再構築策を発表
・日本ゼオンと住友化学がそれぞれ14.5%に出資比率を落とし、実質撤退、トクヤマ
主導に。
ゼオンの水島工場(汎用品)停止、山陽モノマー停止
・VCMはトクヤマが供給
・(その後)ゼオン高岡工場も08/3停止予定

③チッソの塩ビ事業撤退
99年6月、水俣病に関する関係閣僚会議申合せでチッソに対する支援策が提示されたのを受け、チッソは00年1月再生計画を発表した。不採算の塩ビ事業を鐘淵化学に営業譲渡すること、可塑剤については三菱瓦斯化学とのJVとすること等が含まれている。

これに基づき00年4月に鐘化に塩ビ事業の営業譲渡が行われ、5月に千葉、7月に水俣工場を停止、残る水島工場も03年3月に鐘化からの製造受託契約期限切れで停止し、1941年からの同社の塩ビ事業の歴史を閉じた。

④大洋塩ビの改組  
00年
3月末で資本金100億円に対して累積損失が160億円を超えるといわれているが、3月末で一旦同社を解散し、改めて同一社名で新会社を設立した。
新会社は東ソーが68%で運営責任を担い、三井、電化はそれぞれ16%となった。三井、電化ともVCMからも既に撤退しており、塩ビ事業から実質的に撤退した。

⑤呉羽化学の塩ビ事業撤退
02年11月、呉羽は事業再構築計画を発表した。
全世界のMBS事業をローム・アンド・ハースに営業譲渡するともに、塩ビ事業についても大洋塩ビに営業譲渡し、今後は高付加価値事業を推進するというものである。
塩ビ事業の営業譲渡は03年1月に行われ、錦工場のプラントは04年3月までは大洋塩ビのために受託生産を行い、その後停止した。

⑥旭硝子の塩ビ事業撤退
旭硝子は自社PVCプラントを所有せず、チッソ千葉工場に1万トンの自社枠を所有し製造委託しているほかは、鹿島塩ビモノマーの引取枠分を信越に製造委託するとともに、呉羽化学に製造委託していた。
鹿島塩ビの引取枠放棄、及びチッソ千葉工場の停止後は販売量全量を呉羽に製造委託していたが、呉羽の塩ビ事業撤退を受け、02年12月末で塩ビ事業から撤退した。

同社では化学品の構造改革の一環として千葉地区の電解や京葉モノマーの停止を検討したが、特にVCMの停止でエチレン消費が激減し致命的な影響を受ける丸善石油化学の反対が強かった模様で、「検討課題」としつつ、輸出が好調なため、輸出基地として存続させている。

⑦セントラル化学の塩ビ事業撤退
セントラル化学は1963年、セントラル硝子と東亜燃料のJVとして設立され、電解、VCMその他の事業を行っていたが、その後東亞合成が参加、同一メンバーによるPVCのJV・川崎有機にVCMを供給するとともに、自社分のPVCの製造委託を行っていた。東亜合成と三菱化学がヴイテックを設立した後、川崎有機は東亜合成に吸収され、セントラル化学はセントラル硝子100%となっていた。

同社のVCMは132千トンと規模も小さく、塩ビ事業の不採算の中、03年3月でVCMプラントを停止し、PVCの販売も止め、塩ビ事業から撤退した。

⑧ヴイテックの再編
同社は00/4に設立したが、03/12で資本金60億円に対して累損が162億円に達していた。
05年3月、ヴイテックは再編を行い、三菱
化学が85.1%出資となり、東亜合成は実質撤退した。

上記の結果、塩ビ業界においてはメーカー数だけでなく、VCM、PVCともにプラント数も著しく減少することとなる。

・現在のメーカーは信越化学、カネカと、新第一塩ビ(実質・トクヤマ)、大洋塩ビ(実質・東ソー)、ヴイテック(実質・三菱化学)の5社と需要家の積水化学の徳山積水だけとなった。

・休止したPVCプラントは(予定も含めると)、新第一塩ビのゼオン・水島、同・高岡、呉羽化学・錦、チッソ・千葉、同・水俣、同・水島の6プラント。

・VCMについても旭ペン、千葉塩ビモノマー、セントラル化学、三井化学・大阪、山陽モノマーの5プラントが停止した。
残るVCMプラントは輸出専用の京葉モノマーを除くと、信越化学(及びカネカ)向けの鹿島塩ビモノマーと三菱化学、カネカ、東ソー(四日市及び徳山)、トクヤマと、PVCとの一貫体制となっている。

・但し、PVC能力は2004年末で234万トンと、内需の150万トン弱を大きく上回っている。  
このため、更なる再編が必要とされた。

なお、単独組の信越化学、カネカは国内外で健闘しており、特に信越化学は米国及び欧州での事業を拡大し、世界一の塩ビメーカーとなった。Sinetu_1

以下 続く

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