事業統合に関する公取委の判断の変遷-2

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ポリプロピレンの事業統合(日本ポリケム/チッソ、三井化学/住友化学):

2000年11月、三井化学と住友化学は全面統合に先立ちポリオレフィン事業を2001年10月に統合することを発表、また、2001年6月、三菱化学はPE事業での日本ポリケムと日本ポリオレフィンの、PP事業での日本ポリケムとチッソの、事業統合計画を発表が発表し、公取委に事前相談した。

これに対して公取委は次の理由でPP統合に問題ありとした。
・日本ポリケム及びチッソは統合後の合算販売数量シェアは、約35%(第1位)、また三井化学及び住友化学は合算販売数量シェアは、約30%(第2位)となり、上位3社の累積集中度が約85%となる。
輸入圧力の限定性
・汎用性に乏しいグレード数の多さとそれに起因する取引関係の固定性
PP分野におけるメーカーの協調的行動

公取委は2000年5月に「ポリプロピレン値上げについて談合の疑いがある」としてメーカー7社に立ち入り調査を行い、全社に排除勧告を行った。これに対してグランドポリマー、日本ポリケム、チッソの3社は応諾したが、住友化学、出光石油化学、サンアロマー、トクヤマの4社は勧告理由を不服として拒否し、後になって、応諾した3社のうち、日本ポリケムとチッソは課徴金納付命令について審判手続の開始を請求した。これらの審判は今なお、継続している。

公取委の指摘を受け、各社は
・少量販売グレードの統廃合等により、PPのグレード数を削減する
業界団体の会合等への出席の禁止や事前届出など、独占禁止法遵守体制を更に徹底する
と約束し、
ようやく承認を得た。(三井/住友のPE統合は当初から問題なし)

なお、これを機に、2001年12月に石油化学工業協会は、PE委員会、PP委員会など協会内の各種委員会を廃止することを決めた。

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三井化学/住友化学合併:

公取委は重点的に9品目を検討した。その結果、
・3品目は問題がないと判断
  ペンタエリスリトール、EPDM
変性PPE 樹脂
・3品目は競争への影響をみるべき企業結合関係がないと判断
  TDI、MDI、PPG
 *住化40%/バイエル60%JVのSBUについて、住化の議決権保有比率を10%に変更することで。
・3品目は問題点を指摘
 (
有効な牽制力を有する競争事業者が存在せず,輸入圧力が十分に働いているとはいえない状況)
  アニリン、レゾルシン、メタパラクレゾール

これに対して両社は以下の対応をとることを約束し、公取委の承認を得た。
・一定数量のコストベースでの引取権の設定
・アニリンについて輸入販売を容易にするため貯蔵タンクの提供
・実施状況の報告

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日本ポリエチレン設立(日本ポリケム/日本ポリオレフィンのPE事業統合):

本件は難航した。日本ポリケムは三菱化学と東燃化学のポリオレフィン事業統合会社だが、東燃化学は別途、日本ユニカーの親会社でもある。(グラフをクリックしてください)

Jpejppsikumi 公取委は、統合会社のLDPEの合算販売シェアは約30%で第1位、上位3社累積シェアは約70%だが、東燃化学を通じて日本ユニカーとの結び付きがあり、これを前提にすればグループの合算販売数量シェア・順位は約45%・第1位、上位3社累積シェアは約80%になるとして問題視した。また、今後、輸入圧力が高まる可能性は認められるものの、現状において品質等に対する要求の高さから,輸入圧力が十分に働く蓋然性が高いとは認められないとした。

このため三菱化学と東燃化学が交渉の結果、2003年1月に三菱化学が東燃化学所有の日本ポリケム株式を買取り、日本ポリケムを三菱の100%子会社とすることで合意、これを受けて公取委は日本ポリエチレンの設立を承認した。

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プライムポリマーの設立(三井化学と出光興産のポリオレフィン事業統合): 

公取委は以下の通り、LLとHDPEは問題なし、PPは問題ありとの判断を行った。

L-LDPE:有力な競争業者が複数存在することや一定の輸入圧力が認められる。
 (LDPEは出光が製造販売していない)
HDPE:有力な競争業者の存在,競争業者の代替能力,製品輸入の拡大等
PP:
 ・合計市場シェアが約40%・第1位、上位2社が著しく高いシェアを有することとなる。
 ・国内事業者に十分な供給余力がない
 ・輸入圧力が十分に働いていない(アジアでの需給の逼迫、輸入品の価格メリットが減少)

これに対して両社から以下の申し入れがあり、公取委はこれを受けて統合を承認した。
・第三者へのコストベースでの長期的引取権の付与(PP 3万トン/年)
・国内外メーカーへの技術ライセンス供与
・グレードの削減
・コンプライアンスの徹底
・公正取引委員会への報告

なおコンプライアンスについては以下の約束をしている。
・就業規則に、法令に違反するなど会社の名誉又は信用を傷つける重大な行為があったときは懲戒解雇に処する旨(情状により減給,出勤停止等)規定するとともに、全営業担当者等から、独占禁止法を遵守し、違反があった場合は就業規則に則り厳正な処分を受けても異存はない旨の誓約書をとること。
・同業者と打合せが必要な業務については、原則営業部門以外の部門の業務区分とすること。
・営業担当者等が同業者と面談することが必要な場合には、担当取締役から事前の承認を得るととともに同取締役に対し事後報告を行うこととすること。

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今後、日本の石油化学が生き残るためには各品目ごとに2-3社のメーカーに統合することが必要であろう。その場合、現在の基準(統合会社の市場シェア及び上位2社のシェア)では必ず問題とされる。また一時的なアジア需給バランスで輸入圧力がないとされれば、PSのPSジャパンと大日本インキ化学の事業統合のように、統合が認められないこととなる。

しかし、長期的にみれば輸入圧力が出てくることは明白である。その時点で日本のメーカーが破綻してしまえば、影響は公取委が守ろうとする日本の需要家に及ぶ。

公取委の判断基準の見直しが必要である。

 

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