世界中でPTAの大増設が続いている。筆者のデータベース更新情報では4/13に欧州、ブラジル、中国、タイのPTAの記事が同時に載った。
PTAはポリエステル繊維やペットボトルの原料で、需要は伸びている。中国では年率10%の成長が見込まれている。しかし、こんなに増設して大丈夫であろうか。これもバブルではないのだろうか。
2006/3のMETI「世界の石油化学製品需給動向」では2007年の全世界の需要を3,700万トン、能力を4,400万トンとしており、能力が上回っている。しかし、この能力は過小とみられており、例えば、中国の能力を1,230万トン(生産836万トン)としているが、中国の情報では1,840万トン(生産1,400万トン)となっており、600万トンの差がある。
中国の増設計画は下記の通り。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/china/china-5.htm#pta-plan
三井化学は中国のポリエステル大手と進めていたPTAの3月の輸出価格交渉で3ヶ月連続で値下げをした。中国国内のポリエステル繊維の国内需要と輸出がともに不振で、重合各社の3月の平均稼働率は65%に止まり、在庫が膨らんでいるという。
メーカー各社の動きをみる。
日本のメーカーでは三菱化学と三井化学が海外で競っている。
三菱化学:
同社は海外シフトをとり、国内では黒崎工場を停止、松山工場(旧松山化成)で25万トンを生産している。
韓国では三養社とのJVの三南石油化学(40%出資)で150万トン、
インドネシアでは三菱化学インドネシア(旧バクリー化成:83.2%出資)で64万トン、
インドではMCC PTA (66%出資)で47万トン(80万トン増設を決定)を生産している。
中国では日本側投資会社(三菱化学61%+伊藤忠、三菱商事)が90%、中国中信集団が10%出資の寧波三菱化学を設立、浙江省寧波市大シャ島でPTA60万トンプラントを建設している。
なお、同社は三菱ガス化学とダイヤティーエーを設立(三菱化学65%)を設立し、国内の販売を統合した。
三菱ガス化学は東洋紡との50/50JVの水島アロマで25万トンの生産を行っている。
三井化学:
日本では岩国で75万トンの生産を行っている。
インドネシアではBPとのJV・PT Amoco Mitsui PTA Indonesia (45%出資)で45万トンを生産、
タイではサイアムセメントとのJV・Siam Mitsui PTAで140万トンの生産を行っている。
同社は中国に三井化学(張家港)を設立して江蘇省張家港市で60万トンのPTAを生産する計画で2004年に投資認可申請をしたが、未だに認可を得られていない。同社では代わりにタイでの増設も検討している。
このほか、東レが東海工場で25万トンのプラントをもっている。
帝人は松山南で23万トン、徳山で9千トンでDMTのプラントをもつ。
PTAの世界のトップメーカーはBPである。同社はオレフィンと誘導品事業をInnoveneとして分離した上で昨年12月にIneosに売却したが、TPAと原料パラキシレン及び酢酸事業をコア事業として残している。(酢酸でのSINOPECとの提携の関係で上海SECCOはIneosへの売却から外し、自社事業とした)
同社によると「アジア、北南米、欧州に合計 900万トン以上の21のプラントをもち、JV分を含めると世界の能力の31%(自社枠だけでは21%)を占める。またパラキシレンでも合計290万トンの能力で、世界の11%を占めている。」
同社の現状は以下の通り。
Geel (ベルギー):デボトルネックを実施中で35万トン増設し140万トンとする。
米国の南カロライナ州Cooper River プラントで2系列127万トン。
ブラジルのサンパウロにRhodia-Ster/M&G とのJV・Rhodiaco Indústrias Químicas(49%出資)で南米唯一(*)の25万トンプラント。
台湾で中国石油等とのJVのCAPCO (59.02%)でアジア最大の6系列合計210万トン。
韓国で三星グループとのJVの三星石油化学(47.41%)で140万トン。
インドネシアで三井化学とのJVのPT Amoco Mitsui PTA Indonesia (50%出資)で45万トン。
マレーシアでBP単独で60万トン。
中国では富華集団とのJVのBP Zhuhai(85%出資)が広東省珠海で35万トンを生産。なお、同社は最新技術で80万トンの新工場を建設することで申請中。
*ブラジルではPetrobras子会社のPetroquisa が55万トンのPTAプラント建設を検討中。
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