大日本インキ化学は永年赤字が続いた米国の合成樹脂事業子会社ライヒホールドを中間期末に売却した。
同社の営業損益は順調に増加している。2006年3月決算でも、主要原料価格の高騰に対し、販売価格の是正を積極的に進め、特に工業材料での販売価格是正の効果があり、前期比2.8%増益の495億円となった。欧米の工業材料はライヒホールドを中間期末で売却し、赤字から黒字に転じた。
しかし特別利益、特別損失は毎年膨大で、当期純利益は変動している。
特に、欧米で合成樹脂事業(不飽和ポリエステル、塗料用樹脂、エマルジョン、接着剤等)を行う子会社のライヒホールドの赤字が続き、その関係で大きな特別損失を出していた。(単位:億円)
02/3 | 03/3 | 04/3 | 05/3 | 06/3 | |
営 業 利 益 | 309 | 402 | 438 | 482 | 495 |
経 常 利 益 | 80 | 204 | 314 | 452 | 485 |
特 別 利 益 | 187 | 24 | 92 | 318 | 290 |
特 別 損 失 | 384 | 95 | 170 | 464 | 647 |
税引前純利益 | -117 | 134 | 237 | 307 | 127 |
税 金 | -168 | 100 | 158 | 188 | 58 |
少数株主利益 | 7 | 10 | 15 | 13 | 16 |
当期純利益 | 44 | 24 | 64 | 106 | 53 |
特別利益、特別損失の主なものは以下の通り。(単位:億円)
02/3 | 03/3 | 04/3 | 05/3 | 06/3 | |
特別利益 合計 | 187 | 24 | 92 | 318 | 290 |
資本償還益 | 261 | ||||
固定資産売却益 | 88 | 2 | 6 | 4 | 10 |
事業売却益 | 78 | 69 | 4 | ||
匿名組合投資利益 | 13 | ||||
退職給付債務減少益 | 234 | ||||
厚生年金基金 代行部分返上益 |
66 | ||||
特別損失 合計 | 384 | 95 | 170 | 464 | 647 |
事業売却損 | 542 | ||||
固定資産減損損失 | 30 | ||||
営業権減損損失 | 146 | 196 | |||
関係会社リストラ費用 | 65 | 61 | 77 | 50 | 61 |
事業損失引当金繰入額 | 40 | 26 | |||
ゴルフ場事業関連損 | 137 | ||||
固定資産処分損 | 100 | 28 | 35 | 44 | 14 |
工場移転関連損 | 46 | 4 |
2005/3までの特別損益の主なものは以下の通り。
事業売却益:02/3は米州のラテックス事業をダウ・ケミカル社に売却したもの、05/3はアグリケミカル事業を日本曹達に譲渡。
退職給付債務減少益:ポイント制キャッシュバランスプラン型の新しい退職金・年金制度に移行
営業権減損損失はライヒホールド、リストラ費用は同社を含む海外関係会社中心。
ゴルフ場事業関連損は関係会社の天ヶ代ゴルフ倶楽部。
2002/3の税金のマイナスはライヒホールドの株式について単独決算で609億円の評価損を計上したことにより、税効果額約 256億円が連結決算上では税金費用のマイナスとなったもの。
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2006年3月期でライヒホールドを売却し542億円の特別損失を出した。他に固定資産減損損失は、売却前にライヒホールド本社ビルの評価減をしたもの。
1987年にライヒホールドグループを買収して以来、欧米において合成樹脂事業を展開してきたが、近年業績不振が継続しているため、事業譲渡を中心に抜本的なリストラクチャリング策の検討を進めてきた。
商権の散逸を防止し損失を最小に抑えるためには、MBO方式により現経営陣に売却することが最善の策であるとの結論に至った。
なお同じ期の特別利益の資本償還益は米国の100%出資子会社サンケミカルとイーストマン・コダックとの折半出資の合弁会社コダックポリクロームグラフィックス(感光性アルミ版および製版用フィルムを中心とした印刷資材事業)の持分ををKodakに売却したもの。
同社ではライヒホールドの売却により、今後は安定した利益を予想している。(単位:億円)
06/3実 | 07/3 | 08/3 | 09/3 | |
営業損益 | 495 | 510 | 560 | 660 |
当期損益 | 53 | 200 | 260 | 310 |
大日本インキ化学は1987年にライヒホールドを買収して以来、欧米の多くの事業を買収してきた。
主な製品は、コンポジット(不飽和ポリエステル)、コーティング(塗料用樹脂)、エマルジョン(ラテックス)、接着剤である。
1927 | Henry Reichholdが設立 |
1985 | Swift Adhesives を買収 |
1987 | DICがReichholdを買収 |
1987 | Koppers のpolyester resin 事業を買収 |
1989 | Spencer Kellog の coating resin 事業を買収 |
1995 | Ashland Canadian の coatings 事業を買収 |
1995 | Celanese Mexican の resin 事業を買収 |
1995 | Reichhold Europe 設立 |
1995 | Heitz Alsacol (France) の adhesive 事業を買収 |
1996 | Costenaro SpA (Italy) の adhesives and resins 事業を買収 |
1996 | Resana S/A (Brazil) のresins and polymer 事業を買収 |
1997 | Lyons Coatings (Franklin, MA) を買収 |
1997 | Jotun Polymer (Europe/Asia & Middle East)を買収 |
1998 | 社名をReichhold Chemicals, Inc.から Reichhold, Inc.に改称 |
1999 | Czech Republic (JV) (Spolchemie)を買収 |
2000 | Fibercenter Ltda. (Brazil)を買収 |
2001 | Dow-Reichhold Synthetic Latex JV 設立 |
2002 | 接着剤事業 Swift Adhesives Ltd.(英)、 Swift Adhesifs S.A.(仏)他を売却 |
2005 | Brazilian Resin Manufacturer IBRを買収 |
2005 | MBO 方式による売却 |
大日本インキ化学では、1987年に印刷インキ、顔料、印刷材料の製造・販売のSun Chemical Group を買収したが、その後多くの事業を買収している。
1929 | Morrill Co.が他の4つのインキ会社と統合しGeneral Printing Ink (GPI)を設立 |
1935 | GPI が Sun Chemical and Colors of Harrsion, NJ を買収 |
1945 | GPI が Sun Chemical と改称 |
1980 | Sun がAmerican Cyanamidからphthalo pigment business を買収 |
1987 | DICがSun を買収 |
1991 | Sun がBASF Packaging and Commercial のインキ事業を買収 |
1992 | Sun がデンマークの KVKを買収、欧州進出 |
1993 | Sun が United States Printing Ink (known as US Ink)を買収 |
1994 | Sun が Moscow Printing Inksを買収 |
1996 | Sun が Zeneca Specialty Inksを買収、 北米のpackaging inks department強化 |
1997 | Sun がEastman Kodak との 50/50 jv Kodak Polychrome Graphics設立 2005/1 Sunが持分をKodakに売却(上記) |
1999 | Sun がトタルフィナから インキ部門Coates Lorilleuzを買収 コーツ・ブラザース(米国)、コーツ・ブラザース(英国)、 コーツ・スクリーン・インクス(ドイツ)他4社 及びその関係会社 計約75社(約40ヵ国) |
2003 | Sun が Bayerの high performance organic pigment businessを買収 |
2004 | Sun がトルコのCBS Holdingの印刷インキ事業CBS Printasの資産を買収 |
決算短信:
http://www.dic.co.jp/ir/finance/2006/20060511_s_01.pdf
決算説明資料:
http://www.dic.co.jp/ir/finance/2006/20060511_s_02.pdf
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