3月決算の発表がほぼ終わった。化学会社の決算を別紙にまとめた。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/kessan-taihi.htm
信越化学の好調な決算が目立つ。米国のシンテックの塩ビ事業は大増益となっている。
(2006/5/16 「世界一の塩ビ会社 信越化学」参照)
営業損益でみると前年の場合はほとんど全社が前年比でプラスとなっていた。
本年度も前年比プラスの会社が多いが、ダウンしている会社も見られる。製品によって、特に海外活動で明暗が分かれている。
中国で増設が相次いでいる合繊原料やVCM、PVCで市況が軟化しており、これらの製品で早くも影響が出始めている。逆にスペシャリティ製品は相変わらず好調である。炭素繊維やポリカーボネートは大増益となっている。
営業損益の減少したのは、三菱化学の石化部門、三井化学の石油化学と基礎化学品部門、東ソーの基礎原料部門である。
合繊原料やVCM、PVCでの海外市況の低下が響いている。
三菱化学のポリオレフィン子会社は前年比増益だが、三井化学では価格転嫁の遅れが影響しているとしている。
旭硝子(12月決算)はガラス、電子・ディスプレイの関連での減であり、旭化成は退職給付会計における数理計算上の差異の関係での減である(実質的には営業損益は91億円の増益)。
(三菱化学、三井化学、東ソー、旭化成の決算については 5/17 「総合化学大手 連結決算対比」参照)
逆にスペシャルティ製品(およびハイテク材料)については相変わらず好調である。
住友化学の基礎原料ではナイロン原料のカプロラクタムが好調である。
東レは炭素繊維複合材料が大増益となった。
炭素繊維“トレカ”が、航空機用途の拡大をはじめとして、ゴルフシャフトに加えて高級自転車向けが急拡大しているスポーツ用途、天然ガス自動車用CNGタンクなどの自動車向け、風力発電用風車ブレード、土木建築などの産業用途で順調に拡大。また、炭素繊維成型品(コンポジット)も、パソコン筐体等情報機器分野や産業機械分野で好調に推移した。
帝人では既報の通り、合成繊維部門ではアラミド繊維関連の営業損益は183億円(前年153億円)、炭素繊維の東邦テナックス関連が42億円(同23億円)と増益、化成品部門ではフィルム事業が97億円(前年66億円)、PC事業関連は315億円(前年125億円)と大幅増益である。(2006/5/11 「3月決算 注目企業ー帝人」 参照)
宇部興産でも化成品・樹脂部門が好調。ポリブタジェン(合成ゴム)、カプロラクタム、ナイロン樹脂の出荷が堅調で、各製品とも良好な需給バランスを背景に製品と原料の価格差が改善した。
三菱レイヨンでも炭素製品・複合材料、機能膜部門と化成品・樹脂部門が増益となっている。
化成品・樹脂部門では、MMAモノマーがアジア向けなどの需要が引き続き好調に推移し、逼迫した需給バランスに対応し日本でのフル操業を維持、タイの増設分も寄与した。
JSRは既報の通り、多角化事業が業績に大きく寄与しているが、合成ゴムやABSも値上げで営業利益が増加している。
(2006/5/10 「3月決算 注目企業ーJSR」参照)
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2004年度はどの化学製品も中国の旺盛な需要が日本の過剰能力を吸収した結果、好調な決算となった。
しかし、中国市場は明らかに変わってきている。
中国の能力増が著しい合繊原料、VCM、PVCが最初に日本企業に影響を与えた。
今後はポリオレフィンなどについても影響が出るであろう。
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