ポリオレフィン関連の米国進出

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三菱化学は10日、米エクソンモービルケミカルとの合弁の米国及びシンガポールの自動車用PPコンパウンド会社について、6月1日付でエクソンの持分を買い取り、100%子会社とすると発表した。

自動車メーカーの米国進出に伴い、1980年代に日本のPPメーカーは自動車メーカーの要請もあり、相次いで米国進出を検討した。

このうち宇部興産、三井東圧、三菱油化等は、米国のPPを購入してコンパウンドで自動車メーカーに供給する戦略をとった。これに対して住友化学は自社技術のPPで進出して最適の製品を供給する方針をとり、PPメーカーと交渉した。

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宇部興産:

1985年、宇部興産 60%、丸紅 40% ATC Inc (当初名はアメリカン・テクノロジカル・コンポジックス)設立し、テネシー州ナッシュビルに工場をつくった。その後、メキシコにも子会社ATC Mexicanaをつくり、米国で44千トン、メキシコで11千トンの能力とした。

宇部興産はその後、日本で三井化学とPP事業を統合してグランドポリマーを設立したが、2001年10月に同社の持分を三井化学に譲渡してPP事業から撤退、ATC持分も2002年5月に三井化学に譲渡した。

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三井化学:

1986年6月に当時の三井東圧が65%出資、三井物産30%、東洋インキ5%出資で Color & Composite Technologies, Inc. を設立した。
オハイオ州シドニーに65千トンのプラントを建設した。

2002年5月に宇部興産からATC持分を購入し、2003年1月にATCとCCT両社を統合して新しく Advanced Composites, Inc. を設立した。
出資は三井化学が
62.8%、三井物産が27.0%、丸紅が10.2%となっている。現在の能力はメキシコを含め120千トンとなっている。

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三菱化学:

1987年2月に当時の三菱油化がエクソンとの均等出資で Mytex Polymer General Partnership を設立した。インディアナ州に25千トンの能力をもつ。両社は2000年に同じく均等出資で Mytex Polymers Asia Pacific Priveate Limited を設立している。

前記の通り、三菱油化はエクソンモービルから同社持分を買収し、両社を100%子会社とする。
同社では
高品質な原料PPを安定的に確保することが不可欠であるとし、北米・東南アジアでは従来から引き続き、エクソンモービルから原料PPの供給を受けるとともに、チッソとのPP統合会社日本ポリプロの高付加価値PPプロセスのライセンス事業との連携によって、より高品質な原料PPのグローバルな安定確保を図ることとしている。

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このほか、三菱商事がカナダのACLO Compounders Inc. (能力20千トン)に約70%出資しているが、出光興産(当時は出光石油化学)が1990年にこれに出資している。

また機能樹脂のコンパウンドでは新日鐵化学が1988年にミシガン州のThermofil, Inc. を買収し100%子会社としたが、20006月に旭化成がこれを買収し、旭サーモフィル(アメリカ)としている。

エンジニアリング樹脂のコンパウンドでは川崎製鉄がLNPをICIから買収し、Kawasaki-LNP として米国とオランダで事業を行っていたが、川鉄が化学では石炭化学事業に特化することを決め、2002年にGEに売却している。また、東レは2001年に日本ピグメントの米国子会社ニッピサン・インデイアナのコンパウンド設備(2万トン)を買収し、米国子会社のトーレ・レジンで自社生産を行っている。

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住友化学:

これら各社の動きに対して住友化学は米国メーカーと組んで自社技術のPPのプラント建設を考えた。

同社はSolvayの米国子会社(Soltex)やカナダのポリサーと交渉したが、まとまらず、1987年頃からPhillips との交渉を始めた。
Phillips はシンガポールで共同でHDPE事業を行っている相手だが、Houston HDPE 54万トン、PP 22万トン、Kレジン 12万トンのプラントを持っていた。PPの触媒を住化触媒に切り替えるのを機に、PPを切り離して住友化学とのJVとし、住化法のPPを新設するという案で交渉を進めた。

1992年5月、両社はPhillips Sumika Polypropylene Co. を設立した。新プラント建設資金を住友化学が出して最終的に50/50にした。
1994
年8月にフィリップスのバルク法3系列計220千トンを引継ぎ、968月に住化気相法技術で1系列120千トンをスタートさせた。現在の能力は合計380千トンとなっている。

なお、住友化学はこの間、現地のコンパウンダーに住化処方でのコンパウンドの製造委託を行った。

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このほか、商社主導での進出があった。

三菱商事:

アリステック・ケミカルは化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。

1989年にハンツマンがアリステックの買収を計画した。アリステックはこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする提案もしたが、1990年に三菱商事が買収提案を行い、ハンツマンが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。買収額は850百万$だが借入金の引継ぎなどをいれると10億$以上となるといわれた。

当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レ-ヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。

2000年11月、三菱商事はアリステックをスノコ社に売却した。アリステックを買収して以来、石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転化しきれず、採算が大幅に悪化していた。譲渡価格は固定資産及び棚卸資産の合計で695百万ドル、これにその他の資産・負債を加減した金額になる。

なお、1997年にアリステック・ケミカルのアクリル樹脂事業部門を分離独立し、三菱レイヨンが10%出資し、Aristech Acrylics LLC を設立したが、これはスノコへの売却資産には含まれず、三菱商事が88%出資で残っている。

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伊藤忠:

1998年に伊藤忠は ARCO Products Co. とPPの製造販売のJV ARCO Polypropylene, LLC を設立した。ARCOの精油所内に建設中のPPプラント(年産20万トン)を保有・運営するもので、伊藤忠商事が1/3、残りはARCOが保有する。

伊藤忠はPP樹脂の貿易取引では年間35万トン以上と世界でトップの取扱高を持っており、これにより供給ソース及び販売網の拡大、多様化を図るもの。

その後、BPによるARCO買収などを経て2002年12月にBPが伊藤忠持分を買取り、伊藤忠は代わりにアジア、南米のエージェントの権利得ている。

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