Ineosの最近の発表に、BPから買収した元 Innovene のドイツ・ケルン工場のエチレンを10万トン増設するが、一部はARGパイプラインで他のプラントに送るとある。
2006/5/24 「RING 第三次事業計画 発表」記事に「コンビナート高度統合研究会」報告があるが、コンビナート統合の実現に向けた「提言」7項目の中の(3)「広域的パイプラインの敷設・整備」はこれを参考にしたものである。
コンビナート高度統合研究会の議事録に以下の発言がある。
「欧州に関して、日本の石油精製・石油化学が有し得ない競争力の一つはパイプライン網である。日本では、高コスト等によりパイプラインを欧州のように設置することができない。」(2005/11/25)
「我が国においても、ドイツのようにパイプラインは社会に必要であるとしたら必ず通すというようにしなければいけないと思う。パイプライン敷設を最初からあきらめていると、進まないのではないか。」(2005/12/16)
「石油・石化の連携・統合のための広域パイプラインの敷設は簡単ではないが、わが国の石油・石化産業が生き残るために必要だと考える。広域のパイプラインについても、非常にチャレンジングな課題ではあるが、このことを認識して、具体化を進めていきたい。」(2006/3/1)
欧州エチレンパイプライン会社ARGは正式には Aethylen Rohrleitungs Gesellschaft mbH & Co. KG で、1969年に BP、Huls(後 Degussaが吸収)、Erdolchemie (BP/BayerエチレンJV)、 Bayer、DSM (後 SABICが買収)及びScholven-Chemie(その後VEBA Chemie と改称、後 Degussaが買収) により設立された。
全長495kmで欧州のエチレン能力の半分、ドイツ・オランダ・ベルギーの能力の90%を結んでいる。(図参照)
現在の株主はBP、Westgas、Bayer、SABIC Hydrocarbons(元 DSM Hydrocarbons)、Sasol Germany、BASF の6社。2001年にDegussaの当時の株主のE.ONがBPにVeba Oel の製油・石油化学部門を売却した結果、BPがARGのHuls とScholven-Chemie持分を取得し 3/6の株主となるため、独禁法当局の認可条件として、 両社持分をSasol Germany と BASF に譲渡した。南アのSasol は欧州に誘導品 6工場をもち、うち2工場はパイプラインに接続している。
欧州にはARGのほかに、以下のようなエチレンパイプラインがある。
Shell pipeline :Rotterdam-Antwerp
FAO pipeline(Fina Antwerp Olefins ):Antwerp
NSM pipeline :Antwerp-Feluy
Solvay pipeline: to Jemeppe
InfraServ and BASF pipelines :in Germany
あるエチレン需要家は、ARGは高すぎるので、他のパイプラインと統合して値下げするべきだと主張している。
ARGの基本料率は、1トンのエチレンを50km運ぶのに30ユーロとなっている。(4.3円/kg)
大口割引は例えば、年間20万トンで6年契約などとハードルが高い。
ところで、日本にこのようなパイプラインが本当に必要だろうか。
千葉地区では既に北の丸善石油化学から南の住友化学までパイプラインが通じており、「コンビネーテッド・コンビナート」を形成している。欧州と異なり日本のコンビナートは全て海岸にあり、異なるコンビナートの間では船での輸送が行われている。
高い費用をかけて新しくパイプラインを設置する必要性があるのだろうか。
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