武田薬品、移転価格税制に基づく更正

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武田薬品は28日、米国アボットとの50:50の合弁会社のTAPファーマシューティカル・プロダクツ(TAP)との間の2000年3月期から2005年3月期の6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられたと発表した。

移転価格税制は1986年に基本的法規が制定されたもので、通常は異なる国の親子会社間での取引に対して適用されるもの。
親子会社間では価格が自由に決められることから、税率の高い国の所得を減らして税金を回避するのを防止するため、そのような取引価格については税務当局が査定して「独立企業間価格」に置き換え、所得を修正する。

TAPは1985年に武田とアメリカのアボットとの50/50合弁で設立され、2005年の売上高は32億ドル、全米第14位の医薬品企業。

武田は、
TAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではない、
価格を安くすればTAPの利益が増えて半分がアボットにいくため、武田にとってTAPに所得を移転する意図や動機はないとして、徹底抗戦の構え。
追徴税額は返還されるものとみなし、業績は修正せず、追徴分は貸借対照表には固定資産の「長期仮払税金」として計上する。

国税局側の主張は不明だが、通常は50/50JVとの取引価格は独立企業間価格とみられ、移転価格税制は適用されず、武田側の主張は当然である。

 

移転価格税制では独立企業間価格はまず、「伝統的な取引基準法」で検討され、それが適用できない場合には「その他の方法」で検討する。日本から米国子会社への取引価格の例では方法と問題点は以下の通りとなる。

① 伝統的な取引基準法

 ・独立価格比準法(CUP法)
   同種製品の独立企業間(日本→米国)の取引価格を検討
   (比較可能性の高い取引の選定が困難)

 ・再販売価格基準法(RP法)
   米国の比較可能な同業の財務データに基づいて販売会社がどの程度の売上利益率を計上しているかを検討
   (取扱製品の類似性が厳格に要求され、比較可能な同業の財務データの取得は困難) 

 ・原価基準法(CP法)
    日本の比較可能な同業の財務データに基づいて製造原価に対してどの程度利益の上乗せをしているかを検討
    (比較可能な同業の
売上総利益データの取得は困難)

② その他の方法
 ・利益分割法(PS法)
    連結ベースでの営業利益がどのような割合で日本本社ならびに米国販売子会社で分けられるかを検討

 ・取引単位営業利益法(TNMM法 平成16年度税制改正により導入)
    再販売価格基準法が売上総利益を見るため製品の類似性が要求されるが、こちらは
営業利益率を検討
    (類似した子会社機能で類似した業界であれば、同種製品でなくとも営業利益率はほぼ一定という経済仮説)

武田によると、国税局はTAPへの抗潰瘍薬の販売で武田の利益配分が不当に低いとしているとのことで、利益分割法(PS法) での判断ではないかと思われる。

参考 KPMG資料 http://www.kpmg.or.jp/resources/newsletter/tax/200511_1/01.html

 

移転価格税制による更正の実績は以下の通り。

具体例 (単位:百万円)

年月 会社名 更正所得額 更正税額 対象取引 管轄国税局

2006年6月

武田薬品工業

122,300

57,000

医薬品

大阪国税局

2005年6月

TDK

21,300

12,000

電子部品等

東京国税局

2005年6月

ソニー

21,400

4,500

ロイヤリティ

東京国税局

2005年5月

日本金銭機械

3,400

1,600

紙幣識別機

大阪国税局

2005年3月

京セラ

24,300

13,000

電子部品等

大阪国税局

20046

本田技研

25,400

13,000

ロイヤリティ等

東京国税局

20038

太陽誘電

N/A

1,700

ロイヤリティ

東京国税局

200211

ローランド

1,000

330

電子ピアノ

大阪国税局

20004

コカコーラジャパン

45,000

17,000

ロイヤリティ

東京国税局

199910

ファイザー製薬

4,500

2,700

金利

東京国税局

19992

チバガイギー

8,000

3,300

医薬品

大阪国税局

199811

ネスレ日本

1,500

700

ロイヤリティ

大阪国税局

19987

曙ブレーキ

500

300

N/A

東京国税局

19987

バクスター

15,000

6,000

医療機器

東京国税局

19987

山之内製薬

54,100

24,200

ロイヤリティ

東京国税局

19987

村田製作所

13,700

5,500

電気機器

大阪国税局

19979

ジャーデンワインズ

16,000

7,000

ワイン

東京国税局

19956

日本ロシュ

14,000

6,000

化学薬品

東京国税局

199512

シマノ

2,000

800

ロイヤリティ

大阪国税局

199411

P&G

2,000

800

家庭用品

大阪国税局

199410

ヘキストジャパン

7,000

3,000

医薬品

東京国税局

19949

日本グッドイヤー

1,400

600

タイヤ

東京国税局

19944

AIU保険

N/A

2,000

再保険料

東京国税局

19944

チバガイギー

12,000

5,700

医薬品

大阪国税局

19943

コカコーラジャパン

38,000

15,000

ロイヤリティ

東京国税局

19933

日本ロシュ

9,500

3,800

化学薬品

東京国税局

移転価格税制による更正所得金額

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