経産省は5月31日に「新・国家エネルギー戦略」を発表した。
概要 http://www.meti.go.jp/press/20060531004/senryaku-p.r.-set.pdf
骨子 http://www.meti.go.jp/press/20060531004/senryaku-kosshi-set.pdf
全文 http://www.meti.go.jp/press/20060531004/senryaku-houkokusho-set.pdf
戦略によって実現を目指す目標:、
①国民に信頼されるエネルギー安全保障の確立、
②エネルギー問題と環境問題の一体的解決による持続可能な成長基盤の確立、
③アジア・世界のエネルギー問題克服への積極的貢献
具体的な取組み:
(1)世界最先端のエネルギー需給構造の確立
およそ50%ある石油依存度を、2030 年までに40%を下回る水準とする
①省エネルギーフロントランナー計画
②運輸エネルギーの次世代化
③新エネルギーイノベーション計画
太陽光発電コストを2030 年までに火力発電並みに。
バイオマスなどを活用した地産地消型取組を支援し地域エネルギー自給率を引き上げる、など
④原子力立国計画
2030年以降においても、発電電力量に占める比率を30~40%程度以上にする。
(2)資源外交、エネルギー環境協力の総合的強化
①総合資源確保戦略
石油自主開発比率を、2030 年までに、引取量ベースで40%程度とする。(現在15%程度)
②アジアエネルギー・環境協力戦略
省エネをはじめエネルギー協力を展開し、アジアとの共生を目指す。
(3) 緊急時対応の充実
製品備蓄の導入をはじめとする石油備蓄制度の見直し・機能強化
天然ガスに関する緊急時対応体制の整備など
(4) その他
2030年に向けて解決すべき技術開発課題を、エネルギー技術戦略の形でまとめる。
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日本が関与する主な石油開発計画は次の通り。(朝日新聞 2005/12/29)
このうち、イラン、ロシアの大規模計画はいずれも問題を抱えている。石油の重要性が増すなかで、自主開発比率を高めるのは難しくなっている。
国 | プロジェクト | 最大能力 | 参加企業 | 割合 |
イラン | アザデガン油田 | 原油 26万B/D | 国際石油開発 | 75% |
ロシア | サハリン1 | 原油 25万B/D LNG 600万T/Y |
サハリン石油ガス開発 | 30% |
ロシア | サハリン2 | 原油 16万B/D LNG 960万T/Y |
三井物産 | 25% |
三菱商事 | 20% | |||
ベトナム | ランドン油田 | 原油 6万B/D | 新日本石油 | 46% |
UAE | ムバラス油田 | 原油 2万B/D | アブダビ石油 | 100% |
アザデガン油田
2000年11月、ハタミ大統領の訪日時に日・イラン間でアザデガン油田開発の日本企業の優先的交渉権について合意。
2004年2月に国際石油開発(株)がイラン国営石油会社(NIOC)とアザデガン油田の評価・開発に係わる契約に調印した。
国際石油開発とNaftiran Intertrade Co. Ltd.(NIOCの子会社)は、それぞれ75%と25%の参加権益で本契約に基づき、イラン国営石油会社NIOCのコントラクターとして、アザデガン油田の評価・開発作業を推進することとなった。
同油田の推定埋蔵量は約260億バレルで、「日の丸原油」としてはアラビア石油が2000年にサウジアラビア、2003年にクウェートの採掘権を失ったペルシャ湾沖のカフジ油田以来の大規模権益となる。
* ヤダバラン油田については2006/5/30 「中国の石油関連海外進出」 参照
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イランの核開発疑惑を批判する米国政府が、同社の大株主である日本政府にイラン向け投資を再考するよう求め、政府も開発着手に慎重だったが、国際石油開発は開発を2006年中に始める方針を固めた。
しかし、アザデガン油田はイラン・イラク国境に近く、イラン・イラク戦争で100万発といわれる地雷が敷設され、そのままになっているため、地雷の除去を始めた。
2日のイランのファルス通信によると、イランの石油相は、国際石油開発が「契約期限の9月22日までに進展を見せなければ同社に与えた開発権を取り消し、イラン政府が引き取る」と表明、早期着工を促した。
国際石油開発はイラン側が約束した油田の地雷除去を終えていないことが遅れの主因と主張、イラン側は地雷除去は96%終わっており、作業に問題はないと反論している。
サハリン計画
内容は以下の通りだが、 ロシア天然資源省は本年5月25日、サハリン1・2プロジェクトの効率化を図るため、開発権をロイヤル・ダッチ・シェルとエクソンモービルからロシアが掌握することが妥当な可能性がある、との見解を示した。ロシアによる国営化の動きとして警戒されている。
国営化するかどうかは別として、サハリン2では国営ガス会社のガスブロムがシェルの持つ権益55%のうち25%強をガスブロムの西シベリアの油田権益との交換で取得することで合意済みで、同様手法でサハリン1その他の権益取得を考えているとされている。
サハリン1プロジェクト
事業主体 | ・エクソンネフテガス社 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%) ・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO) (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%) ・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%) ・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%) ・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%) |
投 資 額 | 約120億ドル以上 |
開発鉱区 | オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ |
推定可採 埋 蔵 量 |
①石油 約23億バレル ②天然ガス 約4,850億立方メートル |
<石油>サハリン島を東西に横断し大陸側に至るパイプラインで運搬、そこからタンカーで日本等へ輸出
<ガス>日本へは、北海道の内陸の一部(石狩平野)を経由する海底パイプラインにより運搬する予定であったが、 パイプライン敷設が漁業補償問題で進んでいないほか、最大需要家になるとみられた東京電力も購入に難色を示したため、この計画は白紙となった。
エクソンは中国と交渉。
サハリン2プロジェクト
事業主体 | ・ロイヤル・ダッチ・シエル 55% (25%超をロシア・ガスプロムに譲渡で合意) ・三井物産 25% ・三菱商事 20% |
投 資 額 | 200億ドル (100億ドルから倍増) |
開発鉱区 | ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ |
推定可採 埋蔵量 |
①原油 10億バレル ②天然ガス 4,080億立方メートル |
<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出
契約済みのガス販売先:東京電力、東京ガス、九州電力、東邦ガス、韓国ガス公社など
開発地の近くに希少種のコククジラの繁殖地があり、NGOが融資しないよう銀行団に要求。繁殖地を回避するルートヘの変更を余儀なくされた。変更に伴う工期延長に加え、新たに調達する資機材コストが高騰し、所要資金が倍増した。
シェルは持分のうち25%超をガス・ブロムの西シベリアの油田権益と交換することで合意済み。
参考
サハリン3プロジェクト | |||
鉱 区 | キリンスキー | アヤシ(Ayashsky)、東オドプト(Odopinsky) | Venin |
事業主体 | 未定(2006年入札の見込み) | 未定(2006年入札の見込み) | ヴェニネフチ <出資企業> ・ロスネフチ・アストラ(露、49.8%) ・サハリンモルネフテガス・シェルフ (露、25.1%) ・シノペック(中、25.1%) |
当初 ・エクソンモービル社(米、33.35%) ・テキサコ社(米、33.35%) ・サハリンモルネフテガス・シェルフ社 (ロシア、16.55%) ・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 16.55%) |
当初 ・エクソンモービル社(米、66.7%) ・サハリンモルネフテガス・シェルフ社 (ロシア、16.65%) ・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 16.65%) | ||
推定可採埋蔵量 | ①石油 約4.53億トン 天然ガス 約7,200億立方メートル |
①石油 約1.67億トン ②天然ガス 約670億立方メートル |
①石油 約1.682億トン ②天然ガス 約2,580億立方メートル |
開発の現状 | 99.4 生産物分与対象鉱区に認定 (ただし、未だ生産物分与契約は締結 されていない。) 02.9 テキサコが今後20年間で90億ドル の投資を検討していることが明らかに した。 04.1 ロシア政府が生産物分与協定対象鉱区 から外し、入札が無効となった |
93 開発権を入札、モービル (現エクソンモービル)とテキサコが落札 04.1 ロシア政府が生産物分与協定対象鉱区 から外し、入札が無効となった |
03 ロスネフチが地質調査の権利 を取得 05.7 中国のシノペックと探鉱事業 のための合弁企業を設立 地震探査調査を開始 |
Venin鉱区の一部権益をシノペックが取得した。
サハリン4プロジェクト | ||
鉱 区 | アストラハン | シュミット |
事業主体 | ・BPアムコ社(英、49%) ・サハリンモルネフテガス・シェルフ社 (ロシア、25.5%) ・ロスネフチ・アストラ社(ロシア、25.5%) |
未定 (エクソンモービル社が探鉱・開発権取得申請を 行ったがロシア政府が却下) |
推定可採埋蔵量 | ①石油 約4,500万トン ②天然ガス 約900億立方メートル |
①石油 約6,700万トン ②天然ガス 約1,610億立方メートル |
開発の現状 | 03.12 ロスネフチが地質調査の権利を取得 04.9 地震探査調査を開始 |
未着手 |
サハリン5プロジェクト | サハリン6プロジェクト | ||
鉱 区 | カイガンスキー・ヴァシュカンスキー | 東シュミット | ポグラニーチヌイ |
事業主体 | エルヴァリ・ネフテガス 〈出資企業〉 ・ロスネフチ(露、51%) ・BP(英、49%) |
・BPアムコ社(英、49%) ・ロスネフチ・アストラ社(ロシア、51%) |
・ペトロサフ社(ロシア) ・ロスネフチ(ロシア)→撤退 |
推定可採埋蔵量 | ①石油 約11.72億トン | ①石油 約4.11億トン ②天然ガス 約2,550億立方メートル |
①石油 約3億トン |
開発の現状 | 02.6 地質調査を開始 04.7 BPとロスネフチが共同開発 協定に調印(BP50億ドル 負担)、試掘・探査作業を 開始 |
02.6 地震探査調査を開始(カイガンスキー ヴァシュカンスキー鉱区のみ) 03.6 7月に地質調査・環境影響調査作 業を開始するとの報道あり 03.12 ロスネフチが地質調査のライセンスを取得 04 地震探査調査開始 |
01.1 生産物分与方式によらない商業開発方式 でのライセンスを天然資源省より取得 01.9 探査作業に着手(ポグラニーチヌイ鉱区のみ) 02.9 地質調査(ルィムニスコエ鉱区、ケロシンノ エ鉱区)を実施 03.12 ロスネフチ、事業から撤退 |
資料 北海道庁ホームページ
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/skk/russia/russia/r-spro/project/outline/index.htm
(注 2006/8/25 サハリン3-6の内容を更新)
ベトナム ランドン油田
日本ベトナム石油が1994年試掘1号井でランドン油田を発見した。
日本ベトナム石油は、新日本石油開発が53.13%、新日石資源投資が43.94%、三菱商事が2.93%出資している。
アラブ首長国連邦 ムバラス油田
アブダビ市の西方約60kmに位置する海上油田で、コスモ石油の子会社であるアブダビ石油が1969年に発見、1973年に生産を開始した。
ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラン油田の3油田があり、混合して「ムバラスブレンド」として出荷している。
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