本年6月1日、Basellは、タイの同社のPP子会社HMCについて、国有石油会社PTTが40%の株主になると発表した。PTTは昨年末にオレフィンメーカーのNPCとTOCを合併させてPTTケミカルを設立、同社の子会社としている。
他方、1997年に経営が破綻しながら、その後も法廷闘争を続けトップに居座っていたTPIの創業者Prachai Leopairatanaが5月初めにようやく会社から追放された。現在の同社にはPTTが31.5%出資しており、TPIとPTTケミカルを合併させるという案が出て、これにPrachai が反発していたが、これが実現する可能性もある。
PTTによる動きの結果、タイの石油化学業界はPTTとサイアムセメントグループの二大勢力に分けられそうだ。
現状をまとめた。能力は本年2月現在のもの(単位:千トン)
会社の色分けは次の通り。
PTTグループ |
サイアムセメントグループ |
TPIグループ |
エチレン
PTT Chemical | 1,146 |
ROC (Rayong Olefins Co.) | 800 |
TPI (Thai Petrochemical Industry) | 360 |
合計 | 2,306 |
2005年12月、タイのオレフィンメーカー、National Petrochemical Corp. (NPC) とThai Olefins (TOC)が合併し、PTTケミカルが誕生した。
NPCには国有石油ガス会社のPTTが38%、サイアムセメントが35%を出資し、TOCにはPTTが49%、サイアムが7%出資していた。
合併はPTTの方針によるもので、PTTが株式の50.03%を保有し、同社の連結子会社となった。
PTT Chemical の能力内訳は旧NPCが461千トン、TOCが685千トン。同社ではTOCの第1系列385千トンを2007年に515千トンに、第2系列300千トンを2008年に400千トンに増強する。
なお、2004年10月に、PTTは当時のNPCと50/50のJV・PTT Polyethylene (PTTPE) を設立した。当初の案はRayonにエチレン410千トン、LDPE 300千トンを建設するものであった。
PTTPEはPTTとPTT Chemical のJVとなり、エチレン計画も2009-10年完成で1,000千トンとなっている。
Rayong Olefins Co. (ROC) はサイアムセメント(石化関係の持株会社はCementhai Chemicals Co., Ltd)の子会社。
サイアムセメントはNPCに35%出資していたため、PTTケミカルの株主でもある。
サイアムセメントは石油化学関係で以下の子会社、JVをもつ。
子会社 | ||
Rayong Olefins Co., Ltd. | ||
Thai Polyethylene Co., Ltd. | ||
Thai Polypropylene Co., Ltd. | ||
ダウとのJV | ||
Siam Polyethylene Co., Ltd. | ||
Siam Polystyrene Co., Ltd. | ||
Siam Styrene Monomer Co., Ltd. | ||
Siam Synthetic Latex Co., Ltd. | ||
Pacific Plastics (Thailand) Ltd. | ||
三井化学とのJV | ||
Siam Mitsui PTA Co., Ltd. | ||
Grand Siam Composites Co., Ltd | ||
Thai PET Resin Co., Ltd. | ||
その他JV | ||
Thai MMA Co., Ltd. (三菱レイヨン) | ||
Thai MFC Co., Ltd. (日本カーバイド) | ||
海外JV | ||
PT. Siam Maspion Polymers (Indonesia) | ||
関係会社 | ||
Thai Petrochemical Industry (TPC) |
Thai Petrochemical Industry (TPI) はPrachai Leopairatana の経営であったが、1997年に石油化学事業への巨額投資や事業多角化のための借入金が経営を圧迫し、運転資金もショートしてが経営危機に陥った。
その後、いろいろの再建計画が立てられたが、Prachai が居座りを続け、迷走した。
2005年にはタイ証券取引所が、政府主導の再建案に抵抗を続ける同社創業者のPrachai を告発し、管財人に対しPrachai 解任を指示した。
本年5月になり、同社取締役会はようやくPrachai を解任した。
現在の株主はPTT が31.5%、Government Savings Bank 10%、Vayupak Fund 10%、Government Pension Fund 8.6%で、国の関連組織が50%以上を所有している。
TPIの子会社、関係会社は次の通り。
Thai Caprolactam | 宇部興産 53.63%、TPI Polene 26.50%、 丸紅 12.20%、BangKok Bank 2.10% |
Thai ABS | |
TPI Sumika ABS | 日本A&L 35%、Thai ABS 60%、 タイ住友商事 5% |
TPI Polyol |
なお、宇部興産の以下のJVも当初はTPIが参加していた。
ナイロンJV UBE Nylon (Thailand) Ltd.
ブタジェンゴムJV Thai Synthetic Rubbers Co.,Ltd.
ポリエチレン
LDPE/ EVA |
LLDPE | HDPE/ LLDPE |
HDPE | |
TPE (Thai Polyethylene) | 100 | 120 | 580 | |
TPI (Thai Petrochemical Industry) | 158 | 152 | ||
Siam Polyethylene | 300 | |||
BPE (Bangkok Polyethylene) | 225 | |||
PTT Chemical (旧NPC) | 250 | |||
合計 | 258 | 300 | 120 | 1,207 |
TPE (Thai Polyethylene)はサイアムセメント子会社。
Siam Polyethylene はサイアムセメントとダウのJV
BPE は元はバンコク銀行と三井物産の合弁であったが、2000年にNPCが買収を試みたが失敗、2004年にPTTとTOCが50/50で買収した。
PTTは前記の通り、NPCと50/50のJV・PTT Polyethylene (PTTPE) を設立、東南アジアで初めてメタロセン触媒を使い、400千トンLDPEを建設する。
ポリプロピレン
TPI (Thai Petrochemical Industry) | 475 |
HMC Polymers | 455 |
TPP (Thai Polypropylene) | 320 |
合計 | 1,250 |
TPP (Thai Polypropylene)はサイアムセメント子会社。
HMC Polymers は Basell Polyolefins と Bangkok Bank、Hua Kee Groupなどのタイ企業とのJVとして設立された。
Basellは本年6月1日に、HMCがプロパン脱水素とSpherizone法での300千トンの新プラントを建設するとともに、PTTが増資引受と既存株購入により40%の株主になると発表した。Basellは現在42%を所有しているとみられているが、今後も従来通り大株主で残るとしている。PTTも2日に、取締役会が250百万ドルの投資を承認したと発表した。
なお原料のプロピレンは上記のエチレンメーカーに加え、Star Petroleum Refining (Chevron Texaco /PTT) と Rayong Refinery (Shell/PTT) のJVのAlliance Refining が生産している。(能力132千トン、タイの全国能力は1,236千トン)
スチレン
SSMC (Siam Styrene Monomer) | 320 |
TPI (Thai Petrochemical Industry) | 200 |
合計 | 520 |
SSMC (Siam Styrene Monomer) はサイアムセメントとダウのJV
PS
Siam Polystyrene | 150 |
Eternal Plastics | 60 |
HMT Polystyrene | 90 |
Srithepthai Plaschem | 50 |
Thai ABS | 100 |
合計 | 450 |
Siam PolystyreneはサイアムセメントとダウのJV
Eternal Plastics は 三井化学 35%、三井物産 25%、Eternal 40% のJV
HMT Polystyrene は三菱化学 100% (当初はTOAとのJV)
Thai ABS はTPI子会社
VCM
TPC (Thai Plastic & Chemicals) | 440 |
Vinythai | 200 |
合計 | 640 |
PVC
TPC (Thai Plastic & Chemicals) | 480 |
TPC Paste Resin | 35 |
Vinythai | 210 |
Apex Petrochemical | 100 |
合計 | 825 |
Thai Plastic & Chemicals (TPC)は当初、地元のCEグループと旭硝子出資のTHASCO Chemical(現在は旭硝子99.85%)、三井物産/三井東圧の3社JVとして設立された。
その後上場、THASCO、三井グループが持株を売却、現在は サイアムセメントが43.12%、CPB Equity が20.95%を所有している。
VinythaiはSolvay 46.4%、現地地資本 Charoen Pokhand Group 25.9%ほかのJV。
Apex Petrochemical は塩ビシートメーカーのApex が川上進出したもので、当初は伊藤忠、チッソ、小原化工の日本側3社が参加していた。創業以来、経営的に行き詰り、日本側は出資引き上げ交渉を行ってきたが、タイ現地資本に新たな出資者が登場、2002年9月に日本側の資本撤収が完了した。
なお、TPCと関係会社の能力は以下の通り。
PVC | PVC-Cpd | VCM | EDC | Soda | 安定剤 | |||
TPC | Samut Prakan | 140 | 55 | |||||
Rayong | 340 | 440 | 115 | * 26 | *Dry metric ton | |||
TPC Paste Resin | 35 | TPC 100(元Oxy とのJV) | ||||||
TPC Vina Plastic | Vietnam | 100 | TPC 70/Vinaplast 15/Vinachem 15 | |||||
Siam Maspion | Indonesia | 120 | TPC 40/SiamCement 60 | |||||
Viet Thai Plaschem | Vietnam | 10 | TPC 72.49/Vinaplast 17.51 | |||||
Riken (Thailand) | 41 | TPC 35/Riken Vinyl 40/Mitsiam 16/Mitsui 9 | ||||||
SSC | 15 | TPC 60/Mitsuzawa 30/Mitsiam 5/Mitsui 5 |
Siam Maspionは当初、インドネシアのMaspion が50%、サイアムセメントとTPCの海外投資法人サイアムTPCが50%のJVとして設立されたが、2005年にMaspionが撤退し、現在はサイアムセメント60%、TPC40%となっている。
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