事業買収で急成長した化学会社

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事業買収により設立され、その後どんどん事業買収を行って急成長した化学会社がある。Ineos である。

BPから買収したEO事業をもとに1998年に設立して以来、ICIの抜本的構造改革に乗ってその諸事業を買収、その他 BPDegussaBASF、UCB等の事業を次々に買収し、昨年末にはBPの石油化学子会社Innoveneを買収した。この結果、創立8年後の現在では世界の14ヶ国に68の工場を持ち、従業員は15,600人、30百万トン以上の石化製品を販売し、売上高は年ベースで330ドルユーロに達する。

同社の創業者で会長を務めるのが億万長者のJim Ratcliffe(現在53歳)である。最初はエッソのケミカルエンジニアであったが、1995年に事業家と組んでBPからEO事業を買収し Inspecを設立、大きな利益を上げ、1998年に単独でこれを買取り、Ineosを設立した。
買収は借入金で行った。通常、買収には自己資本が20%程度は必要だが、彼はIneosを担保にした。事業買収でIneosを拡大し、更に金を借りるという形で、他の事業を買収していった。

1999年にCharterhouse Development Capital と組んでICIのアクリル事業を買収しINEOS Acrylics とした。(Ineos は22%出資で、後にLuciteと改称)
2001年にICIからシリカ、塩素、代替フロン等の事業を買収、ICIとEniChemの塩ビJVのEVCの過半も買収した。(2005年にEVCを100%買収)
そのほか、多くの事業を買収、2005年末にBPから同社の石油化学子会社Innoveneを買収した。Innovene買収に際しては社内にも秘密にして会長が単独で極秘裏に交渉したといわれる。

同社の各部門の内容は以下の通り。

INEOS Oxide (EO,EG)
  (1966年にUCCがアントワープに工場建設)
(1978年BPが買収)
1995年Inspecが買収

1998年Ineos設立、Inspecを買収
2001年BPから欧州のアセテート事業、ENB事業を買収
   
INEOS Phenol (フェノール)
  2001年 Degussaから子会社 Phenolchemieを買収
2005年 Chevron Phillipsからテキサスのキュメン工場を買収
   
INEOS Styrenics (PS)
  2005年 BASFの米国・カナダのPS事業を買収
   
INEOS ChlorVinyls
  (1986 ICIとEniChemが50/50の塩ビJV EVCを設立)
2001 IneosがEVCの過半を買収、INEOS Vinylsの傘下に置く。
同年 ICIから塩素化学事業を買収、INEOS Chlorとする。
   
  2005年 EVCを100%子会社とし、組織を再編

 塩素とPVC事業をINEOS ChlorVinyls
 塩ビフィルム、コンパウンドを下記に。

INEOS Films and Compounds.
   
INEOS Silicas (シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト)
  (1997年 ICIがUnileverから4部門を買収)
2001年 ICIから上記のうちのシリカ等のCrossfield部門を買収
   
INEOS Fluor (代替フロン)
  2001年 ICIからKlea部門を買収
   
Lucite International 〈関係会社〉
  1999年 Ineos (22%)/Charterhouse Development Capital 78%)でICIのアクリル事業を買収、
     
INEOS Acrylicsを設立
2002年 Lucite International と改称
   
INEOS Melamines
  2005年 CytecがUCBを買収するに際し、UCBのメラミンを原料とするアミノレジン、添加剤事業を買収
      (元はヘキストの事業)
   
INEOS Paraform
  2003年 DecussaのMethanova部門を買収
   
INEOS Healthcare
   
INEOS Enterprises
  2004年にINEOS Chlor Enterprisesがつくられ、2005年に改称
  6つの事業
  ・Brine & Water business
  ・sulphur chemical
  2004年  Albionから事業買収
  Electrochemical Technology business
  ・Esters business
  ・(ドイツWilhelmshaven)
  塩素(PVC用)、ソーダ外販
  ・(タイ)The East Asiatic (Thailand) CompanyとのJV・IACCで可塑剤製造
   
(以下、Innovene買収で新設)
   
INEOS Refining
  Grangemouth Lavera の製油所
   
INEOS Olefins
  InnoveneGrangemouth, LaveraKoln C2, C3, C4 及び芳香族 
  次ぎの計画を含む
  ・IneosのドイツのWilhelmshavenでのエチレン80万トン計画
  ・InnoveneのサウジでのDelta Oil とのエチレン及び誘導品計画 
 (
http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7006623
  * BPの上海SECCO計画はBPに残したため、Ineosとは無関係
   
INEOS Polyolefins
  欧州、アジアのInnoveneのポリオレフィン事業
   
INEOS Olefins & Polymers, USA
  InnovenChocolate Bayou Battlegroundで製造するオレフィン、PE、PP
(スチレン事業は
INEOS Styrenicsへ)
   
INEOS Nitriles
  Innoveneの全世界のニトリル事業
   
INEOS Technologies
  Innoveneの技術ライセンス、触媒 及びIneosの塩ビ事業のライセンス、触媒ほか
   
INEOS Oligomers
  LAO(linear alpha olefin)PAOpolyalphaolefin)、PIB (ポリイソブチレン)

コメント(2)

久しぶりです。
このIneos. こんなだったんですね。ここ10年もしないうちにこれだけ大きくして、このトップの億万長者の人、すごいですねえ、決断力。裏で、スポンサ-がいると思いますが、資金繰りはどうなっているのでしょうか。この売り上げであれば、世界のトップ5くらいに入りませんか?よくわからない会社です。

記事にもありますが、買収はIneosを担保にした借入金で行っています。今のところ失敗はないので買収によりIneosの価値が上がり、より大きな借り入れができます。
バブルの時と同じで、もし大きい損失が発生すれば大変でしょう。
株式を上場していないので財務諸表は分かりませんが、「売上高330億ユーロで世界の化学会社の3位」としています。
(記事の330億ドルは間違いでした。修正します)

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