ポリプロ価格カルテル事件の現状

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随分昔にポリプロ価格カルテル事件があった。

5年前の2001年5月30日に公正取引委員会が、当時の出光石油化学、住友化学、サンアロマー、トクヤマ、日本ポリケム、グランドポリマー及びチッソの7社に対して「排除勧告」を行った。

これに対して出光石油化学、住友化学、サンアロマー、トクヤマの4社は応諾せず、審判が開始された。

応諾した3社に対しては以下の課徴金納付命令が出された。

事業者名 課徴金額
日本ポリケム  8億4517万円
三井化学
(グランドポリマーを吸収合併)
 7億6008万円
チッソ  4億3513万円
合 計 20億4038万円

まぎらわしい行為があったことも事実であるとして勧告を受諾した三井化学はこれを受諾し課徴金を納付したが、日本ポリケムとチッソはこの課徴金納付命令に対して審判手続き開始を請求した。

なお本件は三井と住友のポリオレフィン事業統合(三井住友ポリオレフィン:後、解散)と、日本ポリケムとチッソのPP事業統合(日本ポリプロ)の公取委審査で、「PP分野におけるメーカーの協調的行動」があるとして問題視され、両グループともに、業界団体会合への出席禁止や制限で独禁法遵守体制を更に徹底すると約束して承認を受けている。
また石油化学工業協会ではこれを機に、ポリプロ委員会など協会内の各種委員会を廃止した。

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本件はとっくの昔に決着していると思ったが、調べてみると、まだ延々と審判を続けていた。次回の審判予定は以下の通り。

出光興産、住友化学、サンアロマー、トクヤマ 8月4日(第28回)
日本ポリプロ、チッソ 9月4日(第18回)

 * トクヤマはPP事業を出光興産に譲渡したが、会社としては当事者で残る。
 * 日本ポリケムはチッソのPPと統合して日本ポリプロとなった。
  チッソはPPは分離統合して日本ポリプロとなったが、会社としては当事者で残る。

一体なにを延々と議論しているのであろうか。5年前の詳細を誰も覚えていないのではないだろうか。
どう決着させるのだろうか。

本年の独禁法改正で手続きが変わったが、本件は従来手続きで処理される。
4社の場合は審決が出てから課徴金の納付命令となり、場合によればこれについての審判もありうることとなる。
2社の場合は審判手続き開始により、2社に対する課徴金納付命令は失効となり、後に審判で納付命令が確定しても金利を払う必要はない。

裁判に関しては2003年7月に「裁判の迅速化に関する法律」が成立、公布・施行されている。
「第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標」とするものである。

裁判の第一審に当たる審判がこんなに時間がかかるのは問題である。

 

なお、MBSに関する審判も続いている。

2003年11月に公取委はカネカと三菱レイヨンに対して排除勧告を出したが、両社は応諾せず、2004年2月、審判に入った。

クレハも関与したとされたが、同社は2003年1月に事業をローム・アンド・ハースに譲渡していたため、勧告からは除外された。しかし、過去の違反行為に対して2005年7月に2億6849万円の課徴金納付命令が出された。
クレハはこれに応諾せず、審判に入っている。

次回のカネカと三菱レイヨンに対する審判(第11回)、クレハに対する審判(第4回)はいずれも8月4日に行われる。

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因みに独禁法改正により、手続きは下記の通り変更された。「勧告制度」はなくなる。Ftckaisei

公取委の事前の通知に対して当事者は意見申述・証拠提出機会を与えられ、その後に命令が出されることとなる。これに応諾しない場合に審判手続きが開始される。審判で実体判断をするというのではなくて,原処分が適正かどうか,維持すべきかどうかを判断する審決ということになる。
課徴金納付命令に対する審判の場合は審判手続が開始された場合であっても失効しないこととなった。(確定すれば金利の支払いが必要)

これに加えて悪質かつ重大な事案についてより積極的に刑事告発を行うために,犯則調査権限が導入された。

Ftchansokuchosa

 

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