SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画が6月26日、天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。
浜海新区は天津市の東部、渤海湾に面した区域を指す。独立した行政単位ではなく、塘沽TangGu、漢沽Hangu、大港Dagangの3つの行政区と経済技術開発区、保税区などから構成される一種の大開発区。今回の立地は天津港の南の大港区である。
同社は旧称SINOPEC天津聯合化学(SINOPEC Tianjin United Chemical Co.)で、同地区に500万トンのリファイナリーと石油化学、化学繊維のコンビナートをもっている。
既存能力は以下の通り(単位 千トン)
エチレン 200、PE 120、PP 60、EO 22、EG 48、
BTX 600、PX 250、PTA 300、Polyether Polylol 43、
Polyester 200、PET Staple Fibre 100、PET Filament 90, Film-grade Chips 80
SINOPECと天津市は大規模石化計画をたて、最初はダウケミカルと中国側(SINOPEC/天津市)の50/50 JVが検討された。
エチレン80~90万トン、L-LDPE、VCM、PVC、SM、PO、PG、エポキシ等を生産する計画であったが、ダウが経済性を理由に撤退した。
その後、天津市は外資企業の参加を求め、サウジアラムコとの合弁の報道もあった。またSABICも2004年4月にSINOPECに対して本計画に関心ありとの意向を示したが、そのときは進展はなかった
SINOPECは昨年末、政府から単独での大拡張計画の承認を受けた。
(本年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、SABICがSINOPECとの交渉を再開したという報道もある。)
既存の500万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設するもの。
完成予定は2009年で、完成すれば同施設は、1,250万トンの石油精製能力、120万トンのエチレン生産能力を一体化した生産拠点の1つとなる。人民日報はプロジェクトの着工は、大型エチレン生産基地を独自建設する能力が中国にあることを示すものとしている。
新設するエチレンは100万トンで、誘導品は以下の通り。
LDPE 300千トン
HDPE 300千トン(INEOS Innovene S Process)
PP 450千トン
EOG 420千トン(ダウ技術)
その他
SINOPECは石油関連のインフラ整備を進める。
まず天津港に377万バレルの貯蔵設備を建設中。
また、北京のSINOPEC北京燕化石油化工(旧称燕山石化)との間に230kmの石油パイプラインを建設し両工場のタンクを接続する。
更に天津港に新しく3つのバースを建設する。
いずれも2007年末に完成させる。
人民日報は以下の通り述べている。
プロジェクトの内容には、エチレン生産施設の建設、石油精製施設の改造、火力発電所の改造が含まれる。
プロジェクトは「地域化、大型化、一体化、専門化」のモデルに沿って進められる。
全体のバランスを考慮しながら、施設の配置をコンパクトにまとめ、生産プロセスの短縮、資材の内部相互供給、用地の集約的利用、投資節約、コストダウンなどを実現している。
建設用地には荒廃したアルカリ土壌の地を選び、工業用水の増加分は、海水の淡水化や水の再利用でほぼまかなう。
また、国内外の進んだクリーン生産技術や効率性の高い設備を採用し、汚染物の分類処理や廃棄物の総合利用を強化して、節約型、生態型かつ環境配慮型の生産工程を実現する。
同プロジェクトはさらに、エチレン生産設備の国産化プロジェクトの側面も持つ。
同分野での国産化水準の向上を図り、設備製造業の進歩や、川下分野である石油化学工業の発展を促すことになる。
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