ダウは8月9日、中国でエポキシ事業で5年間で2億ドルの投資をすると発表した。
まず、江蘇省張家港市の揚子江国際化学パークの既存の工場に世界最大級の10万トンの液体エポキシ樹脂(LER)プラントを建設する。2009年スタートの予定。
同地では2003年5月にスタートしたエポキシ樹脂(converted epoxy resins=CER) 41千トンのプラントがあるが、これを2008年に34千トン増設し、75千トンに拡大する。
さらに、エポキシ原料のエピクロルヒドリンの新工場15万トンを新設する。場所については近く発表する。これは2010年スタート予定で、ダウのグリセリン法新技術を採用する。バイオディーゼルの製造で副生するグリセリンを原料とするもの。
(本年1月にソルベーが菜種油からのバイオディーゼル製造での副生グリセリンを原料とするエピクロ製造を発表している。)
また、ダウは上海の張江ハイテクパークに2007年完成予定で R&Dセンター及び ITセンターを建設中だが、これに加え、ダウ・エポキシではアジアでの応用開発及び技術支援のため、グローバル応用開発センターを設立する。
(ダウ・エポキシはアジアでは他に、日本の衣浦に40千トン、韓国の亀尾(Gumi)に30千トンのプラントをもっている。)
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ダウは張家港市ではエポキシレジンのほかに、SBラテックス、PS、「スタイロフォーム」の工場をもっている。
SBラテックス工場はダウの世界19工場の最新のもので2002年に建設されたが、需要好調のため2004年5月には増設を決定している。
PSを製造するのは旭化成との50/50JVの斯泰隆石化(張家港)有限公司で、1998年に設立、2002年11月に商業生産を開始した。HIPS 12万トンを製造する。
PSを中国の需要家及び東南アジアの日系需要家に販売するのが、同じく旭化成との50/50JVのスタイロンアジアで1994年に設立された。
旭化成は8月8日、両社からの撤退を発表した。
2006-8-11 「旭化成、ダウとのPS合弁から撤退」 参照
ダウは2006年4月に、同地に新しいPOベースのグリコールエーテル工場を建設すると発表した。能力は12万トンで、2008年後半の完成を目指す。
本年8月8日、ダウとコーニングの合弁会社ダウコーニングとドイツのワッカーは、合弁会社ダウコーニング(張家港)が中国政府からシリコーン原料のシロキサンの張家港市での工場建設の承認を得たと発表した。
なお、TECがクロロシラン製造プラントのEPCマネージメント業務(設計、機器資材の調達および工事に関するマネージメント役務提供業務)を受注している。
両社は別途、同地に乾式シリカ工場を建設運営する。
ダウコーニングはシロキサン工場の建設、ワッカーは乾式シリカ工場の建設に責任を持つ。
張家港市については2006/6/9 「江蘇省・張家港市(Zhangjiagang)」 参照
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ダウは浙江省寧波市にポリエーテルポリオール工場を持っている。
1989年に中国の浙江化学工場とのJV、Zhejiang Pacific Chemicals Corporation を設立し、事業を開始し、その後、ダウ100%としている。
現在の能力は軟質及び硬質ポリオール 48千トン(他に、formukated polyol 24千トン)。
ダウは逆浸透膜やイオン交換樹脂などの水処理事業を持っているが、本年6月、浙江省湖州市の欧美環境工程有限公司(OEE)の株を買収した。
同社は限外ろ過(微孔を有する高分子膜を用い、コロイド状粒子や有機性物質を加圧ろ過する方法)、膜分離活性汚泥処理、電気再生式脱イオン装置などの技術をもち、ダウは欧美環境を世界、特にアジア地域の水処理プロジェクトの設備プロバイダーとし、世界での競争力を強化する。
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1997年6月、ダウはSINOPEC及び天津石化(SINOPEC子会社)と、天津でエチレン及び誘導品のコンプレックスを建設する覚書を締結した。
当初計画ではエチレン800~900千トン、プロピレン400~450千トン、L-LDPE 270千トン、VCM 500千トン、PVC 250千トン、SM 600千トン、PO 250千トン、PG 50千トン、エポキシ 120千トンなどであった。
しかし、2002年になって、ダウは経済環境が整わないとして、完成は2010年以降になるとの説明をし、他社の計画が進行するなかで、最終的に撤退した。
同計画はその後、SINOPEC天津分公司単独の100万トンエチレン計画として承認を受け、本年6月26日、天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。
2006/7/3 「SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工」 参照
なお、本年7月26日にSINOPECとクウェート国営石油会社(KNPC)の広州市南沙経済開発区での石油精製プロジェクトが国家発展改革委員会の承認を受けた。
承認は石油精製能力12百万トンの新設だが、100万トンのエチレンコンプレックス建設も伝えられている。
本計画の交渉にはダウも参加していたとの報道もあり、今後ダウが参加するとの噂もある。
これが実現すれば、改めて中国の石油化学に本格的に進出することとなる。
2006/8/1 「クウェートの中国進出」 参照
ダウはまた、2004年12月に、中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市で石炭からオレフィン(coal-to-olefin)を生産する計画のFSを共同で実施する契約を結んだ。大規模なオレフィンプラント建設のための経済性、市場分析、物流、技術等を検討する。
神華集団は1995年に設立された国有企業で、世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱区の開発・運営を担当しており、関連事業として鉄道、発電、貯炭設備、輸送設備を運営している。
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