先日、NovaのPS事業について述べた。
韓国のSKグループの商社SK Networks はこの度、中国の汕頭海洋集団との間で広東省汕頭市(スワトウ)の同社のPS事業子会社、汕頭海洋第一PSレジンを買収する契約を締結した。8月後半に引渡しが行われると見られている。
汕頭海洋第一PSレジンは汕頭市に自社技術のPS 3系列、合計能力15万トンのプラントを持っている。原料SMは購入し、製品PSは珠江デルタ地域で販売している。
原油価格高騰に伴い、中国のPSメーカーは原料SMの価格アップによるコスト高で利益が圧縮されているが、川下の家電メーカーや玩具メーカーの需要は極めて弱い状況にある。
汕頭海洋第一PSレジンでは原料SMをSK Networks から購入しているが、損益悪化により破産寸前にあり、SKへの原料代13-15百万ドルが未払いとなっていたと伝えられている。
このためSKでは1年ほど前から、企業買収の交渉を行ってきた。交渉が一時的に難航し、SKが原料供給を打ち切り、先月同社は原料切れで操業を停止している。
一つの問題は同社の株式を一部所有している汕頭市当局が、工場が都心にあるとして移転を求めたことで、これについては今後 8年から10年内に話し合うことで合意した。
汕頭海洋集団はほかに、広東省泉州市に子会社・汕頭大洋化学が5万トンのEPSプラント、同広州PSレジンが12万トンのPSプラントを所有している。
SKグループではSKC Chemical Business Group (当初の名称は油公ARCO)が蔚山のSKコンプレックスにPO 180千トン/SM 370千トンの併産プラントを持っている。(PS事業は直接は行っていない)
今回の買収により、SKは中国市場に初めて進出することとなる。
韓国勢ではLGが寧波でABS事業、天津でPVC事業(電解からVCMまでを新設中)を行っている。また、EPSメーカーのSH Chemicalが江蘇省常州市のShinho (Changzhou) Petrochemicals (常州塑料集団とのJV)でABSを製造している。
中国で苦境にあるのはPSだけではない。
PVC大手の上海クロルアルカリも原材料価格の高騰の中で、供給過剰による値下がりの影響を受け、営業損益ベースで大幅な赤字となっている。
上海クロルアルカリ決算 単位:百万元 | ||||||||||||||||
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1元は約15円 | ||||||||||||||||
中国の6月のPVC輸出量は64千トンと飛躍的に増加、1ー6月合計は247千トンとなった。6月の中国のPVC輸入量は94千トンで、近いうちに純輸出国になると見られている。
日本の石化業界は中国需要で好調な決算を続けてきたが、そろそろ、風向きが変わりだしたようだ。
本年第1四半期決算では、石油化学部門の営業損益が各社とも前年同期比で減少している。東ソーの基礎原料(苛性ソーダ、VCM、PVC、セメント)の営業損益は前年同期の1,077百万円に対して3,067百万円の赤字となった。
各社が努力している値上げも、輸入増につながる可能性もある。
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