(ポスト産構法後期)
能力の急増に対し、需要の方はバブル崩壊で逆に減少した。アジアの需要は増えつつあったが、欧米が好況の際には輸出を減らすためアジアの市況は高騰するが、逆に欧米が不況になると各社一斉にアジア向けに輸出を行うため、市況は急落した。
この結果、各社の業績は悪化したが、再びカルテルで逃げる道は既に封鎖されており、生き残りの策の検討を開始した。
事業撤退
ポリプロに新しく進出した東ソーは95年11月に営業権をチッソに譲渡(2002年にチッソが四日市ポリプロを吸収合併)
旭化成も94年10月、水島品の営業権を昭和電工に譲渡 (運営のため日本ポリプロを設立するが1999年3月停止)、泉北ポリマー全株を95年3月、三井東圧に譲渡して撤退した。
日本鉱業も新規参入を狙い、輸入販売を始めたが94年3月に撤退した。
宇部興産は新設した千葉の気相法LLDPEプラントを休止した。
(1994年11月に三井石油化学のメタロセン触媒技術による気相法LLDPEの商業規模での試験生産で合意)
三井、三菱の事業統合検討
1992年4月、新聞に三井東圧化学と三井石油化学が合併を目指し両社社長が詰めの協議に入っていると報じた。これは両社の社内の反対が強く「当分の間は交渉を凍結する」と発表された。
しかし、特に三井東圧の業績がその後も回復せず、結局、1997年10月、三井化学が誕生することとなる。
三菱グループの場合も、特に設備の拡大を図った三菱油化の業績が悪化したこともあり、「永遠の話題」と言われ実現が難しいとされた1994年10月に三菱グループの大合同が実現した。
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(事業統合時代)
三菱の事業統合
三菱化成と三菱油化は1994年10月に対等の立場で合併し、三菱化学となった。
当初は「赤字幅が著しいポリオレフィン事業の統合を模索した」がそれだけでは不十分となり、大統合に踏み切った。
一時は共販会社制度維持のために、ダイヤポリマーを存続させようとの考えもあったようだが、三菱化成と三菱油化だけの共販で、製造も営業も一体化するのに共販会社を残すのは意味が無く、三菱化学誕生を機に発展的解消した。
三井の事業統合
三井石油化学と三井東圧化学は1997年10月に統合し、三井化学となった。
(後記の通り、両社の属する共同生産会社、事業統合会社の整理が行われた)
ポリオレフィン事業統合
①日本ポリオレフィン とサンアロマー
1995年2月、エースポリマーに属する昭和電工と三井日石ポリマーに属する日本石油化学がポリオレフィン事業を統合することを発表した。
昭和電工と日本石油化学の事業統合は1994年8月頃から交渉を始めたといわれている。
昭和電工は旭化成との間でPSとPPの交換による提携を行ったが、それだけでは構造的な赤字を解消できないと判断、自助努力に限界を感じていた日本石油化学との統合を交渉した。
昭和電工は大分市に、日本石油化宇は川崎市に立地し、地理的に東西の相互補完関係にあるため、交錯輸送の排除等による物流費用の低減が図られるというのが一つの理由となっている。
新会社の概要 | ||
①社名 | : | 日本ポリオレフィン(JPO) |
②資本金 | 100億円 出資比率 昭和電工 65%:日本石油化学 35% | |
③設立年月日 | 1995/7/1 | |
④営業譲渡日 | 1996/10/1 | |
⑤工場 | 大分、川崎 | |
HDPE 331千トン/年 LDPE 214 LLDPE 110 PP 346 (水島の日本ポリプロを含む) 計 1,001 |
公正取引委員会はHDPEについては新会社のシェアが24.3%かつ第一位となるが、競争業者の存在と輸入圧力から問題なしとした。
しかし、PPについては日本石油化学が三井石油化学、三井東圧と浮島ポリプロで、また三井東圧と泉北ポリマーで、それぞれ共同生産しているのを問題とした。
このため、日本石油化学は三井東圧との間で浮島ポリプロ、泉北ポリマーのそれぞれの持分を交換し、三井東圧との関係を切った。
(日石化学持分は浮島 65、泉北 0 )
同社は96年7月にMontell International と折半出資のJV Montell-JPOを設立して自動車向け分野でのPP及びコンパウンド等の販売を行った。
①社名 | : | Montell-JPO | ||||
②設立 | 1996/7/1 | |||||
③営業開始 | 同上 | |||||
④資本金 | 8億円 JPO 50%、Montell International 50% | |||||
⑤事業内容 : |
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1999年5月にはMontell-JPOを改組し、Montell 50%、昭和電工・日本石油化学50%出資のモンテルエスディーケーサンライズと改称して、日本ポリオレフィンからPP事業の譲渡を受けた。
日本ポリオレフィンはこれによりポリエチレン専業となった。
PP分離に先立ち、日本ポリオレフィンでは99年1月に不採算の大分のLLDPEプラントを昭和電工100%出資の大分エルエルに移管(のち設備休止)、3月には昭和電工が旭化成から譲渡を受けた水島のPP設備(旭化成とのJV 日本ポリプロとして運営)を停止している。
①社 名 | : | モンテルエスディーケーサンライズ株式会社(略称MSS) | ||||||||||||||||||
②資本金 | 63億円 | |||||||||||||||||||
③出資比率 |
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④事業内容 | ポリプロピレン、キャタロイ・プロセス製品およびHMS製品の生産、販売ならびに研究開発 | |||||||||||||||||||
⑤年産能力 |
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*SDKサンライズは昭和電工65%、日本石油化学35%
なお、モンテル社は2000年10月、バセル社として新たに発足、これに伴い、MSSは2001年1月、サンアロマー(SunAllomer Ltd.)に社名を変更した。
②グランドポリマー
1995年7月、三井石油化学(三井日石ポリマー)と宇部興産(ユニオンポリマー)が50/50の出資でグランドポリマーを設立、両社のPP事業を統合して10月から営業を開始した。その後、三井化学の誕生により、97年7月に三井東圧のPP事業を統合した。
宇部興産は三井主導の大阪石油化学のメンバーであり、共販会社設立検討の当初は三井グループに参加すると見られていた。三井石油化学と宇部興産は94年11月に、休止していた宇部興産千葉工場のLLDPEプラントを三井石化のメタロセン触媒技術による気相法LLDPEの商業規模での試験生産に使用し、三井石化は製品の一部を引き取ることで合意している。
この信頼関係をベースに三井石油化学の触媒およびフィルム,宇部興産のコンパウンドおよび自動車分野での強みがそれぞれ補完関係にあったことで実現した。
①社名 | : | グランドポリマー | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
②設立 | 1995/7/1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
③営業開始 | 1995/10/1 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
④資本金 |
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⑤能力 |
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*宇部興産は住友化学、トクヤマとPP製造の合弁会社、千葉ポリプロ(住化・千葉内)と宇部ポリプロ(宇部降参・宇部内)を設立しているが、宇部のグランドポリマー設立に伴い、宇部と住化はそれぞれの両JVへの持分を交換し、千葉ポリプロを住化/トクヤマの、宇部ポリプロを宇部/トクヤマのJVとした。
* 当初は設備は親会社資産で貸与形式。1999/4に両親会社から設備譲渡を受け、さらに2000/3には開発部門を千葉県の袖ケ浦の開発研究所に統合
③日本ポリケム
1996年5月、三菱化学と東燃化学(エースポリマー)はポリオレフィン事業を統合し、同年9月から日本ポリケムとして事業を行うことを発表した。
エクソンモービルの子会社であった東燃化学は、当時のユニオンカーバイドとの50/50JVの日本ユニカーを持っており、電線被覆グレードを除くポリエチレン事業についても日本ポリケムに包含する方向で交渉したが、実現に至らなかった。
①会社名 | : | 日本ポリケム |
② 設立 | 1996/5/24 | |
③事業開始 | 1996/9/1 | |
④資本金 | 事業開始時 20億円 1998/11 200億円 | |
⑤出資比率 | 事業開始時 三菱化学 50%、東燃化学 50% 1998/11 三菱化学 65%、東燃化学 35% | |
⑥事業内容 | 両社のPE樹脂、PP樹脂等の合成樹脂およびこれらを主原料とするコンパウンドの製造および販売 (新会社が販売する合成樹脂の製造は、当面両親会社において実施する。) |
④京葉ポリエチレン
1997年8月、丸善石油化学の丸善ポリマー(旧称日産丸善ポリエチレン)とチッソ石油化学(いずれもユニオンポリマー)が京葉ポリエチレンを設立し、同年10月から両社の高密度ポリエチレンの販売を統合した。製造は引き続き各社が行うもの。
①社名 | : | 京葉ポリエチレン |
②設立 | 1997/8/7 | |
③営業開始 | 1997/10 | |
④資本金 | 4億8,000万円 | |
⑤株主 | 丸善ポリマー、チッソ石油化学(折半出資) | |
⑥事業目的 | 高密度ポリエチレンの販売(国内および輸出) |
丸善ポリマー
1981/3 「日産丸善ポリエチレン」設立(日産化学 51%、丸善石化 49%)
日産化学、日産ポリエチレンのHDPE事業継承
1989 丸善石化 70%に。
1990 丸善石化 100%
1991 社名変更 「丸善ポリマー」
⑤日本エボリュー
事業統合ではないが、1996年11月に三井石油化学と住友化学が共同でメタロセン触媒による気相法LLDPE生産の合弁会社・日本エボリュー設立の発表を行った。
住友化学は千葉ポリエチレンでL-LDPEを生産しているが、メタロセン触媒によるL-LDPEは、低温での熱融着性、強度等に優れ、新規用途が見込まれるほか、樹脂加工段階での生産性が大幅に改善されることから、国内外での需要拡大が期待されており、三井石化の計画に参加した。
①会社名 | : | 日本エボリュー | ||||||||||||
②設立 | 1996/11/20 | |||||||||||||
③資本金 | 4 億円 | |||||||||||||
④出資比率 | 三井石化 75%、住友化学 25% | |||||||||||||
⑤事業目的 | メタロセン触媒によるLLDPE の製造 | |||||||||||||
⑥製造設備 |
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⑦製品の引取 | 出資比率 |
なお、2006年春に能力増強が決定(10月に24万トンにアップ)。増産される年4万トンはプライムポリマーが全て引き取り、引取り比率はプライムポリマー19万トン、住友化学5万トンとなる。
ポリオレフィン共販会社の解散
1994年10月の三菱化学誕生を前に9月にダイヤポリマーが発展的解消した。
1995年の日本ポリオレフィン、グランドポリマーの設立はエースポリマー、三井日石ポリマー、ユニオンポリマーに属する各社が他の共販メンバーと事業を統合するもので、結果的には3共販がすべて連携することとなるため、エースは95年6月、残りは9月に解散した。
(続く)
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