ナフサ価格 急落 (2006/9)

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ナフサや原油の価格が急落している。Naphthaoilprice
ナフサ価格(東京オープン スポット)は本年7月14日に691ドル/tの最高値から、8月は平均637ドルに下がり、9月上旬は600ドル近辺であったが、中旬には550ドル近辺に下がり、20日は532ドル、21日は527ドルと急落した。22日は528ドルで1日からの平均は562ドル。

ドバイ原油(東京市場)も8月8日の72.30ドル/バレルの最高値から、9月21日には56.30ドルに下がった。

ニューヨーク原油(WTI)価格も過去最高(一時)は7月13日の78.40ドル/バレルであったが、9月21日は一時、59.80ドルと60ドルを割り、3月21日(59.60ドル)以来約半年ぶりの安値を付けた。

そもそも、現在の原油高には3つの理由がある。

第一は需要面で、米国景気の好調のほか、特に中国の需要増が影響する。

第二は供給面で、OPECは10月以降も現行生産枠(日量2,800万バレル)を据え置くが、余剰生産能力が200万バレル程度しかない。
そういう状況のなかで、イラン問題や産油国での紛争、アラスカのプルドー湾油田の操業停止など、供給面の不安がある。
原油生産量が頭打ちになるという「ピークオイル説」も根強い。「安く手に入る従来型油田に限れば、10~20年もせずにピークが来る」と言われている。

最後は投機によるもので、実はこれが最も大きな問題である。

OPECは2005年7月から生産枠を実際の生産に合わせて2,800万バレルとしたが、それ以降は「供給は十分」として生産枠の引き下げを主張してきた。しかし、価格が上昇を続けるため、生産枠を維持した。
価格上昇の主な理由は投機資金の流入で、米国の年金資金等が大量に入り込んでいる。

 

ここにきて、状況に変化が見え始めた。Ushousingstartmonthly

9月20日に米エネルギー省が発表した週間在庫統計で、ガソリンやヒーティングオイルの在庫が前週から増加したことなどを受け、需給緩和観測が出てきた。
昨年まで上昇を続けてきた米国の住宅建設は、金利上昇を背景に1月から減少に転じ、8月の着工件数が2003年4月以来の低水準となったように、米経済の減速が明らかになった。

供給面ではOPEC議長が、加盟各国が現在は日量200万バレル前後の余剰能力を400万バレル程度に設備増強に努める方針であることを明らかにした。
ニューヨークで開催中の国連総会を機に、核開発を巡るイランとの対話が進んでいると見られていることも、売り材料となった。
欧米石油メジャーやブラジルなどはバイオ燃料開発に動いている。

原油に投じられていた投資マネーが天然ガス価格の急落でヘッジファンドが破綻したことや米国景気の減速を材料に、リスクの高い原油先物から安全な米国債に逃避する動きが加速し始めた。

米ヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズ(Amaranth Advisors)が50億ドルの損失を計上して事実上解体を余儀なくされ、マザーロック(MotherRock) も解散に追い込まれた。
天然ガスは原油などに比べ流動性に乏しいが、両社は借入金を増やして購入額を膨らませていた。
NYMEXの天然ガス先物は昨年12月に百万BTU(英熱量単位)当たり15ドルと最高値を付けたが、最近になって下げ足を加速、先週は一時4ドル台に下がった。この結果、先物投資で大量の買い持ちのある両社は相場急落の局面で大きな損失を出した。

この報道を受け、原油を含む商品先物全般で売り優勢になった。

これまでの原油高を支えていた投機マネーが原油から逃げ出せば、原油価格やナフサ価格は更に下がる可能性がある。

 

石油化学業界にとって、この急落は好ましいものではない。

グラフの東京オープンスペックのナフサ価格は2ヵ月後入着品の価格である。7月、8月の高値のナフサは9月、10月に入ってくる。これらの価格上昇分はまだ転嫁できていないが、交渉時のナフサ先物価格が大きく下がっておれば、この分の転嫁についての需要家の説得は困難である。需要家は逆に価格引下げを強く要求するだろう。

因みに、ナフサ100$/トンの下落は Kl 当たりで8,000円程度の値下がりとなり、PE、PPで16円/kg、塩ビで8円/kgに相当する。

同様の理由で中国を中心としたアジア市況も下がるのは必至であり、輸出価格の低下につながると同時に、国内需要家の値上げ拒否、値下げ要請の理由にもなる。輸入圧力が強まることも国内の需要家に有利に働く。

中国バブル発生以前には原料価格アップ分の転嫁は難しかった。中国バブルの中での原油バブルがアジア市況を引き上げ、これが国内価格引き上げに役立った。中国バブルがはじけようとする中での原油バブルの破裂は、中国バブルに対応した各国の能力増のなかで、以前よりも、石化メーカーにより不利に働くであろう。

付記

 2006/7/17  「原油、ナフサ価格 急上昇
 2006/7/29  2Qの国産ナフサ基準価格 49,800円/klに」 (「国産ナフサ基準価格」の説明)
 2006/11/1  速報 3Q国産ナフサ価格 54,100円/kl に
 2007/1/31  速報 2006/4Q 国産ナフサ価格 決定」 
 2007/3/17  「OPEC総会、生産量維持を決定 
 2007/4/18  「ナフサ価格、高騰続く」 

なお、http://kaznak.web.infoseek.co.jp/new.htm で原則として毎日、グラフを更新しています。

コメント(1)

原油バブル崩壊でしょうか。中国バブルもはじけようとしていますね。4Qのナフサ価格動向は、各社の予想から大幅なズレが発生するかも知れません。最近の動向を、見事にまとめられていて、いや-あ、勉強になります。確かに天然ガスは、原油に比べて、下がり続けています。今後は、原油も減産の方向に行くのか??? まだ先の話か。 これからは、秋のマラソンシ-ズンです。ヘッドコ-チ

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