信越化学、300mmウエハー生産能力の大幅増強を決定

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信越化学は28日、全世界で需要が急伸している300mmシリコンウエハーを供給する世界最大のメーカーとして、生産能力の大幅増強を発表した。2007年秋を目処にグループの生産能力を月産100万枚まで増強する計画で、急増する全世界の顧客の需要に即応する体制を築き、300mmシリコンウエハーのトップメーカーとしての責務を果たすとしている。

信越グループは、ICの基板になるシリコンウェハーの世界のリーディングカンパニーとして大口径化、ハイフラットネスの最先端を走り、次世代の300mmウェハーやSOIウェハーの製品化にもいち早く成功した。日本、アジア、アメリカ、ヨーロッパにシリコンウェハー生産拠点を持ち、その総生産量は世界最大。

地域 会社名
日本 信越半導体
北米 S.E.H.アメリカ
アジア 台湾 台湾信越半導体
マレーシア S.E.H.マレーシア
S.E.H. (Shah Alam)
英国 S.E.H.ヨーロッパ

同社は当初、2006年秋までに月産50万枚にするとしていたが、需要の伸びに対応して前倒しを行い、現在能力を月産70万枚に引き上げている。
今回1,200億円を投じて2007年秋に月産100万枚体制にするもの。これを含めた300mm事業への総投資額は4,000億円になる。Siliconwaferprocess

増設は災害リスクを勘案して、信越半導体㈱白河工場、SEHアメリカ、グループ会社の三益半導体工業(高崎市)に加え、新たに長野電子工業(長野県千曲市)で投資を行い、拠点を通じ需要家への安定供給を図る。

シリコンウエハーは高純度のシリコンの種結晶を円柱状に成長させたインゴットを薄くスライスして製造するが、原料の単結晶(インゴット)も、既存の白河工場とSEHアメリカの増強に加え、信越半導体武生工場(福井県越前市)でも生産する。

シリコンウェハーの2005年の世界シェアは添付の通りで、信越が32%、SUMCOが222%だが、SUMCOはコマツ電子の買収で合意しており、信越とSUMCOは拮抗することとなる。信越は今回の増設でSUMCOを突き放す。Siliconwafershare

SUMCOは住友金属工業のシチックス事業本部(旧住友シチックス、当初は大阪チタニウム)と三菱マテリアルシリコン(旧チッソ電子化学+日本電子金属)が2002年に事業統合したもので、当初の社名は三菱住友シリコン。2005年8月に現社名に改称した。

両社は事業統合に先立ち、1999年に共同出資会社のシリコン・ユナイテッド・マニュファクチュアリング(SUMCO)を設立し,300mmウエハーの技術開発及び試作品用生産設備の管理・運営を共同で行った。現在の社名はこれを踏襲したもの。

シリコンウェハーの製造では米国に SUMCO Phoenix、SUMCO Southwest、フランスにSUMCO France、インドネシアに SUMCO Indonesia をもっている。

 

同社は2006年6月に、小松製作所の子会社(61.9%保有)のコマツ電子金属の株式総数の51%取得を目指すTOB実施を決めた。小松製作所は全所有株式でTOBに応募することを決めている。

コマツ電子金属は1960年の設立で、シリコンウェーハの製造・販売を業とし、長崎、宮崎、台湾に製造拠点を持っている。
台湾子会社は台湾小松電子材料で、コマツ電子金属が 51%、台湾プラスチックグループ が49%を出資し、麦寮の台塑工業園区に230億円を投じて月産10万枚の300mmシリコンウェハー工場を建設中。

SUMCOとコマツ電子金属はいずれもシリコンウェーハ専業メーカーで、大口径の300mmから小口径特殊品、高精度品までの幅広い事業分野をカバーしており、買収により、「相互に類似的、補完的な要素技術を持つ2社が、今後統合された事業戦略を共有化していくことにより、新しいSUMCOグループとして顧客の満足度を向上させていくことを目指す」としている。

Siltronic AGはWacker Chemie の子会社でMunich に本拠を置くシリコンウェーハ事業会社。ヨーロッパ、USA、東南アジア、日本の4大市場に工場を保有する。
工場はドイツのブルグハウゼンとフライベルグの2地区、米国ポートランド(オレゴン州)、シンガポール、光(山口県)、マレーシアにある。
光工場はワッカー・エヌエスシーイーの工場で、2000年に新日鐵100%子会社の旧ニッテツ電子にWacker が55%出資した。
2003年にWacker が顧客ニーズへの迅速な対応力を強化するために100%子会社とした。山口県光市とマレーシアのケタ州クリムに工場をもっている。

同社は昨年、ドイツの2工場で300mmウェーハの増設を決めた。136百万ユーロを投じ、ブルグハウゼン工場の能力を月産75千枚から135千枚に、フライベルグ工場能力を15万枚から20万枚に増やす。

また同社は本年7月、韓国の三星電子とのJV、Siltronic Samsung Wafer Pte. Ltd.をシンガポールに設立し、300mmウェーハを製造すると発表した。同社の工場に隣接し、10億米ドルを投じて建設、2008年央に完成、2010年には月産30万枚の製造を予定している。

現在、Wacker が Siltronic を米国の投資会社 Francisco Partners に売却する交渉を行っているとの噂が流れている。.

MEMC
1959年にMonsanto Chemical が米国でシリコン製造のためMonsanto Electronic Materials Company を設立した。
欧州では
1961年にDynamit Nobel Silicon がイタリアにシリコン工場を建設している。

1989年にドイツのVEBAの子会社 Huls がMonsanto から同社を買収、別途1987年に買収したDynamit Nobel Silicon と合併させ、MEMC Electronic Materials, Inc とした。MEMCのブランドが有名なため、この名前を残した。

1995年にNew York で上場、その後もHuls は72%の株を持っていたが、Huls の親会社 VEBA VIAG と統合して E. On になり、E. On は同社の売却を決め、2001年にTexas Pacific Groupに全持株を売却した。Texas Pacific はその後、大部分を売却し、25%を保有している。

MEMCは1991年に韓国で三星電子、Pohang Iron & Steel POSCO)とのJVのPosco Huls を設立した。 2000年に MEMC POSCO の持株を買収して80%の株主となり、社名をMEMC Korea Company.と改称した。

また、1994年には台湾で China Steel その他とのJV、Taisil Electronic Materials, Inc.を設立した。2005年には台湾初の300mm ウェーハをスタートさせた。(現在MEMC 100%)

1995年にはTexas Instruments とのJV、MEMC Southwest, Inc.を設立し、Texas Instruments の既存プラントを活用している。(現在MEMC 100%)

製造立地:
 St. Peters   St. Peters, MO  世界本部
 Southwest   Sherman, TX  1997年稼動、当初Texas Instruments とのJV
 Pasadena   Pasadena, TX
 MEMC Japan   宇都宮 (MEMC100%)
 Taisil   台湾・新竹、当初China Steel その他とのJV
 マレーシア   Kuala Lumpur
 MEMC Korea   Chonan City (80% MEMC, 20% Samsung Electronics 
 イタリア   Novara, Italy
    Merano (Bolzano) Italy

 

 

参考 信越化学 連結営業損益

電子材料部門は、半導体シリコン、電子産業用希土類磁石、フォトレジスト製品・電子産業用有機材料を含む。
2006年3月期決算で、電子材料の売上高3,614億円のうち、半導体シリコンは3,057億円
営業損益653億円のうち、半導体シリコンは529億円を占める。

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