欧州委員会は2006年6月28日、カルテル・支配的地位濫用事件等の競争法違反行為に対して課される制裁金算定方法についての新ガイドラインを発表した。
この新制裁金ガイドラインは、1998年に採択された現行ガイドラインに代わるもので、間もなくEU官報に掲載され、その時点から正式に効力を有する。
EU競争法では個人に刑事罰を加えることはできないため、より効果的なカルテル対策を執行するためには、充分抑止的効果のある高額な制裁金制度を設ける必要があるというのが欧州委員会の考え。
現行ガイドラインと同様、違法の程度、期間等を考慮した基本額を出し、さらにこれに増額・減額事由を加えた最終的な制裁金額を割り出す。
課徴金の算定方法は、原則以下の通り。違反年数が長い場合、再犯の場合の課徴金は大きく増加する。
1.違反行為の行われた最後の年に、欧州経済地域の関連市場から違法に得た年間売上高30%までの範囲を基本額とする。
地理的範囲、カルテルの種類(市場分割、生産制限など)等も算定の要素となる。
2.水平的価格設定契約、市場分割、生産量制限のような悪質なカルテルについては、基本額に15%~25%を追加する。
3.上記に違反の年数を乗じる。(5年なら5倍となる)
従来は1年10%増しのため、5年なら50%増し。
4.これに、制裁金引き上げ事由・減額事由が「考慮されるかもしれない(may take into account)」
従来は「制裁金引き上げ事由・減額事由を考慮して最終的な額が出される」。
増額理由
1)再犯
過去に欧州委又はEU加盟国により同じ/同様の事案で摘発された場合は100%までを加算する。
(従来は欧州委での再犯のみだが、EU加盟国での過去の摘発も再犯とみなされる。
また、従来は50%加算だが、今回は100%加算)
2)調査への協力拒否
3)違反行為の主犯
減額理由
1)欧州委の調査開始ですぐに止めた場合
2)不注意での参加
3)違反が限定的で、実際には害が少ない場合
4)減免制度以外で欧州委の調査に協力
5)政府当局や立法によって認可された行為の場合
国家によって認可されただけでは、減額が認められるだけであることを明確にした。
なお、欧州委員会は企業の前年度年間総売上高10%までの制裁金を課す権限があるとされているがこの点に変化はない。
また、制裁金減免制度は今まで通り適用される。
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日本の改正独禁法では課徴金は以下の通り。( )は改正前
基本 | 大企業 | 中小企業 |
製造業、ゼネコンなど | 10%(6%) | 4%(3%) |
卸売業 | 2%(1%) | 1%(1%) |
小売業 | 3%(2%) | 1.2%(1%) |
「再犯企業」は課徴金を5割増し
参考資料
EU発表
http://ec.europa.eu/comm/competition/antitrust/legislation/fines_en.pdf
JETRO カルテル事件等に対する制裁金算定ガイドラインの改正
http://www.jetro.be/jp/business/eurotrend/200607/0607R6.pdf#search=%22eu%E7%AB%B6%E4%BA%89%E6%B3%95%E6%94%B9%E6%AD%A3%22
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