ダウは8月31日、競争力強化のため、カナダとイタリアの合計7プラントを閉鎖すると発表した。
退職金や徐却損失などの特別損失は 550~650百万ドルで、2006年第3四半期に処理する。
これにより、年間160百万ドル程度の固定費が削減されるとみている。
閉鎖するのは以下のプラント
Sarnia (カナダ Ontario 州)
・LDPEプラント(数週間後)
・PSプラント(年末)
・Latexプラント(2008年末)
・Polyolsプラント(2008年末)
Fort Saskatchewan (カナダ Alberta 州)
・chlor-alkali プラント(10月末)
・EDCプラント(10月末)
Porto Marghera (イタリア)
・TDI プラント(8月初めに定修で停止、再稼動せず)
Sarnia工場はカナダにおけるダウの最初の工場で、1942年にカナダ政府の招致を受けSMプラントを建設、1947年にPSプラントを建設した。
その後、LDPE、Polyol、Acrylate Latex(SM、ブチルアクリレートが原料)プラントを建設した。
LDPEについては、同社のエチレン工場のある Fort Saskatchewan とSarnia を結ぶCochin Pipeline を運営するBPが、本年3月に漏れの恐れがあるとしてエチレンの輸送を停止したのが響いた。ダウは他のエチレン輸送方法を検討したが、経済的に成り立たないということで閉鎖のやむなきに至った。
同工場の能力は100千トンで、同社ではテキサス工場をフル稼働して対応する。
* Cochin Pipeline は両地区をつなぐ1900マイルのパイプラインで、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、NGLを輸送する。
1979年の建設で、当初の株主は BP、Conoco、Shell、Dow、NOVA Chemicalsであったが、現在はConocoPhillips、Kinder Morgan と BPが株主。
PSについては、LDPE停止に伴う固定費負担増、老朽化したPSプラントの設備投資コスト、PS業界の長期的な市場状況を勘案し、閉鎖を決めた。
これに伴い、残りの2プラントも閉鎖する。
Fort Saskatchewan 工場では、周辺のガス田からCo-Ed Pipelineで運ばれたNGLから、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンを生産、エタンからはエチレンを、エチレンからPEやEDCを生産している。また、サイトの地下にある岩塩を塩水で回収して電気分解し、塩素、ソーダ等を生産している。
EGについては、クウェートのPetrochemical Industries Company (PIC) とのJVのMEGlobalが製造販売をおこなっている。
今回のクロルアルカリとEDCプラントの閉鎖は、27年間経過したプラントを今後長期間維持するためには多額の投資が必要で、現在の想定収益性ではこれを認められないのが理由。
なお、ダウは2005年末までにテキサス工場の1系列 (Unit 1) のEDCの生産を停止し、VCMの生産を縮小した。
今後の設備の維持更新費が多額となるのに加え、エネルギー・原料価格の高騰に伴い、採算が合わなくなったためと同社では説明している。テキサス工場の他の1系列 (Unit 5) の電解、EDC、VCMプラントは操業を継続。
この発表(2004/11/4)の1ヵ月後の12月7日、信越化学は米国の子会社シンテック社での塩素ーEDCーVCMーPVC の塩ビ一貫工場計画を発表している。
イタリアのPorto Marghera ではTDIの生産をしている。8月初めに定期修理に入ったが、世界的な供給過剰により弱含みなため、生産を再開しないこととした。
ダウではこれ以外にも陳腐化した技術や資産を消却する。
同社は、「長期的な成長のための投資を行う反面、過去3年間で、世界中で50以上のプラントを停止し、固定費を削減してきた」とし、資産の最適化に注力するとしている。
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