ロシア最大のアルミメーカーであるRUSALが同国2位のSUALと、スイスの商社Glencore International AGのアルミニウム部門を買収することで基本合意したことが明らかになった。買収規模は約300億ドル(約3兆5千億円)になる見通し。
アルミ地金生産量は375万トンとロシア国内生産を独占、米アルコア社に次ぎ、世界第2位となる。
10月にも最終合意する見通しで、新会社の持ち株比率はRUSAL既存株主 64.5%、SUAL 21.5%、Glencore 14%で調整中。
世界のアルミ地金生産大手
社名 生産量
(万トン)1 Alcoa(米) 420 (RUSAL+SUAL) (375) 2 Alcan(加) 355 3 RUSAL(ロ) 270 4 Hydro Aluminium
(ノルウエー)180 5 BHP Billiton (英豪) 133 6 SUAL(ロ) 105
日経は「ロシア、資源企業切り札に 外交交渉で活用 国家管理を強化へ」として、ルスアル会長でオーナーでもあるデリパスカ氏は親プーチン人脈のひとりであり、「今回の買収もプーチン政権の意図が働いている」との見方が支配的だとしている。
プーチン政権が世界的な資源高を最大限に外交面で活用し始めたとし、ロシアの民主化問題やイラン核開発問題などで欧米などとの対立が浮き彫りとなるなか、資源はロシアにとって国際的な発言力を高める重要な武器となっているとしている。
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RUSALはロシア最大で世界第3位のアルミメーカー。モスクワに本社を置き、2000年に複数のアルミ精錬所や原料のボーキサイト鉱山などが統合して誕生した。
同社の製品及び能力は以下の通り。 | |||
ボーキサイト | 620万トン | ||
アルミナ | 410万トン | ||
アルミニウム&アロイ | 270万トン | ||
アルミフォイル、アルミ包材 | 10万トン | ||
アルミ缶 | 30億缶 |
アルミ製錬所は4箇所(添付地図参照)にあり、Bratskは世界最大、Krasnoyarskは世界第二位の規模を誇る。
生産量 千トン | |
Krasnoyarsk | 865 |
Bratsk | 976 |
Sayanogorsk | 508 |
Novokuznetsk | 309 |
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SUALは1996年にUral Aluminium と Irkutsk Aluminiumが統合して設立された。
同社の製品及び能力は以下の通り。 | |||
ボーキサイト | 540万トン | ||
アルミナ | 230万トン | ||
アルミニウム | 100万トン |
なお、2005年4月、RUSAL とSUALはKomi Aluminium Projectを50/50JVで実施する契約に調印している。
同計画はロシアでの最大の計画の一つで、モスクワの東北1200kmにあるKomi RepublicのSosnogorsk (添付地図参照)に、国際的に競争力のあるボーキサイト・アルミナの一貫コンプレックスをつくるもので、ロシアのアルミナ生産能力を50%増の450万トンに増やすというもの。同地から157km北西のTiman Bauxite reserves のボーキサイトを使用する。
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Glencoreは、スイスの貿易グループで、創立者のMarc Richらが74年に設立した非上場企業。
同社のビジネスは、非鉄金属、鉄鋼、石油及び石油デリバティブ、石炭等の資源関係の他、電気、農産物(砂糖、米、穀物)等で、年商は、約300億ドル程度と推定されている。地下資源関係では、鉛、亜鉛、バナジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、石油、鉄など鉱山開発にも進出している。
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世界最大のアルミニウムメーカーのAlcoaのアルミ製錬工場と能力は以下の通り。
Alcoa smelting capacity (単位 1,000t/y: 2005/12/31現在)
Location | Total Capacity |
Alcoa ownership |
Alcoa Capacity |
Updates | |
Australia | Point Henry | 185 | 100% | 185 | |
Portland | 353 | 55% | 194 | ||
Brazil | Poços de Caldas | 90 | 100% | 90 | |
São Luís (Alumar) | 375 | 54% | 201 | Expanded to 264 mtpy | |
Canada | Baie Comeau | 438 | 100% | 438 | |
Bécancour | 409 | 75% | 307 | ||
Deschambault | 254 | 100% | 254 | ||
Italy | Fusina | 44 | 100% | 44 | |
Portovesme | 149 | 100% | 149 | ||
Spain | Avilés | 88 | 100% | 88 | |
La Coruña | 84 | 100% | 84 | ||
San Ciprián | 218 | 100% | 218 | ||
United States | Evansville, IN (Warrick) | 309 | 100% | 309 | |
Frederick, MD (Eastalco) | 195 | 61% | 119 | Alcoa ownership now 100% | |
Badin, NC | 120 | 100% | 120 | ||
Massena West, NY | 130 | 100% | 130 | ||
Massena East, NY | 125 | 100% | 125 | ||
Mount Holly, SC | 224 | 50% | 113 | ||
Alcoa, TN | 215 | 100% | 215 | ||
Rockdale, TX | 267 | 100% | 267 | ||
Ferndale, WA (Intalco) | 278 | 61% | 170 | Alcoa ownership now 100% | |
Wenatchee, WA | 184 | 100% | 184 | ||
Ghana | Tema (Valco) | 200 | 10% | 20 | |
Germany | Hamburg (HAW) | 132 | 33% | 44 | Curtailed |
Norway | Lista | 94 | 50% | 47 | |
Mosjøen | 188 | 50% | 94 | ||
Total | 4,209 |
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日本のアルミニウム製錬については、2006/3/19 「日本の石化の将来予想」で、以下の通り述べている。
「電気の缶詰」と言われるアルミニウム精錬の場合、1978年に6社で「164万体制」であったのが、電力料の高騰で競争力を失い、1979年には「110万体制」、1982年に「70万体制」、1986年には「35万体制」となり、1988年には日本軽金属・蒲原の3.5万トンのみとなり、現在は同工場の1万トンが動いているだけである。
(各社はブラジル、ベネズエラ、カナダ、インドネシア、豪州、ニュージーランド等、海外での開発に参加し、製品を引き取っている)
会社別能力推移及び海外プロジェクトについては、以下に詳細がある。
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/25/aluminium.htm
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中国のアルミニウム製錬については、2006/8/25 「中国アルミ業界の拡大競争」 参照
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