日本のABS業界の変遷

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ポスト産構法時代Abssaihen_1

メーカーは次の10社があった。

三井東圧化学、住友ノーガタック、JSR、三菱化成、宇部サイコン、三菱レイヨン、旭化成、東レ、電気化学、鐘淵化学

(住友ノーガタック)

住友ノーガタックは1963年に住友化学とUS Rubber の50/50JVとして設立され、ABSSBRラテックスの製造販売を行った。
その後、US RubberがABS事業から撤退したため、1980年に住友化学100%となった。

1988年に住化とダウのPC合弁が決まり、ダウが住友ノーガタックに35%出資した。
ダウは日本でのPC事業推進に当たり、PC/ABSが最も重要と考え、ABSを持つ住化との提携を決めた。
(住化はダウの住友ノーガタックへの出資の見返りに、ダウ化工に出資し、PSの納入権を得ている)

1992年にダウ出資を50%に引き上げ、住友ノーガタックを住友ダウに改称、95年にPC 40千トンが完成した。
95年末に住友ダウはPC専業となり、ABS、ラテックス事業は住化100%の住化エイビーエス・ラテックスとなった。

(宇部サイコン)

1963年に宇部興産 51%/Borg Warner Chemical 49% で設立した。
1988年にGE Plastics がBorg Warner の化学部門を買収した結果、宇部 51%/GE Plastics 49% となった。

 

(ダイセル)
ダイセルは樹脂コンパウンドを扱い、AS樹脂を広畑と堺で製造していた。
1982年、堺工場で爆発事故が発生した。

このため、1982年にJSRとのJVの協同ポリマー、1983年に住化とのJVのノバポリマーを設立した。

協同ポリマーはダイセル 50%/JSR 50%出資の製造JVで、JSR四日市工場に35千トンのプラントを建設、ダイセルは出資分を引き取っている。

ノバポリマーはダイセル 50%/住友ノーガタック 30%/住化 20% 出資の製造JVで、住友ノーガタック構内にダイセルのサスペンジョン法で10千トン設備を建設した(85年に5千トン増設)。
1999年に解散している。

 

事業統合時代~

(テクノポリマー)

19967月、JSRと三菱化学のABS事業を統合してテクノポリマーがスタートした。
JSRはABSのトップメーカーであり、三菱化学も2番手グループで、両社が事業統合したテクノポリマーは奇美実業、Bayer、GE(ボルグワーナーを買収)に次ぐ世界4位である。

公取委は申請を受けて、有力な競争業者が存在するため、統合そのものは問題ないとしたが、三菱化学がABS樹脂等で世界第1位の生産能力を有する奇美実業(台湾)との我が国における販売に関する業務提携を行っているのを問題視した。
奇美実業は当時、台湾で100万トンのABS樹脂を生産していたが、三菱化学は奇美に10%の資本参加をし、奇美製品の日本での販売(2万トン程度)を扱っていた。

公取委は奇美実業との我が国における販売に関する業務提携によって競争を実質的に制限することとなるおそれがあると指摘した。

これに対して三菱から、奇美との提携の解消を含めて措置をとるとの返事があり、公取委はこの措置を前提に承認した。

社名   テクノポリマー  
設立    1996/7  
営業開始   1996/10  
資本金   30億円  
出資比率   JSR 60%、三菱化学 40%  
生産能力   単位:千トン  
   
ABS JSR・四日市   200 協同ポリマー 35 を含む
三菱化学・四日市    90  
(合計)  (290)  
AS・AES樹脂      40  
 

同社はその後、19984月に当初予定通り製造部門を統合した。


その後、

200210月に、鐘淵化学から超耐熱・耐熱ABS樹脂の営業権を譲り受けた。

鐘化は1966年の事業化以来、自動車用途を中心に耐熱ABS分野で高いシェアを獲得、事業規模は年産1万数千トンであった。
特殊ABS樹脂の業容拡大を目指すテクノポリマーと、コア事業への集中による事業基盤の再構築を進めたい鐘淵化学の意向が一致したもの。鐘淵化学は高砂のプラントを他製品に転用した。

なお、200210月の新聞報道では、東レもテクノポリマーへの事業統合参加を検討しているとされたが、まだ実現していない。

 

(日本エイアンドエル)

1999年7月、住友化学の100子会社である住化エイビーエス・ラテックスと三井化学のABS樹脂、SBRラテックス事業を統合して日本エイアンドエルが発足した。(社名は ABS & SBR Latex から)
三井と住友の事業統合は1997
10月の日本ポリスチレンに次いで2番目で、他に製造JVの日本エボリューがある

  社名   日本エイアンドエル
  設立   1999/7/1
  資本金   60億円
  株主   住友化学 67%、三井化学 33%
  事業内容   ABS樹脂ならびにSBRラテックスなどの製造・販売・研究開発
  生産能力                          単位:千トン
     
ABS 住化ABS・ラテックス 愛媛    70 乳化重合法
三井化学 大阪   30 バルク重合法
合計    100  
SBRラテックス 住化ABS・ラテックス 愛媛   60  
千葉   15 →30
三井化学 大阪   10  
茂原    0 10 停止
合計     85  

その後、
2001
7月、武田薬品が日本エイアンドエルにラテックスの販売委託及び技術ライセンス
2002
10月、武田薬品が日本エイアンドエルにラテックス事業を営業譲渡

(UMG ABS) 

2002年4月、宇部サイコンと三菱レイヨンがABS事業を統合し、UMG ABSとしてスタートした。
ABS樹脂の品質、用途面で宇部サイコンはOA機器分野に強く、三菱レイヨンは車両向けに強みをもっているなどから、補完的効果が大きいとして統合した。
合計能力176千トンと、テクノポリマーに次いで第2位メーカーとなった。

社名   UMG ABS 株式会社 (Ube、Mitsubishi、GE から)  
設立   2002/4/1  
資本金   16億円  
出資比率   宇部興産 42.7%、三菱レイヨン 42.7%、GE Plastics 14.6%  
事業内容   ABS樹脂事業  
    (ABS、ASA、SAN、AESの各ポリマー及びそれらを使用するコンパウンド品、
並びに他の樹脂とのアロイ製品にかかる事業)
 
設備能力  
宇部サイコン 宇部  110千トン
三菱レイヨン 大竹   67千トン
合計    176千トン

その後
2005
7月、日立化成から熱可塑成形材料のスチレン系耐候性樹脂、AAS事業の営業権・知的財産権・生産ノウハウの譲渡を受け、営業開始した。
* AAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体)樹脂

日立化成は1970年よりAAS樹脂を販売してきたが、収益の改善は困難であるとの判断で譲渡した。

 

以上の結果、現在の能力は以下の通り。(単位:千トン)

テクノポリマー JSR 四日市   200
三菱化学 四日市    90
合計   290
UMG ABS 宇部サイコン 宇部   100
三菱レイヨン 大竹    66
合計   166
日本エイアンドエル 住化ABS 愛媛    70
三井化学 大阪    30
合計   100
旭化成 水島    80
東レ 千葉    72
電気化学 千葉    65
カネカ 高砂    0
合計   773

海外では東レがマレーシアにToray Plastics (Malaysia) Sdn. Berhad を持っている。
東レ 93.8%、東レ系の現地の
Penfabric Penfibre が各3.1%を出資(下記増設完了後)、日系ABSメーカーとして唯一、海外に重合プラントを持ち、日本と同一品質の材料をASEANをはじめ中国・香港から欧米まで幅広い範囲で提供している。

現在能力は22万トンだが、2008年3月稼動予定で増設中で、11万トンを増強すると同時に、高付加価値の透明グレード品の生産を開始し、マレーシア能力を33万トンに、千葉工場を含むグループ合計では402千トンに拡大する。

 

上記の通り、国内ではテクノポリマーが290千トンでトップ、アジアでは東レが402千トンだが、アジアでは弱小である。

台湾の奇美実業(Chimei)が台湾で100万トン、中国の江蘇省鎮江市で35万トン、合計135万トンの能力を持っている。
(同社はPSについても、台湾で400千トン、江蘇省鎮江市で500千トンの能力を持つ。)

韓国のLG Chem も麗川工場の56万トンに加え、この度浙江省寧波市でABSを15万トン増強して48万トンとし、韓国と中国を合わせた能力を104万トンとしている。
2006/9/12 「
LG Chem、中国で2工場竣工」参照
 

日本のABSの需要推移は添付の通り。内需が減少、輸出が増加しているが、輸出は主に、アジアに進出した日本メーカー向けである。

Abs1_2   

日本の石化の変遷シリーズはこれで終りです。

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