ECは11月29日、ブタジェンゴム(BR)とエマルジョンSBR(ESBR)の価格カルテルで合成ゴムメーカー5社に519百万ユーロ(約800億円)の罰金支払いを命じた。
1996年から2002年までの間、価格カルテルを結んでいた。ESBRは全社が、BR は Eni, Bayer, Shell、Dowが生産していた。
罰金の内訳は以下の通り。
社名・国 | 減免率 % |
減免額 euros |
罰金 euros | |
1. | Bayer, Germany | 100 | 204,187,500 | 0 |
2. | Dow, USA | 40 | 43,050,000 | 64,575,000 |
3. | Eni, Italy | 0 | 0 | 272,250,000 |
4. | Shell, Netherlands | 0 | 0 | 160,875,000 |
5. | Unipetrol, Czech Republic | 0 | 0 | 17,550,000 |
6. | Trade-Stomil, Poland | 0 | 0 | 3,800,000 |
TOTAL | 247,237,500 | 519,050,000 |
ENIとShell とBayer は再犯ということで罰金が50%増しとなった。
1986/4にPPでANIC(ENI子会社)とShell、1994/7にPVCでENI とShell、2001/12にクエン酸で Haarmann & Reimer (当時Bayer子会社)が罰金を払っている。(Shell は下記のビチュメンでも)
Bayerはカルテルメンバーだが、当局に通報したため、減免制度を適用され、本来であれば204百万ユーロの罰金がゼロとなった。
またDow は調査に協力したため、本来の罰金の40%引きとなっている。
チェコのUnipetrol は100%子会社のKaucukが合成ゴム事業を行っている。
この命令に対し、ENIは、子会社Polimeri Europa の行動について全く関与していない親会社に罰金を課すのはおかしいとして拒否し、欧州裁判所に訴える権利を留保すると主張している。
ENI は本体がPVC、子会社ANICがPPで罰金を払っているが、子会社の行動は親会社と無関係となると、Polemeri は再犯とはならないため、50%増しでなくなることとなり、これを狙っているのではないかと思われる。
本件の罰金は本年最大で、これを含めてECの本年のこれまでの罰金は1,843百万ユーロ(約2800億円)と、過去最高となった。
ECは11月にビチュメン(天然アスファルト)のカルテルで、Shell、Total、Kuwait Petroleum に合計266.7 百万ユーロの罰金支払いと命じている。(BPは通報したため減免制度で罰金ゼロ)
このうち、Shellの罰金が最大。ShellはこれまでにPVCとPPの価格カルテルで罰金を支払っている。ECは本年初めに新しいガイドラインを出し、最も悪質な企業に従来よりも高い罰金を支払わせることとした。
このほか、オランダの道路建設業者が調査員の立ち入りを拒否し妨害したとして罰金支払いを命じられている。
なお、今回の合成ゴムカルテルの罰金額は2001年の製薬8社のビタミンカルテルの罰金、855百万ユーロに次いで二番目に大きい。
同事件では、Hoffman-La Rocheが462百万ユーロ、BASFが296百万ユーロの罰金、他に、Aventis SA、Solvay Pharmaceuticals、Merck と、日本の第一製薬、エーザイ、武田薬品の合計8社が罰金を支払った。
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