マレーシアはパーム油(アブラヤシ油)の最大の生産国であるが、同国では政府がバイオディーゼルへの利用を進めており、バイオ燃料としての今後の需要が急増するという見通しの下に、企業集約による巨大投資とコスト削減を図って統合が相次いだ。
まず11月末に政府系の3大パーム油企業、Golden Hope Plantations、Sime Darby、Kumplulan Guthrieの3社が合併し、世界最大のパーム・オイル・プランテーション会社を設立するという構想が発表された。
マレーシア政府の持ち株会社であるPermodalan Nasional Bhd(PNB)とその基金がGolden Hope Plantationsの51.8%を、Sime Darbyの39.4%を、Kumplulan Guthrieの64.7%を所有しているが、Synergy Drive Sdn. Bhd.という会社が設立され、この会社が上記3社の資産を買い取る形で企業合併を行う。合併成立後はPNBがSynergy Drive Sdn. Bhd.の株式45%を所有する。合併により、62万ヘクタールの巨大プランテーションが形成される。
12月5日は、これに対抗して、マレーシア最大の華僑、Robert Kuok (郭鶴年)が世界最大級のパーム油・製品の一貫生産企業を作るために43億ドル規模の企業の合併をおこなうと発表した。
同グループでシンガポールに上場している Wilmar Internaional が、クアラルンプールに上場しているPBB Oil Palm を統合するもの。PBB Oil Palm は363千ヘクタールのプランテーションと9つの精製工場を保有し、Wilmer は71千ヘクタールのプランテーションと16の精製工場を保有している。合併により434千ヘクタールのパーム椰子プランテーションと25の精製工場が統合される。
2005年のパーム油の生産量は世界合計33,326千トンで、うち、マレーシアが14,962千トン(45%)でトップ、インドネシアが13,600千トン(41%)でこれに肉薄している。(3位はナイジェリア800千トン、4位はタイ685千トン、5位コロンビア662千トン)
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マレーシアでは政府はパーム油を5%混入したBioDiesel "Envo Diesel" の使用を認めるとともに、特にEUへの輸出に熱心である。
パーム油のBioDiesel の発想は1982年に生まれ、1983年に内閣に提出された。2004年3月にマレーシア・パーム油局(MPOB)所有の自動車で Envo Diesel のテストが行われた。
石油公社PetronasとMPOBが共同で、パーム油のディーゼル混合技術を研究・開発し、排気ガス対策上も有効な技術を確立している。
このためBioDiesel 工場の申請が殺到し、7月にはBioDiesel 事業が、食品や油脂化学製品のためのパーム原油の使用分まで使いこんでしまうという懸念が増大したため、生産ライセンスの発行を一時凍結したほどである。
11月までに75のライセンスが下り、既に5社が操業中、若しくは間もなく操業を開始する。5社の能力は年間258千トンに達する。ドイツ、米国、欧州の数カ国が主な販売先となる。
サバ州政府が全額出資するPOICサバ社は、年間30万トンの生産能力を持つBioDiesel 工場を建設中で、2008年にフル稼働すると世界最大規模となる。また、サバ州と隣接するサラワク州ではゴールデン・ホープ・プランテーション社が年産15万トン規模の工場を設立することが決定している。
EU では、温暖化対策や石油依存度の低減等を目的とした「自動車用バイオ燃料導入に係る指令(バイオ燃料指令」が2003 年5 月に発効した。同指令では、加盟各国がバイオ燃料及びその他再生可能燃料の市場導入量について目安となる国家目標を設定することを義務づけ、参考値として輸送用燃料におけるバイオ燃料の比率を2005 年末には2%、2010 年末には5.75%とするという目標が掲げられている。
米国では、2005年8月に「2005年エネルギー政策法」が成立した。同法には、自動車用燃料へのバイオ燃料の使用を義務づける「再生可能燃料基準(RFS)」が盛り込まれている。
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なお、マレーシアやインドネシアではパーム椰子プランテーションのために広範な熱帯林が破壊されており、哺乳動物、爬虫類、鳥類の消失も含め、問題となってきている。
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