EU、化学物質新規制「REACH」施行へ

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欧州議会は13日、約3万種類の化学物質について安全性評価などを企業に義務づける新規制「REACH」法案を可決した。来年6月に導入される。
これまであった40の法律が単一のシステム
REACH (Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals) に統合される。
また、この法律の運営に当たる新しい欧州化学庁(
Chemicals Agency Helsinki に設置される。

EUは今年7月に家電やパソコン、複写機、デジタルカメラ、携帯電話などを対象に、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の計6物質の使用を原則禁止する「
RoHS指令」を施行したばかり。

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EUには、1967年に導入した既存の化学物質規制制度があるが、同制度の下では、1981年9月18日を基点に、「新規化学物質」と「既存化学物質」に分類している。
約3,000種類の新規化学物質については、製造・輸入業者が行った安全性評価を基に行政が審査を行い全ての物質の安全性を確認している。
約10万種類が市場に流通しているとされている既存化学物質については、行政が安全性評価を行い規制等の措置をとっているが、実際には色々の事情でごく僅かな数の物質についてしか安全性評価が実施されていない。

このため、2001年2月、欧州委員会は「今後の化学品政策の戦略白書」を発表し、工業用化学物質の審査及び規制の仕組みを大幅に見直し、リスク評価・管理を強化する方針を発表、新たな化学品規制として、REACH規則案の導入を提案した。

パブリック・コメントで集まった意見等を踏まえ、2004年10月29日、欧州委員会は「REACH規則案」を採択し、同年11月3日に欧州議会及び欧州理事会に提出した。
その後、関係各国との間でいろいろの妥協が行われ、その結果として今回の議決となった。

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EUは2008年に欧州化学庁を新設。生産・輸入量に応じて2011年から段階的に規制順守を義務付けていく計画。

年間1トン以上の製造又は輸入物質について資料を付けて登録する義務が生じる。約30,000の物質が対象となる。登録時期は製造・輸入量や物質の有害性により異なるが、2018年までにすべての物質の登録が必要となる。
とくに危険性が高い約3千種の化学物質・製品は厳しい認可の下に置かれ、欧州化学庁の認可なく市場に出すことが禁じられる。
有害性があると判断される物質については、製造事業者に安全な物質への代替計画の提出が義務付けられる。現状では代替する物質がない場合は、代替物質を開発するための研究開発計画の提出が求められる。

製品に含まれる危険物質についてsupply chain のなかで公表する義務が追加された。Safety data sheet の形で公表することとなるが、新しいSafety Data Sheets Directive が出される。

また、動物実験に代わる方法の推進がREACHの目的に含まれた。

Regulationの内容は間もなく公表される。

 

これに対し、日本化学工業協会では「見解」を発表、REACHの趣旨そのものには賛同してきたが、日系化学企業の活動に悪影響を及ぼす懸念のみならず、従来のサプライチェーンに変化をもたらしユーザー業界にも影響を及ぼす懸念は払拭されていないとしている。また、運用面において問題点や現時点では不明な点が数多く残されているとし、施行にあたり大きな混乱が生ずることを懸念している。

具体的には以下の点を問題としている。
①データの共有をはじめとする登録時の手続きなど、実際の法運用面において、現時点では不透明な部分も多く、施行にあたり混乱が予想される。特に、欧州におけるコンソーシアムの形成など、域外企業にとって不利となりかねない不明点も多い。
②リスクベースの化学物質管理から隔たりがある。
 ・高懸念物質の使用においてリスクが適切に管理されていても、「認可」申請時に代替計画を提出する義務がある。
 ・ポリマーを欧州へ輸入する際、既に製造過程で消失している構成モノマーを登録する義務がある。
③「認可」の候補物質リストがブラックリスト化し、購買拒否に繋がる可能性がある。
④化学業界のみならず川下ユーザーにも情報伝達の義務が課せられ、しかも非常にタイトな実施スケジュールへの対応が必要とされることから、サプライチェーンに混乱を招く可能性がある。

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