日本のバイオガソリンの動き

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国産バイオエタノール生産の拠点として、大阪府堺市に、廃木材からエタノールを製造する世界で初めての商業プラントが竣工し、1月16日に開所式が行われる。
バイオエタノール・ジャパン・関西株式会社が環境省の補助(地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター事業)を受けて建設を進めていたもので、平成19年度の環境省重点施策である「バイオマスエネルギー導入加速化戦略」において、
大都市でのエタノール3%混合ガソリン(E3)大規模供給実証のためのエタノール供給元となる。

建設廃木材等を原料として、高効率でバイオエタノールを生産する製造施設で、年間1,400 kLのエタノールを製造可能で、全量をエタノール3%混合ガソリン(E3)にした場合、約4.7万kLになる。

●事業概要(環境省補助事業;補助率 1/2)
 ①建設廃木材を原料に発酵等により燃料用エタノールを製造。
 ②エタノール製造プラントをH16~18で整備し、H19から燃料用エタノールを供給。

●事業者:バイオエタノール・ジャパン・関西株式会社
       (大成建設㈱,丸紅㈱,サッポロビール㈱,東京ボード工業㈱,大栄環境㈱の5社の出資)
●プラント能力:建設廃木材48,000t/年から燃料用アルコール1,400KL/年を製造
●総事業費:約37億円

環境省は平成19年度予算概算要求・要望主要新規事項のなかで、「バイオマスエネルギー導入加速化戦略」を挙げている。

バイオマスエネルギーの導入加速化戦略では、
○経済成長戦略大綱に位置づけられた、バイオマスエネルギーの導入加速化に関する施策を強力に推進
○脱化石燃料社会への第1歩であり、自動車を保有する国民誰もが参加出来るバイオエタノール等の輸送用エコ燃料の大規模導入により、温暖化対策と国民の意識改革を促進
するとし、以下の4点を挙げている。
詳細 http://www.env.go.jp/guide/budget/h19/h19-gaiyo-2/101.pdf

エタノール3%混合ガソリン(E3)の本格展開
・ 大都市圏(関東圏・近畿圏)において、E3供給システムを確立し、E3を大規模に導入
 (上記の大阪のエタノール生産プラントを活用)
・沖縄宮古島等で国産バイオエタノールを導入するほか、全国各地での体制整備を促進
 (林業地域への展開も視野)

エタノール10%混合ガソリン(E10)対応の促進
・ E10導入に必要な走行実証等を早期に実行し、エタノール混合割合の引き上げに向けた環境を整備。
・ 自動車メーカーによるE10対応を促進し、第1約束期間中(2008~2012年)には、すべての新車のE10対応化を完了

木質バイオマスのエネルギー利用の促進
・間伐材等の木質バイオマスを原料としたバイオ燃料の製造・利用に係る地域システムの構築・実用化実証により
 林業地域への積極的な展開を促進。
・木質バイオマスからのエタノール等の製造プロセスの高度化・低コスト化の技術開発を支援

多様なバイオマスのエネルギー利用の促進
・廃食用油を原料としたバイオディーゼル燃料としての利用などに係る設備整備を支援

ーーー

石油連盟は、1月26日に、「バイオマス燃料供給有限責任事業組合」を設立する。

石油連盟では、植物等を原料としたバイオエタノールを石油系ガスと合成し、バイオETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)としてガソリンに混合して利用していくことを決定しており、今後、バイオエタノールおよびバイオETBEの輸入・国内調達の方法、受入れ基地の整備、組合員への供給方法(輸送など)に関し、具体的に検討・準備を開始する。

組合員(出資会社)は下記の石油連盟加盟10社。
  出光興産、太陽石油、富士石油、コスモ石油、九州石油、昭和シェル石油、新日本石油、ジャパンエナジー、極東石油工業、エクソンモービル

 

石油連盟では2006年1月に、「バイオマス燃料の導入について」を発表、(1) 大気環境に悪影響を及ぼさないこと、(2) 車の安全性や実用性能を損なわないことに鑑み、バイオエタノールをそのままガソリンに混入するのではなく、バイオエタノールからETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)を製造し、これをガソリンに混合することとした。
 * ETBEとは
   ・エタノールとイソブテンを合成して生成する物質。
   ・現行の品質確保法上では、ガソリンの含酸素率の上限値が1.3%となっていることから、ETBEでは7%程度まで混入可能。

バイオエタノールの課題として、以下の点を挙げている。

1.環境特性の向上
 ① ガソリンにエタノールを混合すると蒸気圧が上昇。
   → 光化学スモッグの原因物質である燃料蒸発ガス(HC)が増加。
 ② 既存車に対する3%以上の高濃度のエタノール使用はNOxが増加。

2.適正な品質の維持と安全性
 水分混入によってガソリンとエタノールが分離。
 → 燃料性状の変化や自動車部品への腐食・劣化が発生。

3.供給安定性の確保
 ① 世界におけるエタノールの年間貿易量は約300万klのみで輸出余力があるのはブラジル一国のみ。
    (日本でガソリンをE3とした場合、180万kl/年が必要)
 ② 原料が農産物(サトウキビ等)であるため、天候や食料品価格により生産量・価格が大きく変動。

4.経済性の向上 
 ① ガソリンに対してコストが高い。
    (ガソリン輸入コスト(35円/
として)に比べて約10円/l 高い)
 ② エタノールの熱量はガソリンよりも3割程度少ないため燃費が悪化。

その上で、バイオエタノールを自動車燃料として利用するためには ①燃料蒸発ガスを増加させない(=環境上の問題がない) ②水分混入による分離がなく腐食性もない(=安全性に問題ない)方法として、直接ガソリンに混入するのではなく、ETBEを製造し利用するべきとしている。

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