EUの行政機関である欧州委員会は10日、「欧州エネルギー政策」を発表した。3月のEU首脳会議で、加盟27カ国の承認を得る。
京都議定書では2012年までに1990年に比べ先進国で温室効果ガスの5%の削減を義務づけており、EUは8%、日本は6%の削減が目標となっている。欧州委は国際的な合意により2020年までに先進国全体で30%の削減を行うべきであるとし、EUとしては少なくとも20%削減することを提案した。
現在のエネルギー政策のままでは、EUの温室効果ガスは2030年までに5%程度上昇し、EUのエネルギー輸入依存度がエネルギー消費量の50%から2030年には65%にアップするとしている。今世紀中に地球の気温が5℃以上上昇する可能性が50%以上あるともしている。
提案された政策は次の3つの柱からなっている。
1)エネルギー統一市場
EUは1951年の欧州石炭鉄鋼共同体が母体だが、エネルギー政策は全体としては国別となっている。
提案では、統一市場化により、EUのエネルギー消費者が真の選択ができるようにするとともに、エネルギーへの巨大投資を促進することを狙っている。
統一市場化により、既存のエネルギー市場を完全に開放し、5億のEU市民が電気やガスを欧州のどこからでも得ることができるようにする。このためにはエネルギー生産(発電)とエネルギー流通(送電)の分離を提案している。
2)低カーボンエネルギーへの移行の促進
再生可能エネルギーの比率を2020年までに20%にすることにより、EUが再生可能エネルギーでの世界のリーダーの地位を維持することを提案している。このため、バイオ燃料比率を10%にすることも挙げている。
研究開発の重要性を指摘し、戦略的EUエネルギー技術プランを提案している。7年間でエネルギー研究開発の年間支出を最低50%増やす。
現在EUの原子力発電はEUの電気の30%、EUのエネルギー消費の14%を占めるが、原子力に頼るかどうかはそれぞれの国の判断に任せるとする。但し、原子力発電を減らす場合は、その分を低カーボンのエネルギーソースで補うべきであるとしている。
3)エネルギー効率の向上
・燃料効率のよい自動車の使用
・家電の基準を厳しくする
・既存の建物のエネルギー効率の改善
・発電、送電、配電の効率改善
これらの目的はEU単独では出来ない。開発国と途上国、産油国と消費国が連携する必要があるとしている。
欧州委のピエバルグス委員はエネルギー戦略の全面的な見直しで「欧州が世界の新産業革命ー低カーボン経済ーで世界をリードする」としている。
コメントする