欧米の報道機関は、フランス/ドイツのSanofi-Aventisと米国のBristol-Myers Squibbが合併し世界最大の医薬品会社となるとの噂を報じた。両社が合併で基本合意したとしている。
これに対して両社ともコメントしていないが、Sanofi-Aventisの株は下がり、逆にBristol-Myers 株は値上がりした。
Bristol-Myers は1887年開業、Squibb は1856年開業で、1989年に両社が合併し、Bristol-Myers Squibbとなった。
Sanofi-AventisはHoechstと Rhone Poulenc が合併してできたAventisと、フランスのSanofi-Synthelaboが2004年に合併したもの。
(2006/3/6 「世界の医薬会社の構造改革」 参照)
Sanofi-Aventisの2005年の医薬品売上高(324億ドル)はPfizer(443億ドル)に次ぎ世界第二位。Bristol-Myers(153億ドル)は第10位で、合併するとPfizerを抜きトップとなる。
(世界の医薬品ランキングはUto Brain 資料から
http://www.utobrain.co.jp/news-release/2006/061200/ 参照)
Sanofi-Aventisにとってはこの合併は以下の意味をもつ。
・規模拡大
・両社とも有力薬品が特許切れ間際になっているが、Bristol-Myersは新薬候補を持つ。
・米国進出手段
・乗っ取り回避(13%の株主のトタルは本年後半の株の売却を匂わしている)
Bristol-Myers も、Sanofi-Aventis もからむが、有力薬品のジェネリック品をめぐってトラブルを起こして経営がガタガタし、昨年9月にCEOのPeter Dolan が辞任に追い込まれており、株価は低落、Schering-Plough と AstraZenecaなどが売却先に噂されている。
事態は以下の通り。
Sanofi-Aventisが開発した抗血小板剤 Plavix に関して、米国ではBristol-Myersが、米国以外ではSanofi-Aventisが販売する契約を結んでいた。
この特許は2011年まで有効だが、カナダのGenerics 医薬品会社のApotex が特許無効を主張して米国でこれを販売しようとした。
2006年3月に3社は和解契約を締結した。
内容は、Bristol とSanofi がApotex に4,000万ドルを支払い、Apotexは2011年までgeneric品販売を延期するというものであった。
合意にはApotex側の要請で、和解の政府承認が得られない場合には、Bristol が特許侵害訴訟に勝利した場合にApotexに請求できる損害賠償金額に上限を設定すること、Bristol とSanofi はApotexのgeneric品発売後5営業日までは差し止め命令を求めることができないという条項が入っていた。
この合意はFTCに認められず、Apotexは和解が不可能になったとして、8月8日にgeneric品を発売した。Bristol とSanofi は米連邦地裁に販売の暫定的差し止め命令を14日に求めたが、判事が数週間後に販売の一時差し止めを命じるまで Apotex は大量に出荷する時間を稼いだ。
更に、両社の帳簿に不審な点が発見され、合意に関して政府を欺いたのではないかとして捜査が開始され、BristolのCEOのPeter Dolanの事務所が捜索された。2006年 9月 12日、CEO が辞任に追い込まれた。
なお、本特許の有効性に関する裁判は本年1月22日に始まったが、確定までに最低3ヶ月かかるとみられている。
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