国立環境研究所は2月15日、同所と各大学等の約60名の研究者が参加して実施した地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト(「脱温暖化2050プロジェクト」)が今年度で前期研究期間を終了することから、これまでの研究成果を発表した。
報告は「我が国が、2050年までに主要な温室効果ガスであるCO2を70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」と結論づけている。
発表 http://www.nies.go.jp/whatsnew/2007/20070215/20070215.html
詳細資料 http://www.nies.go.jp/whatsnew/2007/20070215/shiryo2.pdf
脱温暖化2050プロジェクトは、地球環境研究総合推進費により、国立環境研究所が中心となって2004年度から実施した。
日本における中長期脱温暖化対策シナリオを構築するために、技術・社会イノベーション統合研究を行い、2050年までを見越した日本の温室効果ガス削減のシナリオとそれに至る環境政策の方向性を提示するもの。
中間報告の要点は以下の通り。
背景: |
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世界の温室効果ガス排出を2050年までに現在の50%以下にする必要がある。 |
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日本は、2050年までに1990年に比べて60~80%の削減が必要とみられる。 |
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日本での主要な温室効果ガスであるCO2を2050年の時点で、1990年比で70%削減する可能性とそのコストについて検討。 |
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前提:将来の日本について、2つのシナリオ |
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A |
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都市居住選好志向や利便性・効率性の追求から都心部への人口・資本の集中が進展 |
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一人当たりGDP成長率 年率2% |
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B |
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ゆとりある生活を求めて、都心から地方・農山村への人口流出が進み、人口や資本の分散化が進展 |
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一人当たりGDP成長率 年率1% |
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結論: |
<削減可能性とそのコスト> |
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CO2排出量70%削減は、エネルギー需要の40~45%削減とエネルギー供給の低炭素化によって可能 |
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需要側:人口減や合理的なエネルギー利用によるエネルギー需要減、需要側でのエネルギー効率改善で可能 |
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供給側:低炭素エネルギー源の適切な選択(炭素隔離貯留も一部考慮)とエネルギー効率の改善の組み合わせで、CO2排出量70%削減が図られる。 |
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CO2排出量70%削減に関わる技術の直接費用は、年間約6兆7千億円~9兆8千億円 (想定される2050年のGDPの約1%程度) |
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<分野別対策> 各部門でのエネルギー需要量削減率(2000年比) |
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産業部門:構造転換と省エネルギー技術導入等で20~40% |
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運輸旅客部門:適切な国土利用、エネルギー効率、炭素強度改善等で80% |
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運輸貨物部門:物流の高度管理、自動車エネルギー効率改善などで60~70% |
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家庭部門:建て替えにあわせた高断熱住宅の普及と省エネ機器利用などで50% |
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業務部門:高断熱住宅への作り替え・建て直しと省エネ機器導入などで40% |
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<長期政策の必要性> |
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今のままの高炭素排出インフラへの投資を継続しないために、早期に低炭素社会のイメージを共有し、転換に時間のかかる国土設計、都市構造、建築物、産業構造、技術開発等に関する長期戦略を立て、計画的に技術・社会イノベーションを実現させる必要がある。 |
コンパクトシティ等による旅客輸送量の変化:目的地が近在化することによる必要移動距離の減少
SCM 等による貨物輸送量の変化:合理的な物流システムの導入により変化する分
この研究は、2050年の望ましい将来を想定し、それを実現するための道筋を考える、「バックキャスティング」に基づいたシナリオアプローチを採用している。
「バックキャスティング」については、安井先生の「市民のための環境学ガイド」に説明がある。
http://www.yasuienv.net/BackCast.htm
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