国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」報告書発表

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2月2日、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書が発表された。
サマリー原文 
http://news.bbc.co.uk/1/shared/bsp/hi/pdfs/02_02_07_climatereport.pdf

lPCCは1988年に設立された国連の組織で、各国政府から推薦された科学者が3つの作業部会に分かれ、5、6年ごとに地球温暖化に関する科学的根拠とその影響、対策の3項目について評価を見直す。

今回は90年、96年、01年に次いで4回目で、96年に初めて人間活動が温暖化を引き起こしている可能性について触れた。

今回は約65万年前までにさかのぼる大気の分析や観測網の充実を踏まえ報告書を作成した。

報告書は40カ国の600人の学者が作成し、620人以上の専門家と多くの政府関係者がレビューした。113カ国の代表が報告書を一行一行チェックした。代表執筆者の一人の東大・住教授の話では、特定意見のみを採用したと言われないように、どんなコメントも全てファイルしてあるという。

報告では気候変動の観測結果の人為的要因と自然要因を分析し、将来予測を行っている。
大気や海洋の平均気温の上昇、雪氷の融解、海水面上昇から、温暖化は明白であるとしている。

  20世紀に発生した
可能性
人為的影響 21世紀に続く
可能性
温暖化 Very likely Likely Virtually certain
陸地での熱波の頻発 Likely More likely than not Very likely
豪雨の頻発 Likely More likely than not Very likely

Virtually certain > 99%
Very likely > 90%
Likely > 66%
More likely than not > 50%

将来予測:

人類が化石燃料消費により毎年排出するCO2の量は約70億炭素トンで、自然界が1年間に吸収できる量は約30億炭素トンにとどまると推定されている。

21世紀末(2090~99年)に予測される地球の平均気温の上昇幅は、温室効果ガス排出量により大きな影響を受ける。


シナリオごとの気温と海面上昇
下表及びグラフ参照

気温は2090~2099年に、1980~1999年に比して、Best estimate で1.8℃~4.0℃アップする。幅としては1.1℃~6.4℃。
海面上昇は同じく、(各シナリオの上昇幅の中心では)
28cm~43cm、幅では18cm~59cmとなっている。

一般に報道されている 6.4℃、59cmは最悪シナリオでの最悪ケース。BBCは1.8℃~4.0℃、28cm~43cmと報道している
「池田信夫blog」 は報道の扱いを批判している。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/2bf075165f31357bf05ef77d4bd72002

2001年の報告では、気温上昇は1.4~5.8℃、海面上昇で 9~88cmで、今回はこれよりもむしろ下がっているが、報告ではこれらは直接対比するべきものではないとしている。今回は前回よりも研究が進んでおり、各シナリオごとに可能性を評価している。

2090-2099年の気温上昇と海面上昇予測(1980-1999年比)

  気温上昇(℃) 海面上昇(メートル)
Best
estimate
Likely
range
  中間
Constant Year 2000 concentrations 0.6 0.30.9 NA
A1 「高成長社会シナリオ」
高度経済成長が続き、世界の人口が21世紀半ばにピークに達した
後に減少し、新技術や高効率技術が急速に導入される社会
       
A1F1 化石エネルギー源重視                            4.0 2.4~6.4 0.26~0.59  0.43
A1T  非化石エネルギー源重視 2.4 1.4~3.8 0.20~0.45  0.33
A1B  エネルギー源のバランス重視 2.8 1.7~4.4 0.21~0.48  0.35
A2 多元化社会シナリオ
世界の人口は増え続けるが、地域の自立と独自性を保つ社会。
経済や政治はブロック化され、貿易や人・技術の移動が制限される。
経済成長率は低い
3.4 2.0~5.4 0.23~0.51  0.37
B1 「持続発展型社会シナリオ」
地域間格差が縮小した世界。
21世紀半ばに世界人口はピークに達した後に減少するが、
経済構造はサービスと情報分野に急速に変化し、
クリーンで省資源技術が導入される。
経済発展と資源保全の両立が地球規模で重視される。
1.8 1.1~2.9 0.18~0.38  0.28
B2 「地域共存型社会シナリオ」
世界の公平性や地域的な問題解決、社会および環境の持続可能性を
重視した社会。
人口増はA2より緩やかで、経済発展は中程度
2.4 1.4~3.8 0.20~0.43  0.32

Ipccgraph

今回の発表を受け、報告書の作成に参加した日本の科学者を中心に、2月2日に「気候の安定化に向けて直ちに行動を!」と題する緊急メッセージが発せられている。
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/message.pdf

ーーー

英政府の依頼でニコラス・スターン(英国政府気候変動・開発における経済担当政府特別顧問、元世界銀行上級副総裁)がまとめた「スターン報告書 Stern Review on the economics of climate change」は1~5℃の温度上昇で、どのような影響があるのかを分析している。
(2006/10/30発表)

http://www.hm-treasury.gov.uk/independent_reviews/stern_review_economics_climate_change/stern_review_report.cfm

例えば1℃の上昇でも5000万人が水不足に悩み、30万人がマラリアなどで死亡。EU(欧州連合)が目指している2℃以内の上昇でも、アフリカの作物収量が5~10%落ちる。また、5℃になると、東京やニューヨーク、ロンドンなど主要都市が海面上昇の危機に直面すると警告する。

Stern1_1
Stern2_1

スターン報告書の結論の要約
直ちに確固たる対応策をとれば、気候変動の悪影響を回避する時間は残されている。
気候変動は、経済成長と開発に悪影響をもたらし得る。
気候安定化のための費用は決して低くはないが拠出可能な額である。しかし、対応の遅延は危険なだけではなく非常に高くつく。
全世界の国々に気候変動への対応が求められているが、富める国・貧しい国を問わず、経済成長への熱望に水をさすものではない。
ガス排出量を削減するためにできることはたくさんある。実践したいと思わせるには、慎重で確固たる政策が必要とされる。
長期的ゴールについての相互理解と対応策の枠組みに関する合意をもとに、国際規模で気候変動に対応することが不可欠である。
将来の国際的枠組みには、以下の主要素が織り込まれていなければならない。
*国内排出取引
*テクノロジー協力体制
*森林伐採を減らすための対応策
*順応化:
  気候変動の影響を最も受けやすいのは貧しい国である。
  それらの国の開発計画には気候変動を完全に組み込み、豊かな国は確約を守り、
  海外開発援助を通じてサポートを増強することが肝要である。

なお、2007/1/29 「米国のエネルギー政策と温暖化対策」 参照

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」に詳細が載りました。
http://www.yasuienv.net/IPCC4thRep.htm

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