2006/4/27 「インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加-2」 で Tuban Petrochemical について説明した。
本計画はHashim Djojohadikusumo のハシム・グループが中心になり、東ジャワのツバンでエチレン/芳香族の一大コンプレックスを建設しようというものであった。
しかし1997年の通貨危機で資金手当てができなくなり、工事中断に追い込まれた。
その後、ハシム・グループの持株は政府に移り、Pertaminaも参加し、昨年、芳香族関連のみでスタートした。
新株主 比率 注 P.T. Tuban Petrochemical Industries(Tuban Pi) 59.50% 政府* 70% Tuban Petrochemical Pte Ltd. 17.00% タイのSiam Cement PCL. Pertamina 15.00% 新規参加 伊藤忠 4.25% 双日 4.25%
* 政府側で出資した金融再編庁(IBRA)は任務を終わって解散し、後継組織のAsset Management Company (PPA) に引き継がれた。しかし継続して化学企業の株主として機能する考えはなく、ハシム・グループが再度株主となるのではないかと噂されていた。
Tuban Pi は、ハシム・グループのPT Polytama Propindo(PP)、PT Petro Oxo Nusantara(ブタノールほか)、PT Pacific Fibretama(ポリエステル繊維)も肩代わりしている。
Tuban PetrochemicalのパラキシレンはインドネシアでのPTAが好調なためフル操業をしており、本年に50万トンから80万トンに手直し増設を行う。
ーーー
Tuban Petrochemical について、2つの動きがある。
2006/11/8 「中国中信集団(CITIC)、カザフスタンの油田買収」で、カザフスタン油田の売り手のNations Energy は1996年に設立されたカナダの企業だが、実はインドネシアから消えた Hashim が設立し、会長を務める会社であると伝えた。
ハシムとその仲間はこの売却で13億ドルの手取り収入があったと言われているが、ハシムはこの金でインドネシアに復帰する積りではないかとの説が出ていた。
Hasimは本年に入り早速、実兄の経営するパルプ会社 PT.Kiani Kertas の銀行借入金 216百万ドルを肩代わりして返済した。
Hashim Djojohadikoesoemo の実兄のPrabowo Subianto 元中将はスハルト元大統領の末娘 Siti Hediati Haryadi (Titiek. Prabowo)の夫で、軍の特殊部隊の司令官を務めていたが、スハルトの取り巻きであったBob Hasanのパルプ会社 PT.Kiani Kertas を引き継いでいる。
Hasanは国の金を横領して逮捕されたが、PT.Kiani Kertas はこれに加えて、カリマンタンにつくったパルプ工場が熱帯雨林の乱伐により同島にパルプ材料の木材がなかったという驚くべき理由で倒産した。
この会社を政府から引き取ったのがPrabowo 元中将とMandiri 銀行であったが、当初1年で再建するというのが実現せず、大赤字で問題となっていた。
Hasimは次にAsset Management Companyの持つTuban Pi の株式を買取り、Tuban Petrochemical を初め、Polytama、Petro Oxo、Pacific Fibretama 等を取り戻す積りではないかと見られている。
ーーー
もう一つの動きはインド国営のIndian Oil (IOC)のインドネシア進出計画である。
IOC はスリランカにLanka IOC Ltd.、モーリシャスにIndianOil Mauritius Ltd.を設立してガソリン等の販売を行っているが、大市場のインドネシア進出も狙っている。
インドネシアでのガソリン販売計画については規制緩和の動きを暫く見たいとして当面ペンディングとしたが、潤滑油の販売と、現地での石油開発・製造(E&P)については引き続き検討を続けている。
E&Pに関してはインドネシアでも有数の民間石油会社PT Medco Energy International と提携の覚書を締結しており、Tuban Petrochemical の政府(Asset Management Company)持分の買収を検討していると伝えられている。Medco は新製油所建設も検討しており、IOCはこれにも関心を示している。
今後の両者の動きが注目される。
コメントする