2006/4/17 「高純度テレフタル酸(PTA)の大増設」で、「中国では年率10%の成長が見込まれている。しかし、こんなに増設して大丈夫であろうか。これもバブルではないのだろうか。」とした。
これは中国からの下記の情報(2005/6時点 単位:千トン)に基づくもので、各社別増産計画の表も添付している。
生産 | 輸入 | 能力 | 需要 | |
2004 | 4,600 | 5,700 | 6,000 | 10,300 |
2005予 | 5,600 | 6,700 | 7,200 | 12,100 |
2007予 | 14,000 | 1,300 | 18,400 | 15,300 |
しかしながら現在の状況は下記の通りとなっている。
生産 | 輸入 | 能力 | 需要 | |
2005 | 5,560 | 6,490 | 6,600 | 12,050 |
2006 | 6,400 | 7,000 | 8,800 | 13,400 |
2007予 | 9,000 | 6,000 | 12,700 | 15,000 |
現在の2007年予想では、需要はほぼ当たっているが、能力と生産が大きく下回っており、その結果、輸入量は減少していない。これは、環境問題や資金不足で、かなりの計画が延期されたり、建設が遅れているためである。
また、原料のパラキシレン不足もPTA計画の遅れの理由となっている。
PXについては下記の通り、600万トンの新増設が承認されており、これらが完成するとネックではなくなる。
遅れていた新増設計画も順次完成し、今後数年で供給過剰となることが予想される。
1月28日、浙江華聯サンシャイン石化(Hualian Sunshine PetroChemical Co. )の3基目の60万トンPTAプラントが浙江省紹興市で試運転を開始した。間もなく商業運転開始の予定。
2005年4月に最初の60万トンプラント、昨年10月に第2基60万トンがスタートしており、合計能力はこれで180万トンとなり、中国最大のPTAメーカーとなった。第1基はEastman技術を採用したが、第2基、第3基はInvista法を採用している。
中国のPTAの上位10社(2月1日現在)とその増設計画は以下の通り。(単位:千トン)
立地 | 能力 | 増設計画 | 備考 | |
Hualian Sunshine | 浙江省紹興 | 1,800 | Union Holdings group | |
Xianglu Petrochem | 福建省廈門 | 1,500 | 1,500 | 台湾 Dragon group PXはDragon Aromaticsが建設中 |
Sinopec Yangzi Petrochem | 江蘇省南京 | 1,050 | ||
Sinopec Yizheng Chemical Fiber | 江蘇省儀征 | 950 | 900 | |
Yisheng Petrochem | 浙江省寧波 | 660 | 650 | 既存分はデボトルで600→660 |
Yisheng Dahua | 遼寧省大連 | 500 | Yishengと大化集団とのJV PXは大連福佳・大化石油化工 | |
Oriental Petrochemical | 上海 | 600 | 台湾 Far Eastern Group | |
寧波三菱化学 | 浙江省寧波 | 600 | ||
BP Zhuhai Chemical | 広東省珠海 | 500 | 900 | 既存は公称350、実質500 |
Sinopec Shanghai Petrochem | 上海 | 500 | ||
Sinopec Luoyang Petrochem | 河南省洛陽 | 350 |
このほかにも多数の新設計画がある。
ーーー
中国のPXの需給は以下の通り。(千トン)
生産 | 輸入 | 輸出 | 能力 | 需要 | |
2005 | 2,240 | 1,610 | 60 | 2,880 | 3,790 |
2006 | 2,620 | 1,840 | 100 | 3,830 | 4,360 |
2007 | 3,500 | 2,700 | 50 | 4,430 | 6,150 |
2006年の輸入量1,840千トンのうち、日本からの輸入は856千トンで47%、韓国からは770千トンで42%を占めている。
中国のPX メーカーと能力は以下の通り。(2007/1/1現在、単位千トン)
メーカー | 立地 | 能力 |
Sinopec 揚子石油化学 | 江蘇省南京 | 800 |
青島麗東石油化学 | 山東省青島 | 700 |
PetroChina 遼陽石化化繊 | 遼寧省遼陽 | 700 |
Sinopec鎮海煉油化工 | 浙江省寧波 | 650 |
Sinopec 天津石油化学 | 天津 | 390 |
Sinopec 上海石油化学 | 上海 | 250 |
Sinopec 洛陽石油化学 | 河南省洛陽 | 215 |
Sinopec 斉魯石油化工 | 山東省Zibo | 65 |
PetroChina ウルムチ石油化学 | 新疆ウイグル自治区ウルムチ | 60 |
Total | 3,830 |
注 青島麗東石油化学は韓国のGS Aromatics 60%、オマーン石油 30%、Red Star Chemical Group 10%のJV。
2006/11/3 「韓国GSグループの山東省パラキシレン工場、近く商業生産開始」
PTA/PET業界の急成長に伴う原料PX不足に対応するため、中国政府は6つの大規模PXプラントの新設と、4つの増設計画を承認している。ウルムチ石油化学は増設で一気に100万トン体制となる。
新設の一つは最近、中国政府が承認したSinopec/ExxonMobil/SaudiAramco 合弁の福建石油化学のPX計画で、福建省泉州市の80万トンエチレンに隣接し、投資額485百万ドルで、能力は70万トン。昨年末に建設を開始したエチレンと同じく 2009年初めに完成する予定。
PX新増設計画(単位:千トン)
社名 | 立地 | 能力 | |
新設 | Fujian Petrochemical | 福建省泉州 | 700 |
Jinling Petrochemical | 江蘇省南京 | 600 | |
Maoming Petrochemical | 広東省茂名 | 600 | |
Dalian Fujia Dahua Petrochemical 大連福佳・大化石油化工 |
遼寧省大連 | 450 | |
中国海洋石油(CNOOC) | 広東省恵州 | 800 | |
Dragon Aromatics | 福建省厦門 | 800 | |
合計 | 3,950 | ||
増設 | ウルムチ石油化学 | 930 | |
天津石油化学、揚子石油化学、上海石油化学 | 900 | ||
合計 | 1,830 | ||
総合計 | 5,780 |
Dragon Aromaticsは台湾系で、PXは子会社Xianglu Petrochemical のPTA150万トン増設に合わせ建設する。
2006/7/31 「台湾資本のDragon Group、福建省廈門でPXからPETまで一貫生産へ」
上記増設のうち、2007年に稼動するのはMaoming Petrochemical の600千トンだけのため、2007年はまだ2,700千トンの輸入が必要だが、これらが順次完成すれば、今後PTAが増設されてもPXの輸入は不要となるだろう。
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