中国の収入格差問題

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中国の第10期全国人民代表大会(全人代)が3月5日午前、北京の人民大会堂で開幕した

温家宝総理は政府活動報告を行った。
「2006年は第11次五カ年計画を実施し、かつ良好なスタートを切った1年であり、国民経済と社会の発展は重大な成果を上げた」とし、マクロコントロールの強化と改善、三農(農業、農村、農民)対策の拡充、経済構造調整の加速、改革開放の積極的推進、社会事業の力強い発展、就業・雇用保障対策の着実な実施への努力、民主・法制建設の継続的強化の7方面から、過去1年間の政府の主要活動を総括した。
しかし、「わが国の経済・社会の発展には多くの矛盾と問題がなお存在し、政府活動にもいくつかの欠点と不足があることを、われわれも直視している。第
は経済構造の矛盾が際立っていること、第は経済成長方式の粗放さ、第民衆の利益に関わる際立った問題の解決不十分、第は政府自身の建設にいくつかの問題があることだ」と指摘した。

国家発展改革委員会の馬凱主任は記者会見で、経済社会の発展やマクロ調整などの問題について質問に答えたが、問題点の一つの収入格差問題について、以下のとおり述べた。

全体的にみて、国民の収入水準は向上している。

・収入格差が拡大傾向にあるのは事実だ。都市・農村間、地域間、階層間で収入格差は拡大し、一部では深刻化している。

1978年と2006年とで、都市部住民の一人当たり平均可処分所得は343元から11,759元に増加
農村部住民の一人当たり
平均収入は134元から 3,587元に増加

注 これによれば都市と農村の格差は1978年の2.55倍から2006年は3.28倍に拡大
  但し、都市部住民のは「平均可処分所得」だが、農村部住民のは「平均収入」
   農家では、現金収入の約3分の1を次年度の耕作のための種・肥料等の購入に充てざるを得ない。

「都市と農村の表面的な所得格差は、統計的に3倍程度と公表されているが、実質的な格差は、その10倍、すなわち30倍ほどあると内々報告されている。」 
2006/8/8 
杉本信行著 「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」

・これに対して、政府は一連の措置を取ってきた。
 都市・農村間の格差を縮小するために、「三農」(農民、農村、農業)への支援を強化
 西部地域と東部地域との格差を縮小するために、西部大開発などの戦略
 都市部の最低生活保障制度を制定し、最低賃金制度を実施
 過大な収入の調整には、個人所得税の徴収を強化

・ この問題を根本的に解決するためには、次の措置を取るべきだ。
 第一に、順調かつ急速な発展を実現し、国民経済の総量を大きくし、これをしっかりと配分する必要がある。
 第二に、収入分配制度を含むさまざまな改革を深化させ、分配制度を整えると同時に、
      平等な機会、ルール、プロセスを備えた制度・メカニズムを構築する必要がある。
 第三に、低所得層の収入を引き上げ、中間層を拡大し、高所得層を調整するとともに、
      合法的な所得を保護し、違法所得を取り締まる必要がある。

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7日の新華社は所得格差に関して面白い記事を載せている。

それによると、裕福な都市住民の間で、永年の「一人っ子政策」を無視して、罰金を払って多くの子供をもつ人が増えており、10%のひとは3人も子供を持っていることが、最近のNational Population and Family Planning Commission の調査で判明した。

1970年代に制度が決められた当初は、貧しい農民が制度を守らないのではとの懸念があったが、最近は金でなんでも出来るとする都市の’nouveau riche にわか成り金)が政府の頭痛の種となっている。

政府は違反者に罰金を課し、省によっては罰金は地域の平均年収の6にも達するが、効果は見られず、金持ちの特権として民衆の怒りをかっている。

 

 

付記(2007/3/17補足)

全人代は8日、第二回全体会議を開き、「中華人民共和国企業所得税法(草案)」が正式に審議段階に入った。
16日、閉会。
物権法と企業所得税法は圧倒的多数の賛成で可決された。
胡錦濤国家主席は第62号、第63号主席令に署名し、両法律が公布された。
物権法は2007年10月1日から、企業所得税法は2008年1月1日からそれぞれ施行される

  2006/12/28 「中国、法人所得税率を統一、一律25%へ」参照 

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