中国、戸籍制度改革へ

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新華社通信によると、中国は都市と農村の戸籍登録制度を統一することを重点とした戸籍管理制度の改革に力を入れることになった。農業戸籍、都市戸籍という二元的な戸籍制度を徐々に廃止し、国民の身分を平等にすることを目指す。3月29日に北京で開かれた全国治安管理工作会議で明らかにされた。

河北、遼寧、山東、広西、重慶などの12の省(自治区・直轄市)では、農業、都市という二元的な戸籍の区分を試験的に廃止している。
北京や上海などでも、農民が身分を変更する場合の制限を緩和している。
黒竜江省でも試験的に戸籍制度改革が行われており、2007年には省全体に広げる予定。

1958年に決められた戸籍制度(戸口 Hukou)では、農民戸籍と都市戸籍に区分され、教育、医療、住宅、雇用などの個人の権利が戸籍と密接に結びついている。

現在、120百万人以上の農民戸籍の住民が都市で働いているが、現在の制度では農民戸籍の住民は何年間都市に住んでいても、都市の社会福祉を受けられないままである。

出稼ぎのために都市に出る農民は「外地人」と呼ばれ、差別されている。

・職業選択の自由は農民戸籍者には存在せず
  上海市の94年条例では23職種にはつけない(3Kの仕事と低賃金職種のみ)
・子女に対する教育差別(公立小中学校に入れない)
・賃金差別
・都市に流入する農民工に課せられた諸費用
  暫住証、寄住証、身分証明書、就業証、婦人に対する2ヶ月1回の不妊検査証など
・都市戸籍者への各種補助金が与えられない
・社会保険上の差別
  年金、失業保険、医療保険、労災保険、生活扶養金が農民工には与えられない
・その他 

 

4月1日夜9時のNHKスペシャル 「激流中国 富人と農民工」 はショッキングな内容であった。

(NHKホームページから)
個人資産300億円以上、巨万の富をたった一代で築き上げた会社社長。改革開放の波に乗って、不動産投資などで成功を収め、今も1回に何億もの金を株などの投資につぎ込む。富がさらなる富を生み、笑いが止まらない。かたや日雇い労働で手にする日当はわずか600円ほどの農民。家族を養うために農村から都会に出てきたものの、ようやく見つけることができた仕事は建設現場の厳しい肉体労働。毎日、自分が暮らしていくのが精一杯で、そこからはい上がることはできない。中国では、今、こうした光景は決して珍しくない。社会の中で格差が広がり、勝ち組と負け組の差が鮮明になっている。中国政府は、今、経済成長を最優先してきた結果、生まれた歪みの是正を最優先課題に位置づけ、「調和の取れた社会」「みなが豊かになる社会」建設をスローガンに掲げている。
なぜ格差は拡大し続けるのか、貧しい人々がはい上がるのが困難な理由は何か。
貧・富それぞれの現場に徹底的に密着し、中国政府が今、最大の課題とするこの問題に迫る。

 

中国の第10期全国人民代表大会(全人代)では三農(農業、農村、農民)対策の拡充が問題になったが、戸籍制度の改革は先送りとなった。

国が決めた制度なので、国がすぐに廃止すればよい筈だが、10億人の農民戸籍の国民に都市戸籍の国民と同じ扱いをするのは費用面でも無理であるし、都市には農民が殺到して大混乱が起こるであろう。
省が「徐々に」廃止するとしても、非常に時間がかかるであろう。

参考 2006/8/8 杉本信行著 「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」 
     2007/3/13 中国の収入格差問題 

 

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