米韓FTA妥結

| コメント(0)

米国と韓国が進めていた自由貿易協定(FTA)締結交渉が2日、期限切れ直前に妥結した。
最後まで争点となった牛肉を含む農業と自動車分野でも合意した。

韓国はアジアでシンガポールに続いて2番目に米国とFTAを結ぶことになる。
米韓の現在の貿易額は年間約770億ドル。FTA締結は米国にとって、1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)に続く大型の通商協定となる。

ーーー

2005年9月に両国大統領が電話会議のなかでFTA交渉実施の希望を述べたのが始まりで、昨年6月にワシントンで第一回の交渉を開始、その後何度も交渉を続けたが、自動車や農産物分野の市場開放などで協議が難航した。

 2006/7/22 韓国と米国の自由貿易協定交渉、医薬品問題で決裂 

本年7月1日で切れる米議会の審議手続き(Fast-Track)の関係で交渉期限を3月31日としたが、3月26日からの閣僚級の最終交渉でもまとまらず、断念かと思われた。

しかし、カタール訪問中の盧武鉉大統領が29日午後、ブッシュ大統領と電話で話し合い、FTA交渉妥結で共同の利益を増進させなければならないという政治的意思を再確認し、それぞれ交渉代表団に相互最大限の柔軟性を持って交渉するよう指示することにした。
また、週末の関係から交渉期限を4月2日午前1時に延ばし、最後の詰めを行った。

Fast-Track (高速コースの意味)
米国憲法では通商分野は議会の権限に属するが、Fast-Trackではこの権限を大統領に付託するとともに、大統領が締結した対外通商協定について、議会は60日以内に全面支持か全面拒否の二者選択で、条文修正や選択的採択が出来ない。
政府がこうした権限を保持することで、交渉相手国に妥結した協定案が米議会の修正要求により変質させられてしまうのではないかとの懸念を払拭させ、交渉を進めることが出来る。

Fast-Trackは2002年8月に約8年ぶりに復活、延長された結果、2007年7月1日まで有効となっている。
このため、準備期間も入れて3月中に妥結する必要があった。

主な内容は以下の通り。
◇農業

  
韓国=米国産牛肉輸入再開協議は、国際水域事務局のBSE評価等級が出される5月以降行う。
       牛肉(15年で)・豚肉(最長10年で)関税引き下げ
      コメは対象外
      米国産オレンジの関税を9月~2月は50%を維持、他は30%に。
◇自動車
    韓国=輸入関税(8%)即時撤廃
      排気量基準自動車税を現行5段階から3段階に簡素化
      自動車特別消費税を発効後3年以内に5%以下に単一化
  米国=3000cc以下の乗用車関税(2.5%)を直ちに撤廃
       3000cc超の乗用車は3年で関税撤廃
      ピックアップトラック(25%)は10年で関税撤廃
◇繊維
  韓国=韓国産繊維の対米迂回輸出防止に協力
  米国=米国側輸入額基準61%の関税を直ちに撤廃
      韓国に原糸基準原産地適用例外を認定
◇工業製品
 
  全品目において10年以内に関税撤廃
◇貿易手続き
  米国=米側が反ダンピング調査開始前に韓国側と協議
◇著作権
  韓国=著作権保護期間を70年(現行50年)に延長し、法律・会計市場を段階的に開放する。
◇開城(ケソン)工業団地

  韓米=「韓半島域外加工地域委員会」を設置し、韓半島非核化の進展など一定要件の下、
      原則的に域外加工地域に指定するよう協定文に明示
    (※開城工業団地など南北経済協力地域の生産品を韓国産と認める土台を確保)

*開城工業団地Nkoreamap2_1
2000年8月、金正日総書記と鄭夢憲・現代グループ会長との合意で、北側が土地と労働力を、南側が技術と資本を提供して、開城に一大工業団地を作ることが決まった。2003年8月に南北当局者間で投資保障、二重課税防止、清算決済、商社紛争合意書の4項目に関する経済協力合意書を交わした。第一段階100万坪のうち、まず28千坪について、15の企業を入居させるパイロットプラン(モデル団地)を実施中で現在11の企業が操業を開始している(化学品はない)。
韓・シンガポールと韓・EUの自由貿易協定は、
開城工団製品を韓国産に認めた。「韓国産原料を60%以上使っていれば、韓国産に見なし、無関税の恩恵を与えてほしい」という韓国政府の要求が受け入れられた。
しかし、ASEANとの交渉では相当数の国が「WTOの原産地規定は、最終的な加工が行なわれた地域を基準とする」と反対し、ペンディングとなっている。
米国は、
開城工団北朝鮮勤労者に対する労働搾取などを主張し、問題視している。

韓国の朝鮮日報は韓国の化学業界への影響について、以下の通り述べている。

ポリエチレンなど石油化学製品の場合、関税が撤廃されても輸出入に大きな変化はないものと予想される。
LG化学の関係者は「中国への輸出が全体の60%を占めており、米国と直接取引する量は多くないため、それほど大きな影響が及ぶことはないだろう」と話す。

だが、韓米両国間で技術力に格段の差が精密化学製品(塗料・接着剤・顔料など)の場合、一部で打撃を被ることも予想される。韓国の平均関税率は5.96%だが、米国は2.48%に過ぎず、輸出よりも輸入が増える可能性が高いためだ
韓国精密化学工業振興会のチュ・マンス理事は「韓国国内の精密化学産業の主要品目である医薬品・化粧品・農薬などの原料の場合、技術面での差が大きく、深刻な影響を被る可能性もある」と話す。

ーー

韓国は2006年5月にタイを除くASEAN加盟9カ国とFTAを締結した。
また
「バンコク協定」に加盟し、中国、インド、バングラデシュ、スリランカ、ラオスなどと関税の減免などを実施している。
  2006/5/9 
日本、韓国、中国の自由貿易協定交渉  

韓国はまた、先月、北京で「韓中FTA産官学共同研究」を1年間の日程でスタートさせている。

ーーー

日本は韓国とは交渉入りしたものの日本向けの水産品の関税撤廃をめぐって対立し、2004年に中断した。
米国とは本格的な検討にも至っておらず、韓米交渉開始に当たり、米代表は日本とは当面は交渉入りの意思はないとの見解を示した。

米韓FTAが発効すれば、日本は一部の自動車や部品の対米輸出で韓国メーカーに後れをとるリスクがある。

ーーー

日本は4月3日、タイとのEPAを締結した。秋にも発効する見通し。昨年4月に署名する予定がタイの政変で遅れていた。
  概要:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/thailand/pdfs/gaiyo.pdf

これまでの締結国は以下の通り。
 シンガポール(2002年発効)
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/big/jpn-singapore-fta.htm
 メキシコ(2005年発効)
   
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty161_1b.pdf
 マレーシア(2006年発効)
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2006-6-2.htm#fta-malaysia
 フィリピン(2006年締結)
   
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_asean/philippines/pdfs/gaiyo.pdf
 チリ(2007年締結)
   
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_chile/pdfs/gaiyo.pdf

コメントする

月別 アーカイブ