「世界の石油化学製品の今後の需給動向」-アジアの状況

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METI 「世界の石油化学製品の今後の需給動向」の「国別データシート」からアジアの石化の状況を見る。
 
http://www.meti.go.jp/policy/chemistry/main/teikihapyousiryou/070419kunibetudeta1.pdf

(以下、グラフはエチレン系製品のエチレン換算需給)

 
   
日本
  : 石化製品のユーザーの海外移転や川下製品(プラスチック製品等)の輸入拡大、建設需要の低迷により、石油化学製品、特にエチレン系誘導品の内需は、漸減傾向で推移するものと見込まれる。
 
 

主な新増設計画と検討状況

エチレン: 昭和電工(大分) 2.4万トン増設(2006年)
SM: 太陽石油化学(山口) 3万トン新設(2006年)
旭化成(水島) 6万トン増設(2006年)
EO: 日本触媒(川崎) 7万トン増設(2009年)
C3:         新日本石油化学(川崎) 14.5万トン(2006年)
PP: 日本ポリプロ(鹿島) 30万トン新設(2008年)
   
中国
  2005年から2006年初めにかけて3大エチレン(揚子BASF、上海BP、恵州シェル)合計230万tの稼動により、稼動前の能力600万tに対し、一挙に約40%弱の増強となった。これにより、国内自給率が向上し、これまで輸入量の増加を続けてきた汎用樹脂は2005年で横ばい、2006年では13年ぶりの減少となる見込み。
2007年については、新設計画はなく、次に集中するのが2009-10年にかけてであり、各計画が概ね予定通りに遂行されれば、その時点で中国の自給率は大幅に向上することとなり、更なる輸入の減少が予想される。
また、同時期に中東での新規計画の稼動が予定されていることから、中国をめぐる対中国向け輸出市場の競争が激化することは避けられない見通しであり、その影響は周辺諸国にも及ぶと見られる。

中国の需要については昨日の記事を参照。

   
 
 

主な新増設計画と検討状況  単位:KMT

独山子エチレン 1,000 2008-2H
天津石化 1,000 2008-
上海第2エチレン  600 2009-1H
撫順エチレン  800 2009-2H
EXXON/ARAMCO/福建煉油  800 2009-1Q
広州石化新エチレン  800 2009-
成都新エチレン  800 2010-1H
鎮海新エチレン  800 2010-
武漢エチレン  800 2010-
青島  800 2010-
大連実徳新エチレン 1,000 2011-END
合計 9,200  
       (参考) 中東
 

   
   
韓国
  エチレンについては、2009年までに139万トンの増設を行い、生産能力は24%増加し、需要の伸びは若干ビハインドのため、均衡から輸出ポジションに向かう。中国の旺盛な需要に支えられていたHD、LD、SM、VCM、PVCの輸出ポジションは維持されるが、中国において外資系エチレン・プラントが稼動した後、中国側単独による100万トン級のエチレン新増設プロジェクト(独山子、鎮海、天津等)が進行中であり、同プロジェクトの進捗状況によって、稼働率の調整を余儀なくされる局面も予想される。また、韓国石化製品輸出先の多様化も進展する。EGは輸入ポジションからバランスに向かう。
 
 

エチレンでは、2006年にSK3万t、LG石化10万t、大韓油化の6万トン増設を皮切りに、2007年に麗川NCCが42万t、サムスントタル20万t、LG化学(大山)20万t、湖南石化3万tとナフサ・クラッカーの増強が相次ぎ、2008年にロッテ大山石化35万tの増設が完了すると8社合計725万t年の体制となり、日本の生産能力とほぼ肩を並べるレベルに達する。
但し、ダウンストリームでは2008年にロッテ大山石化のLDPE増設13万t、HDPEは2007年に大韓油化の5万t年増設のみ。

   
台湾
  エチレンはFPCC、CPCの増設により63%生産能力が増加するが、誘導品の生産能力も増強され、需給バランスは輸入ポジションから均衡に向かう。
SMは生産能力増加の見合いで内需も伸び、輸入ポジションが維持される。
 
 

エチレンに関しては、FPCC120万tの拡張計画の完成が当初予定していた2005年末から2006年に遅延、その後さらに遅れ、2007年第2四半期に完成の見通し。CPCの林園工業園区でのエチレン計画は、当初予定の100万tから規模を60万tに縮小し、2010年の工事完成を目指している。CPCグループの「国光石化科技」計画(120万t)は、環境影響評価問題がいまだにクリアーされず、紆余曲折が予想される。全体の生産能力は63%増加し、442万t体制となる。
SMは、FCFCが2007年に72万t増設、199万t体制となる。
EGは、NANYAが2007年に72万t増設、218万t体制となる。

   
シンガポール
  国内の市場規模が極めて小さく、石油化学産業は構造的に外需依存であるため、東南アジアおよび中国、台湾を中心とした市場の経済動向に大きく影響を受けるうえ、2008年以降に相次いで完成、稼動開始が予定されている中東地域を中心としたプラント新設が、同国の需給バランスおよび製品市況に大きな影響を与えると考えられる。
また、現在、依然としてプロピレン、ベンゼンが輸入ポジション、エチレンが輸出ポジションとなっており、この状況は当面継続すると考えられるものの、国内での2つのエチレンプラント新設が現実的となった今、誘導品の今後の計画がどのように進められていくか、注視していく必要がある。
 
 

Shell は、単独でBukom 島内のShell 製油所隣接地に、2009年後半の完成予定で、800千t能力のエチレンプラントを新設することを発表した。同時に、誘導品としてはShell単独で、Merbau 地区に750千t能力のMEG プラントを新設することも発表した。
Exxon Mobil は、現在Jurong 島にあるエチレンプラント隣接地に、2010年~2011年の完成を目標に、能力1000千t級の第2期エチレンプラント建設を計画しており、同時にPEやオキソアルコール等の誘導品建設も計画されている。
(グラフではExxon Mobilの計画は含まない)

   
タイ
  Siam Cement とDow の新たなクラッカーが発表された。2010年稼動開始予定の90万tエチレンプラントを中心に、メタセシスユニットの導入により、プロピレンのトータル生産能力は80万tを確保した。その誘導品プロジェクトとしては、HDPE(30万t)とPP(40万t)が含まれている。
現在、主要石化製品の約4割は輸出向けであるが、2011年に向けて大規模なオレフィン及び誘導品プラントの新設が予定されているので、今後は輸出依存度が更に上がると考えられる。
 ・ポリエチレンは新増設による輸出余力が大幅に拡大。
 ・PTA は内需の伸びを上回る増設により輸出依存度が増加。
 
 
インドネシア
  オレフィン、芳香族ともに供給能力の大きな変化がなく、誘導品用の原料は約半分を輸入に依存する構造は変わっていない。
 
   
インド
  Reliance Industries Ltd.(RIL)は、インド石化製造能力の約60%のシェアを引き続き堅持。
国営ガス会社のGas Authority of India (GAIL)の新規エチレン・PP 生産計画
国営石油会社のIndian Oil Corp.(IOC)のパニパット製油所でPX・PTA の生産を2006 年Q4 に開始。
国営石油・ガス会社のOil and Natural Gas Corp.(ONGC)は、石化産業への参入を発表。
国営企業が今後、Giant のRIL を追随していく構図が出来つつある。
 
   
フィリピン
  国内産業空洞化傾向は続いており、需給動向は微減傾向となると言われている。
 
   
マレーシア
  新増設はタイタンのメタセシスによるC3 13万t増産とエチレンマレーシア C2 4万t増強を除いて殆ど無し。
C2、C3 誘導品は増設がない為、今後国内需要の伸びにより輸入ポジションになる。
PTA は国内需要の伸びにより輸出余力がなくなり輸入ポジションに転じる。
 

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* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

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