松永和紀著「メディア・バイアス」

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松永和紀著「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」を読んだ。

安井至先生が「市民のための環境学ガイド」 2007/4/29の「メディア報道に関する2冊の本」で、2冊の本を「是非買ってお読みいただきたい」と推奨されている。
  
http://www.yasuienv.net/TwoMediaBooks.htm

1冊が松永和紀著、「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」、光文社新書。
(もう一冊は、小島正美著、「アルツハイマー病の誤解」、リヨン社)

関西テレビの「発掘!あるある大事典Ⅱ」が問題になったが、問題が発生するたびにテレビを批判する新聞や雑誌にも、科学的な誤りは山ほどあり、「○○は効果がある」という健康情報だけではなく、「△△は危ない」とか「XXは環境に悪い」などと警鐘をならす情報も誤りだらけ。全国紙にも時々驚くような記述が見られる。
共通しているのは、わかりやすい話であること。良いか悪いか一刀両断、白か黒かの二分法。そして、どの報道にも医師や科学者などが登場し、数字を駆使し、科学の衣をまとっている。
科学はそれほど単純ではなく、白か黒かではなく、グレーゾーンが大部分。
しかし、マスメデイアは、このグレーゾーンをうまく伝えることができず、多種多様な情報の中から自分たちに都合の良いもの、白か黒か簡単に決めつけられるものだけを選び出し、報道する。
メディアによる情報の取捨選択のゆがみは、米国では「
メディア・バイアス」と呼ばれている。(以上、前書きから)

Media bias is a term used to describe a real or perceived bias of journalists and news producers within the mass media, in the selection of which events will be reported and how they are covered. (Wikipedia)

これらの健康情報は、商売、売名、特定の運動などの目的で流されることが多いが、大新聞までがよく調べずに報道し、間違いが分かっても訂正記事を出さない。「XX氏がこう言った」ということ自体は事実であり、そういう事実を伝えただけとの言い訳けが通る。
このため、間違った情報が事実として認識されてしまう。

本書では食品を中心に多岐にわたる例について述べている。内容については安井先生のページで詳しく紹介されている。
無農薬野菜は安全でない、セブンイレブンの保存料不使用は問題、など、えー!と驚くことも多い。一読をお奨めする。

筆者の松永和紀(まつなが わき)さんは、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)後、毎日新聞社勤務10年を経て2000年1月よりフリーランスの科学ライターとして活動している。

日経バイオテク・オンラインに「松永和紀のアグリ話」を連載している。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/kiji_mtng_itiran.jsp
「食の安全と機能に関する情報は数々あれど、トンデモ情報がいっぱい。マスメディアも例外ではありません。
その奇抜な論理展開、飛躍のすばらしさを楽しみつつ、科学的に妥当な情報を提供して行きます。」としている。

 (これまで無料購読できたが、最近は会員制になっている。)

筆者は氾濫する科学情報を識別するための10ケ条として、以下をあげている。
 1.懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
 2.「○○を食べれぱ…」というような単純な情報は排除する
 3.「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する
 4.その情報がだれを利するか、考える
 5.体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
 6.発表された「場」に注目する。学術論文ならぱ、信頼性は比較的高い
 7.問題にされている「量」に注目する
 8.問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える
 9.他のものと比較する目を持つ
10.新しい情報に応じて柔軟に考えを変えてゆく

筆者はまた、専門家がそれら情報に問題があるのを知りながら、学問の場以外のことには関係したくないとして避けているのも問題としている。外国では国がそれら情報について解説をしている国もある。

その中で、筆者は科学者がブログで情報発信する例を挙げている。

国立医薬品食品衛生研究所安全情報部の主任研究官、畝山智香子さん
  「食品安全情報ブログ」 
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/
 世界で毎日発信されている食品安全に関する情報が、ウイークデーは毎日10本以上も掲載されている。

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」

中西準子先生 http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/

その他、天羽(あもう)優子・山形大学助教授、渡辺正・東京大学教授、長村洋一・千葉科学大学教授、高橋久仁子・群馬大学教授。

なお、松永和紀さんのホームページ WAKILAB「メディア・バイアス  あやしい健康情報とニセ科学」の参考文献が載っている。
  
http://www.wakilab.org/page1.html

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