中国、気候変動への総合的対策をまとめた初の国家計画を発表

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国務院は3日、国家発展改革委員会と関連部門が制定した「省エネ・排出抑制総合工作方案」(General Work Plan for Energy Conservation and Pollutant Discharge Reduction)を発表した。
それによると、中国は省エネ・排出抑制を奨励するための税収政策を制定・完備する方針。
時機を見計らい、燃料税を発表し、環境税の制定を検討するという。

政府は昨年、2010年に終わる11次5ヵ年計画で、単位当たりGDPに対するエネルギー消費を20%、汚染物質排出を10%削減する目標を立てた。

しかしこの1年では目標に達せず、しかも誰も責任を負っていない。
(昨年のエネルギー消費削減目標4%に対し、実績は
1.23%)
しかもエネルギー消費が大きく、汚染物質排出が多い電力、鉄鋼、非鉄金属、建設資材、石油精製、化学の6分野が第1四半期に急拡大し、ますます事態は深刻になっている。
(全産業のうち、エネルギー消費と
SOx排出量の70%を占めるこれら業界は、第1四半期に20.6%伸びた)

現状のままでは最終目標達成は不可能なため、今回の「方案」が作成された。

国務院は政府や企業に対し、今後は省エネと排出抑制が業績評価の基準になると警告した。これらの目標が達成できない場合、他の実績があってもマイナス点を与えるとしている。

同「方案」の具体的な政策内容は次の通り。

省エネ・環境保護型自動車および船舶、省エネルギー・土地節約・環境保護型建築物および現有建築物の省エネ改造を奨励する税収面での優遇政策を実施する。
時機を見計らい、燃料税の徴収を施行する。
環境税の徴収を検討する。
新エネルギーの発展を促進する税収政策を検討する。
先進的な省エネ・環境保護技術や設備の輸入を奨励する税収面での優遇政策を実施する。
交通運輸における省エネルギー・排出抑制管理を強化するため、都市の公共交通の発展を優先させ、都市高速公共交通・レール交通の建設を加速する。
燃費や汚染度が高い自動車の発展を抑制し、乗用車・軽商用車の燃料消費量の限定基準を厳格化し、燃費申告・公示制度を作り上げる。
新エネルギー自動車生産への参入許可管理規則を公布・実施し、代替エネルギー自動車の産業化を促進する。

具体策

再生可能エネルギー利用促進
(風力、水力、メタン・地熱、将来的に燃料エタノール、バイオエタノール)
(政府機関)省電力電灯の使用  
(政府機関)省エネ、節水、環境に優しい製品の購入の義務付け
省エネ、環境対策計画への融資促進、優遇税制
石油、天然ガス、電力等の価格メカニズムの改正と、高エネルギー消費・汚染物質排出製品の輸出規制
鉄鋼、非鉄金属、石化、セメントなど高エネルギー消費産業のエネルギー使用の最適化

政府は本年に31.5百万トン、2010年までに118百万トンの石炭を節減し、SOx排出を本年に400千トン、2010年までに240万トン減らすとしている。

また、旧式の製造設備の廃棄を促進し、CODを本年に62万トン、2010年までに138万トン減らすとしている。

旧式設備廃棄の廃棄対象の例は以下の通り。

  本年 2010年
石炭発電 合計能力10百万kw以下 50百万kw以下
鉄鋼 20万トン以下で合計能力35百万トン以下 55百万トン以下
アルミ製錬 100千トン以下 650千トン以下
カルシウムカーバイド 6300kv-アンペア以下の電炉で合計能力500千トン以下 200万トン以下
セメント 50百万トン以下 250百万トン以下
製紙 230万トン以下 650万トン以下
アルコール 400千トン以下 160万トン以下

SOx削減のためには 全ての新石炭火力発電所(188百万kw)と167百万kwの既存発電所に脱硫設備をつけ、年間590万トンのSOxを減らす。(これまでの設置は35百万kwの石炭火力発電所のみ)

2010年の主な目標数値は以下の通り。

エネルギー消費  2005年のGDP1万人民元当たり石炭1.22トンから20%減の1トンに
水の使用 産業の付加価値当たりで30%減
主廃棄物 10%減
SOx排出 2005年の25.49百万トンから22.95百万トンに
化学的酸素要求量(COD) 2005年の14.14百万トンから12.73百万トンに
都市の下水処理 最低70%に
産業固形廃棄物の利用 60%以上に
 
  本年の目標 2010年の目標
都市の下水処理能力 12百万トン増 45百万トン増
水の再利用能力(トン/日) 100万トン増 680万トン増
COD削減能力 60万トン増 300万トン増
海水の淡水化の稼動能力 合計35百万kw 合計355百万kw

今回の「方策」には農業や家庭部門を含む国全体としてのCO2削減目標は示されていない。

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国家発展改革委員会の馬凱主任は4日の記者会見で、次のように述べ、京都議定書後の国際的枠組み整備に積極的に参加する意向を示した。

地球温暖化は争いのない事実である。
地球温暖化は自然環境と人類のサーバイバルに深刻な影響を与える。
自然の影響もあるが、温暖化は人間の活動、特に化石燃料の使用によるところが大きい。
温暖化による気候の変動はボーダーレスで国際社会の協同が必要。
中国政府はこれを重大視し、国際社会との協同を希望してきた。

しかしながら、主任は胡錦涛主席の昨年のG8+5での「気候変動は環境問題であるとともに、同時に開発の問題である」という発言を引用し、「中国のような途上国には、先進国と同様の量的削減義務を課すのは不適当だ」と述べ、先進国と同様のCO2削減義務を負うことを拒否する姿勢を鮮明にした。

主任は、先進国は産業革命時点から1955年までの化石燃料使用で全世界の一酸化炭素の95%を放出し、1950-2000年の期間では77%を放出していると指摘し、先進国が気候変動に責任があり、大きな義務を負うべきだとした。そして、先進国は開発途上国の開発の権利を十分考えるべきであると述べた。 

付記

中国建設部(建設省)は6日、「省エネ」を建築物竣工検収時の必須検査項目とする「建築省エネ工程施工品質検収規範」を公布した。
「省エネ工程を建築時の一工程として初めて明確に規定し、省エネ設計の実施具合、実際の資材と設備の品質、施工過程の品質管理、システム調整と作動検査の4項目を施工・検収時の重点としている」と説明している。
同規範は建設部が制定・審査・認可し、国家技術質量監督検験検疫総局と共同で公布、今年10月1日から施行される。

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