中国の国家発展改革委員会(NDRC)は、6月10日に北京で行われたセミナーで、バイオエタノールと石炭液化計画を見直すことを言明した。
セミナーは中国工程院 (Chinese Academy of Engineering) が主催し、デンマークの酵素メーカー Novozymes (ノボザイムズ)が後援した。
1)バイオエタノール
NDRCは、中国は今後、穀物からのエタノール燃料生産計画を承認しないと言明した。
エタノールの原料となるトウモロコシが値上がりし、豚肉価格にも波及し始めたのが理由。トウモロコシを原料とするエタノールについては中国だけでなく世界中で大きな反対が出ている。
石油代替のエタノール燃料生産にはキャッサバ芋、サツマイモ、ソルゴ糖 (サトウモロコシ)、セルロースのような非穀物に切り替える。
トウモロコシベースのエタノールを生産している既存の4社については順次、非穀物作物に切り替えるよう要請する。
4社はJin YU Inc.(黒龍江省 10万トン)、Jilin Fuel Ethanol (吉林省 40万トン)、Tian Guan Group(河南省 20万トン)、BBCA Biochemical (安徽省 32万トン)で、合計生産能力は102万トン。中国は米国、ブラジル、EUに次ぐエタノール燃料の生産・消費国となっている。
更に、吉林省で60万トン、安徽省でFengyuan Group が32万トン、河南省でTianguang Groupが30万トンの工場を建設中。
中国のバイオエタノールの状況はhttp://www.worldbiofuelssymposium.com/2005FEW-01-Liu.pdf 参照
黒龍江省の企業を所有し、安徽省の企業 BBCA Biochemical に20%を出資する中国最大の石油・食料の輸出入会社 China Oil and Food Corporation (COFCO 中国糧油食品集団)では、今後サトウモロコシ を中心にしたいと表明した。近い将来、これを原料に年間500万トンのエタノール燃料を生産したいとしている。
2007/1/27 中国のバイオ企業、BBCAグループ
現在のところ、トウモロコシの茎などから作るエタノールはコストが非常に高い。Novozymes 社は米国と中国でセルロースからのエタノール生産の商業化を図っており、中国ではトウモロコシの茎を集めるコストが安いので、米国に先駆けて成功するだろうと楽観視している。
中国ではエタノールをガソリンに10%混ぜた燃料が、東北地域などで売られており、エタノール混合ガソリンは、国内のガソリン消費の2割に達している。
2)石炭液化
NDRCは、中国の限られた資源と環境問題を評価した結果、石炭液化計画を見直すと表明した。
「石炭液化は石油依存からの離脱に役には立つが、エネルギーを多用しすぎる」としている。
大規模な生産能力を持つ政府のモデル事業は続けるが、小規模な設備は認可しない方針。
11次5ヵ年計画(2006-2010)では石油代替にバイオマス燃料や石炭液化のような代替エネルギー開発に投資をするとしていた。
中国は2006年に163百万トンの原油を輸入し、輸入依存度は47%から51.1%に上昇している。
NDRCによると、石炭液化は投資額が大きく、水を大量に使い、結果的に活用できるエネルギーの量は減っており、「多くのエネルギ一で少ないエネルギーを生産する技術」である。
内蒙古の計画では108万トンの設計能力で、投資額は65.8億ドル以上かかっている。
中国は大規模化のトライアルなしで液化計画を始めてしまい、技術も優れたものではないとしている。
中国政府は最近、再生可能資源の開発を重要な政府の戦略とし、水力、太陽光、風力、バイオマス、メタンなどの開発を進めるとした。
6月5日には、9年間の研究の結果として、南シナ海の海底の下から天然ガスハイドレート(燃える氷)の回収に成功している。
参考 2006/6/21 石炭液化事業
2006/6/22 南ア・サソールの石炭液化技術
2006/6/23 中国の石炭化学
2006/7/21 中国政府、石炭化学を規制
* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm
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