遺伝子組み換えトウモロコシに問題?

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フランスのNGOのCRIIGENはこのたび、Monsantoが開発したGMOトウモロコシのNK603(商品名Round-up Ready)のラットのテストで、これを食べさせたラットと食べさせないラットとの間で、腎臓、脳、心臓、肝臓の機能などを示す数値に明らかな差が生じており、これに毒性があることを意味する可能性があるという研究を発表した。

Greenpeaceは「この研究はGMOトウモロコシに健康面でのリスクがあることを示しており、現在の安全性評価が信用できないことを示している」とし、他のGMOを含めて、直ちに市場から回収し、承認を取り消すよう要求した。

CRIIGENは本年3月に、Monsanto の他のGMO トウモロコシ MON863 の承認申請に使われたラット90日試験の生データを入手し、独自に解析して、体重や血液と尿の生化学検査の結果に問題があると発表している。
食品安全情報blog には「生き物なのでこれくらいの変動はある。差があると言っているものも増えたり減ったりで一定の傾向はない」とのコメントがある。 http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070316 

CRIIGENはフランスのNGOで、遺伝子工学技術が生物、環境、農業、医学並びに公衆衛生、食品に直接または間接的に、または短期的、中期的、長期的に与える影響について研究するとしている。

NK603は、既に日本やEU、米国などで食品用や飼料用として承認されており、日本では飼料として流通しているという。

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昨年、遺伝子組み換え大豆が危険だと主張するロシア人研究者が、市民団体の招きで来日し、全国を講演して回った。

ロシア科学アカデミー高次機能・神経行動学研究所のイリーナ・エルマコヴァ博士で、親ラットに遺伝子組み換え大豆を混ぜた餌を食べさせ、生まれた子ラットにも与える実験をしたところ、生後3週間までに約6割の子ラットが死んだと報告した。

(1)通常の飼料とモンサント社が遺伝子組み換え技術により開発した除草剤耐性大豆、(2)通常の飼料と非組み換え大豆、(3)通常の飼料のみを与え、子どもを生ませ、子ラットも同様に飼育したが、子ラットの死亡率が、(1)だと55.6%、(2)だと9%、(3)だと6.8%だった。

しかし、遺伝子組み換え大豆は「生で」、非組み換え大豆は「加熱して」与えており、「生」の豆にはレクチンやトリプシンインヒビターなどの毒物が存在しているため、意味のない実験であった。

実際には、同様の実験がすでに南ダコタ大学で行われており、マウスに四代に渡って遺伝子組み換え大豆を食べさせたが、非組み換え大豆を食べさせた場合と何の違いもなかったという。

松永和紀さんの「メディア・バイアス」に詳細が載っている。

  2007/5/3 松永和紀著「メディア・バイアス」 

 

今回のCRIIGENの発表については、U欧州委員会は欧州食品安全機関に研究内容の詳しい分析を要請、日本の食品安全委員会も情報収集を始めた。

結果の早い公表が待たれる。

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付記

国立医薬品食品衛生研究所安全情報部の主任研究官、畝山智香子さんは「食品安全情報blog」(2007-06-29)で以下の通り書いておられる。

グリーンピースの発表とは異なり、論文形式ではなく単なるコメント。モンサントの提出したNK603の試験データについて些細なことにただ文句をつけているというもの。

結論として実験をしたのがモンサント社だからダメ、スライドやネズミが全部公開されていないからダメ、農薬と同じさらに長期で複数の齧歯類を使った安全性試験が義務ではないからダメ、というような関係ない主張。

しかし上述のように(*)セラリーニ教授の統計手法に問題有りと明言されてしまっている以上、説得力はない。

* NK603の論文の筆者は上記のMON863 の報告と同じSeralini教授。
MON863についてのEFSAの6/28の発表は、畝山さんによると、「大量の文書だが、要するにSeralini らの使った統計手法とその結論は間違っているということ」。


 バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

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